二時。お隣へお邪魔するために着替えを済ませ、調理器具と材料を用意。調理器具は……ハンドミキサーを持っていってもコンセント足りるかしらね? まあ、持ってくだけ持ってきましょ。あとは、普通の泡立て器と包丁にまな板、ボウル二つ、ケーキ用の金型、ゴムベラ、ピーラー、ふるい、おろし器、計量スプーンも。
材料は、小麦粉にお砂糖、ベーキングパウダー、重曹、サラダ油、シナモン。これらは事前に計量を済ませ、容器に入れておく。あと、干しぶどう、くるみ、レモンエキス、クリームチーズに人参、卵!
優輝さんいわく、食器はこちらで用意しますよーとのことなので、お言葉に甘えましょう。おっと、マイエプロンも忘れちゃあいけません。
「よーし! 行きましょうか、アメリちゃん!」
「おお~!」
というわけで、れっつらごー!
◆ ◆ ◆
「こんにちはー!」
皆さんにご挨拶。やはり、一番遠いまりあさんがまだで、さつきさんが見当たらない。バンもなかったし、迎えに行ってるのかな?
まりあさんがいらっしゃるまで、しばし談笑。少しするとまりあさんたちが合流したのでおふたりともご挨拶。
「それでは、先にどんな物を作るか発表し合いましょうか。オーブンが二台しかないので、使う順番決めないといけませんからね。わたしたちは、ドーナツとブラウニーを二手に分かれて作ろうかなって思ってます。なので、オーブンは一つ使いますね」
天性のまとめ役、由香里さんが打ち合わせを切り出す。
「私たちは、キャロットケーキです。なので、うちもオーブンを使わせていただけますと」
挙手してオーブンの使用を希望する。
「わたしたちは白玉ぜんざいを作ろうかと。なので、コンロを一口……できれば二口お借りしたいです」
まりあさんたちは和菓子の模様。
「私たちは、アップルパイです。なので、こちらもオーブン使用させていただきたいです」
白部さんも焼き菓子組。しかし、アップルパイとはぶれないなあ。
「となると……まず、コンロは四口あるので白玉とドーナツは問題ないですね。アップルパイは温かいほうが美味しいですから、白部さんが最後に使っていただく形になりますね」
由香里さんが、即座に割当てをはじき出す。
「あ、質問なのですけど、電動ハンドミキサー使えますか?」
「はい。三つ口ソケットと延長コード用意しますね」
私の質問に、快いご回答をいただく。
こうして、ソケットとコード用意後に各自調理台とテーブルに散り、作業を開始するのでした。
私とアメリは、椅子をどかしたテーブルで調理。ただ、子供たちは背丈が足りないので椅子に座ってお手伝い。
「それじゃあアメリちゃん、始めましょうか。この粉類をふるいに通して、ふるいをとんとん叩いて入れてくれるかな?」
小麦粉、砂糖、ベーキングパウダー、重曹、シナモンがそれぞれ入った容器とボウルを手渡す。
「おお~、やってみる!」
一度だけふるいの掛け方のお手本を見せて、後はお任せ。アメリもほんとに頼れるようになったものです。
私はというと、手始めにくるみを細かく刻みなう。続いて、卵と砂糖、そしてサラダ油を粉とは別のボウルに入れて混ぜ合わせる。
「おねーちゃん、これでいい?」
アメリがふるい終わったようです。
「うん、おけ! じゃあ、人参さんを摺り下ろそう。すみません、おろし器を一つ貸していただいていいですか?」
優輝さんに問うと、快く貸してくださいました。まあ、おろし器なんて使うのうちのチームぐらいだしね。今のうちに、オーブンを温めさせてもらう。
私は包丁、アメリはピーラーで人参の皮を剥き、やや粗めに摺り下ろしていく。
これを卵などと混ぜ、さらに粉と混ぜていく。ハンドミキサー使えて良かったー。結局、手動の泡立て器は要らなかったな。まあ、こういうこともあるよね。
クッキングシートをお借りし、レンジで生地を焼成! 四十分ほど暇になるので、洗い物を済ませた後は皆さんの具合を拝見。おお、順調みたいですねえ。白部さん組がちょっと手間取ってる感じかな?
ブラウニー担当の優輝さんと由香里さんとミケちゃんも手が空いたので、五人で雑談。ミケちゃんも、単位のお勉強は済ませているようで。「むむむ、アメリも追いついてきたのね! 頑張らなきゃ!」とのお言葉。
優輝さんはまた変てこな映画のコレクションを増やしたらしく、人を殺害すると得点になるとかいういささか悪趣味な殺人レース映画の話を繰り広げる。優輝さん、この悪趣味だけがどうにも玉に瑕よねえ。
由香里さんは対極的にお上品な趣味で、押し花を作るのにはまっているのだとか。
まりあさんも作業を終え、話に混ざってきました。「くろねこクロのたび」の筆の進みが芳しいようで、良き哉良き哉。
そんなこんなで焼成が終わったので、フロスティングを作ります。クリームチーズとお砂糖とレモン汁を湯煎して、ミキサーでかき混ぜる。うん、とろりとしてるね。
ケーキを器に空け、できあがったフロスティングを、ゴムベラで塗っていく。最後に、刻みくるみを載せて完成! ふう、疲れた。でも、美味しそうね!
「完成です、アメリちゃん! いえーい!」
「おお~! いえーい!」
パチンと手を打ち鳴らし合う。
だいたいほかの皆さんも完成したか大詰め。白部さんの焼成が終われば終局かな。
ケーキ類が冷めるのを待つ間、まずはまりあさんのぜんざいをいただくことに。
皆でいただきますを合唱し、ぱくっ!
やーん、甘くて美味しい~。濃いめに淹れたお茶が実に合う。
皆で、口々に出来栄えを褒め称えると、「いえ、それほどのことは……」と、まりあさんが恐縮してしまう。クロちゃんは、下を俯いて照れくさそう。
二番手は……いくらなんでも一度にお菓子食べ過ぎですよねと言う話になり、テイクアウトが容易なドーナツとブラウニーはお持ち帰り用に。というわけで次は私のキャロットケーキ。
ぱくっ! うん、我ながら上出来! アメリのお手伝いも加わって、パワーアップ!
「美味しいですねえ~」
由香里さんが感心する。むふふ、由香里さんに太鼓判いただけると自信が湧いちゃうじゃないですか! アメリも、美味しい美味しいとぱくぱく食べており、作ったかいがあるってもんです。
ほかの皆さんにもご好評で、無事ミッション終了。
大トリは白部さんのアップルパイ。ホカホカなのをいただきます!
うーん、これまた美味しい!
「ノーラちゃんも、色々手伝ってくれまして」
白部さんが傍らに座す彼女の頭を撫でると、「ふへへ~」と、ドヤ顔で鼻の下を人差し指でこする。
アップルパイも、私を含めた皆にご好評! 白部さんも、「ありがとうございます」とほっと胸を撫で下ろす。
こうして、後片付けをしてお菓子パーティーはお開き。しばし雑談を交わした後、ドーナツとブラウニーをお土産に各々帰ることとなりました。
いやー、晩ごはんの和風ハンバーグ食べられるかなこれ。いっそ、明日でいいか……。
それにしても、本当に楽しかったなあ~。また集まってお菓子作りしたいな!
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