神奈さんとアメリちゃん

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第四十一話 ぶらり、駅でお買い物・再び

公開日時: 2021年4月17日(土) 22:01
文字数:2,223

「ねえ、アメリ」


「なーに?」


「ブロック遊び、あれから全然しないね?」


 仕事も一区切り付いた三時頃、文字学習タブレットでお勉強していたアメリに、伸びをしながら素朴な疑問をぶつけてみる。


 アメリったら、最初に「さかなのおうち」を作って以来、ブロック遊びをしないのだ。速攻で飽きてしまったんだとしたら、これは悲しい。


「おうちなくなったら、そめごろうイカたち困っちゃうから……」


 あー、なるほど。あのおうちはそめごろうたちの物で、それを壊したくないのか。納得。


「じゃあ、新しいブロック買おうか」


「うん!」


 キラキラした瞳を受け、本日の外出目的決定! では、着替えて「るるる」に行きましょー!



 ◆ ◆ ◆



 いざやって参りました。久しぶり……でもないか、の「トイザウるス」店内へ!


 ほんと、おもちゃだらけのにぎやかな空間は、なんていうか子供の楽園って感じよね。良きかな良きかな


 二人で真っ先にブロックコーナーにGO! そして、さっそくブロックをカートへ。


「他に買いたいのある? せっかくだから、もう少しなにか買っていーよ」


「んー……。クロやミケと一緒に遊べるのが欲しい!」


 ほいほい。とすると、定番のアレ・・なんかいいんじゃないかな。


「アメリ。これはどうかな?」


 木の棒が組み合わさった、塔のような写真がプリントされた箱を見せる。


「なーにこれ?」


JANGOジャンゴっていってね。順番に棒を一本ずつ抜いていって、崩しちゃった人が負け。シンプルだけど面白いんだー」


 私の説明に、「おおー!」と瞳を輝かせる。


「おっけ、気に入ってくれたみたいね。じゃあこれも買っちゃいましょ。今日はこんなもんかな?」


「オムライスは? 食べるの?」


 スマホを見ると、まだ五時前。


「うーん、夕ごはんにはちょっと早いなあ……。今日は、お魚買っていこうか」


「おおー!」


 というわけで、お買い上げしたおもちゃを車にしまった後、一階のお魚屋さんに向かいました。



 ◆ ◆ ◆



 るるるのテナントの一つ、「はまちや」さん。るるるができる前からずっとこのF駅前で営みを続けている、歴史のあるお店らしい。少なくとも、私がF市にやって来た七年前にはすでにあったっけ。


 名前の通り鮮魚店で、種々様々な魚が冷蔵ワゴンに並んでいる。目移りしちゃうなー。


「すいません、今日のお勧めってなんですか? この子と二人で食べるんですけど」


 こういうときは、お店の人に訊いちゃうのが一番!


「らっしゃーい! この時期だとズバリ、サンマですね。あとは鮭とかスルメやカレイなんかもお勧めですよ」


 ほうほう。どれも良さげねえ。迷うけど、ここは秋の風物詩サンマを抑えておきたい。


「じゃあ、サンマ二尾ください」


「毎度ー!」


 これで、本日のメイン食材ゲット。はまちやさんを出たところに青果店があるので、そこで大根も入手。準備OK!


「じゃあ、帰ろうか」


 というわけで、家路を急ぐのでした。



 ◆ ◆ ◆



「ただいま~!」


 二人で仲良く帰宅すると、まずは食材を冷蔵庫に入れてお米を水に浸してお風呂。火を使うといえば使うけど、魚焼きのコンロで焼くだけだもんね。まあ、大根でお味噌汁も作るんだけど。


 そんなわけで、入浴完了! では、炊飯器のスイッチを入れて、大根をまずは攻略! 中鍋にお湯を沸かす。


「アメリ隊員、今日もまた頑張ってもらっちゃうよ! お手伝いの準備はOKかな?」


 問いかけに、「おおー!」と元気良く答える。良きかな良きかな


「じゃあ、私がピーラーでこれ大根剥き終わったらよろしくね」


 というわけで、皮剥き開始~。……よし!


「じゃあ、アメリ隊員。『ストップ』っていうまでこれおろし器でこすってね」


「おおー!」


 ショリショリという小気味よい音ともに、徐々に大根が削れていく。小さな手を一所懸命動かすアメリ。健気……。


「はい、ストーップ!」


 付け合せの大根おろしには十分な量ができたので、制止する。


「お疲れ様。あとは、私がやるからねー」


 残りの大根を細切りにし、煮立ったお湯にイン!


 続いて、サンマの処理だけど……。


「アメリ、苦いの嫌だよね?」


「うーん、多分」


 そういえば、アメリに苦いもの食べさせたことなかったっけ。まあ、内臓は取っちゃいましょ。私もサンマの内臓苦手だし。


 では、これをジュウジュウと焼きましょう。魚は弱火でじっくり焼くのがコツ。


 片面焼けた。ひっくり返してもう片面も。……よし!


 最後は中鍋の火を止めて、だし入り味噌を溶かしまーす。


 焼き魚用のお皿にサンマと大根おろしを盛り付け、ポン酢をかける。


 あとは、お味噌汁と炊きあがったご飯をよそって……。出来上がりー!


「じゃあ、いただきますしようか。いただきます」


「いただきます!」


「アメリ、サンマはそれ大根おろしと一緒に、身を箸でほぐして食べてね。骨とか頭は残していいから」


「はーい!」


 ぱくっ。うん、さすが旬のものは美味しい。大根のお味噌汁もいい感じ。


「アメリ、どうかな?」


「美味しい!」


 良きかな良きかな。アメリのその言葉を聞くと、ほんと作りがいがあったというものです。


 こうしてアメリと食卓を囲むようになってから、日々の食事がずいぶんと楽しいものになった気がする。一人暮らしの食事って、本当に食べるために作り、そして黙々と食べるって感じだけど、そこにこうして会話が生まれるとなんと和むことか。


 ごちそうさま。と食事も終わり、食器を食洗機に入れてグリルを洗った後は、歯磨き。


 ゲージュツ家のアメリ先生は、新たなインスピレーションを得るべく、寝室でブロックを組み合わせて試行錯誤なう。


 さてさて。私もお仕事の続き、頑張りまっしょい!

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