「ねえ、アメリ」
「なーに?」
「ブロック遊び、あれから全然しないね?」
仕事も一区切り付いた三時頃、文字学習タブレットでお勉強していたアメリに、伸びをしながら素朴な疑問をぶつけてみる。
アメリったら、最初に「さかなのおうち」を作って以来、ブロック遊びをしないのだ。速攻で飽きてしまったんだとしたら、これは悲しい。
「おうちなくなったら、そめごろうたち困っちゃうから……」
あー、なるほど。あのおうちはそめごろうたちの物で、それを壊したくないのか。納得。
「じゃあ、新しいブロック買おうか」
「うん!」
キラキラした瞳を受け、本日の外出目的決定! では、着替えて「るるる」に行きましょー!
◆ ◆ ◆
いざやって参りました。久しぶり……でもないか、の「トイザウるス」店内へ!
ほんと、おもちゃだらけのにぎやかな空間は、なんていうか子供の楽園って感じよね。良き哉良き哉。
二人で真っ先にブロックコーナーにGO! そして、さっそくブロックをカートへ。
「他に買いたいのある? せっかくだから、もう少しなにか買っていーよ」
「んー……。クロやミケと一緒に遊べるのが欲しい!」
ほいほい。とすると、定番のアレなんかいいんじゃないかな。
「アメリ。これはどうかな?」
木の棒が組み合わさった、塔のような写真がプリントされた箱を見せる。
「なーにこれ?」
「JANGOっていってね。順番に棒を一本ずつ抜いていって、崩しちゃった人が負け。シンプルだけど面白いんだー」
私の説明に、「おおー!」と瞳を輝かせる。
「おっけ、気に入ってくれたみたいね。じゃあこれも買っちゃいましょ。今日はこんなもんかな?」
「オムライスは? 食べるの?」
スマホを見ると、まだ五時前。
「うーん、夕ごはんにはちょっと早いなあ……。今日は、お魚買っていこうか」
「おおー!」
というわけで、お買い上げしたおもちゃを車にしまった後、一階のお魚屋さんに向かいました。
◆ ◆ ◆
るるるのテナントの一つ、「はまちや」さん。るるるができる前からずっとこのF駅前で営みを続けている、歴史のあるお店らしい。少なくとも、私がF市にやって来た七年前にはすでにあったっけ。
名前の通り鮮魚店で、種々様々な魚が冷蔵ワゴンに並んでいる。目移りしちゃうなー。
「すいません、今日のお勧めってなんですか? この子と二人で食べるんですけど」
こういうときは、お店の人に訊いちゃうのが一番!
「らっしゃーい! この時期だとズバリ、サンマですね。あとは鮭とかスルメやカレイなんかもお勧めですよ」
ほうほう。どれも良さげねえ。迷うけど、ここは秋の風物詩サンマを抑えておきたい。
「じゃあ、サンマ二尾ください」
「毎度ー!」
これで、本日のメイン食材ゲット。はまちやさんを出たところに青果店があるので、そこで大根も入手。準備OK!
「じゃあ、帰ろうか」
というわけで、家路を急ぐのでした。
◆ ◆ ◆
「ただいま~!」
二人で仲良く帰宅すると、まずは食材を冷蔵庫に入れてお米を水に浸してお風呂。火を使うといえば使うけど、魚焼きのコンロで焼くだけだもんね。まあ、大根でお味噌汁も作るんだけど。
そんなわけで、入浴完了! では、炊飯器のスイッチを入れて、大根をまずは攻略! 中鍋にお湯を沸かす。
「アメリ隊員、今日もまた頑張ってもらっちゃうよ! お手伝いの準備はOKかな?」
問いかけに、「おおー!」と元気良く答える。良き哉良き哉。
「じゃあ、私がピーラーでこれ剥き終わったらよろしくね」
というわけで、皮剥き開始~。……よし!
「じゃあ、アメリ隊員。『ストップ』っていうまでこれでこすってね」
「おおー!」
ショリショリという小気味よい音ともに、徐々に大根が削れていく。小さな手を一所懸命動かすアメリ。健気……。
「はい、ストーップ!」
付け合せの大根おろしには十分な量ができたので、制止する。
「お疲れ様。あとは、私がやるからねー」
残りの大根を細切りにし、煮立ったお湯にイン!
続いて、サンマの処理だけど……。
「アメリ、苦いの嫌だよね?」
「うーん、多分」
そういえば、アメリに苦いもの食べさせたことなかったっけ。まあ、内臓は取っちゃいましょ。私もサンマの内臓苦手だし。
では、これをジュウジュウと焼きましょう。魚は弱火でじっくり焼くのがコツ。
片面焼けた。ひっくり返してもう片面も。……よし!
最後は中鍋の火を止めて、だし入り味噌を溶かしまーす。
焼き魚用のお皿にサンマと大根おろしを盛り付け、ポン酢をかける。
あとは、お味噌汁と炊きあがったご飯をよそって……。出来上がりー!
「じゃあ、いただきますしようか。いただきます」
「いただきます!」
「アメリ、サンマはそれと一緒に、身を箸でほぐして食べてね。骨とか頭は残していいから」
「はーい!」
ぱくっ。うん、さすが旬のものは美味しい。大根のお味噌汁もいい感じ。
「アメリ、どうかな?」
「美味しい!」
良き哉良き哉。アメリのその言葉を聞くと、ほんと作りがいがあったというものです。
こうしてアメリと食卓を囲むようになってから、日々の食事がずいぶんと楽しいものになった気がする。一人暮らしの食事って、本当に食べるために作り、そして黙々と食べるって感じだけど、そこにこうして会話が生まれるとなんと和むことか。
ごちそうさま。と食事も終わり、食器を食洗機に入れてグリルを洗った後は、歯磨き。
ゲージュツ家のアメリ先生は、新たなインスピレーションを得るべく、寝室でブロックを組み合わせて試行錯誤なう。
さてさて。私もお仕事の続き、頑張りまっしょい!
読み終わったら、ポイントを付けましょう!