神奈さんとアメリちゃん

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第四百七十八話 お仕事ハケたよ! お祝いケーキ! ―後編―

公開日時: 2022年1月27日(木) 21:01
更新日時: 2022年2月1日(火) 02:35
文字数:2,202

「じゃあ、焼けるまで、お勉強再開しましょうか」


 白部さんが、折りたたみ机の上で、プリントをとんとんと整える。「はーい」と、鉛筆を執る子供たち。


「あの、白部さん。私も教師、やっていいですか?」


「私としては、ありがたいですけど……。よろしいんですか? お疲れでしょう」


 心配そうな顔をなさる彼女。


「この三ヶ月、子供たちと思いっきり触れ合える機会が少なかったですし、手持ち無沙汰でもありますし」


「わかりました。では、ミケちゃんとクロちゃんをお願いできますか?」


 およ。ここでアメリをお願いされないとは。


「アメリでは、ダメなんでしょうか?」


「すみません。上司から、なるべくアメリちゃんのデータを取るようにと、命じられてまして」


 ほむ。そういうことでしたら。


「プリントをどうぞ。ミケちゃんは小数の引き算、クロちゃんは分数の引き算に、それぞれ進んでいます」


「ありがとうございます。了解です」


 さあさあ、教師・猫崎先生、再始動ですよ!


 教えることしばし……。


「へー。こうなるのね」


「そうそう。0.1から0.02を引くとね。こうやって、0.08になるのよ」


「神奈お姉さん。次、ボクいいですか?」


「はーい。えっとね、三分の二から……」


 ひえー! 両面指導、忙しい! 白部さんは四面指導していたんだから、恐れ入ります……。


 そんなことをやっていたら、アラームが鳴りました!


「あ、焼き上がってるかどうか見てきますね」


「アタシも行きてー!」


「そうね。休憩にしましょうか」


 おりょ。なんか、休憩の流れに。でも、白部さんも休みたいでしょうしね。私、両面指導でクタクタになっちゃったもの。


「では、みんなで行きましょー!」


 というわけで、カルガモの行列状態でキッチンへ。


「焼けてるかなー……?」


 ミトンで型を掴み、竹串を刺すと、生地がまとわりつくこともなく、焼成完了! もう一本は……? こっちもオッケー!


「でっきあがりでーす。今度はこのまま冷ましますねー」


「なんだ、食べないのか?」


 残念そうな顔をする、ノーラちゃん。


「ホカホカを通り越して、熱いよ? ほんのり温かいぐらいまで、冷ましたほうが美味しいよー」


「そっかー。残念だな~」


 なるほど、さっそく食べたかったのね。


「夏だし、三十分ぐらいかな……? タイマーセット終了! じゃあ、また戻りましょう~」


 こうして、カルガモ一行は再び寝室へ。


 お勉強を再開し、みんなでこつこつわいわい取り組んでいると、アラームが鳴りました!


「これで、食えるのか!?」


 ガタッと机に手をついて中腰になり、しっぽをピンと立てるノーラちゃん。


「ノーラちゃん、お行儀悪いから」


 苦言を呈する白部さん。


「ノーラちゃんも待ちわびたことですし、行きましょうか」


 カルガモ一行、三度目の行進。


「うん、ほんのりあったか。じゃあ、切りますね」


「それ、アメリがやりたい!」


 愛娘、しゅびっと挙手!


「じゃあ、一本任せようか。ほかにやりたい子はいるかなー?」


「ルリ姉、アタシでもできるかな?」


 お、チャレンジャー現る。


「なんでも挑戦だね。いいですか、猫崎さん?」


「いいですよ。ただ、付き添ってあげてくださいね」


「それはもちろん。じゃあ、まずは型から抜こう」


 というわけで、二人が型から、クッキングシートにくるまれたケーキを抜き、広げると、ケーキが出げ~ん! 「おお~!」と感動する子供たち。


 アメリは器用に。ノーラちゃんは白部さんに教わりながら、ケーキを切っていく。


「できた!」


「待って、アメリ。アタシも……できたー!」


 二人で、「いえ~い」とハイタッチ。ほほえま。


「じゃあ、寝室でいただきましょうか。白部さん、すみませんけど私のをお願いできますか? 飲み物を持っていきますので」


「わかりました」


 カルガモーズ、四度目の行進。


 中にぞろぞろ入り、それぞれ配膳。


「では、いただきましょう。みなさん、ご一緒に……」


「「いただきます!」」


 六重奏!


 ぱくっ。リンゴの甘みと、アーモンドの触感が美味しい~!


「美味しいです、猫崎さん」


 微笑む白部さん。ノーラちゃんも、うめーシャウト!


「ふふ、美味しいじゃない。ミケの手作りだけあるわね」


「ボクたち、あまり大したことしてないけどね」


「エツに浸ってるのに、水、差さないでよ~」


 漫才する、ミケちゃんとクロちゃん。ふたりとも笑顔です。


「おお~。美味しい! 今度また、自分で作りたい!」


 そして、向上心が高い我が娘。


 みんな満足してるようで、良きかな良きかな


 こうして、手製のおやつも美味しく食べ終わり、私は片づけと、白部さんとノーラちゃんの、りんごジュースのおかわり。それと、みんなの紅茶をれに、キッチンへ。


 ……戻り!


「じゃあ、猫崎さんも戻られたことだし、続きしようか」


 「はーい」と、勉強体勢に移行。


 こんな感じで、つつがなく夕方まで勉強をするのでした。


「ボク、そろそろ帰らないと」


「あ、ちょっとまってね。お土産渡すから」


 まりあさんのぶんのケーキをラップにくるみ、ビニール袋に入れて手渡す。


「これ、まりあさんに」


「ありがとうございます。お姉ちゃん、喜んでくれるかな……」


 はにかむクロちゃん。可愛い。


 門まで送り、自転車で帰っていく彼女を見守ります。


 ほかのみんなも、五時半に帰宅の用意。ミケちゃんには、かくてるの皆さんのぶんの、ケーキを持たせました。


 三人と別れを告げ合い、最後の三つを冷蔵庫に。これは明日、近井さんご一家に渡す予定です。


 さーて、原稿の可否はどうかな? チェックしーましょ!

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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