神奈さんとアメリちゃん

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第百三十四話 うっかり神奈さん

公開日時: 2021年4月24日(土) 16:31
文字数:2,313

「がおー! ゴッドレンジャー、このバッドキングが相手だー! しまだくんチンアナゴを助けたかったら俺様を倒してみろー!」


「助けてー! ゴッドレンジャー!」


「任せろー! 行けー、ゴッドレンジャー!」


 現在、白部さんとノーラちゃんが来客中。あれ以来アメリも楽しさに目覚めたのか、ゴッドレンジャーごっこなう。今日の要救助者はしまだくんの模様。


 白部さんは新たに怪獣のフィギュアを持参しており、「悪役」として購入したそうで。


「しまださん!」


「にげなかったのかい、ほえほえさんくじら!」


「あなたをおいて、にげるなんてできないわ!」


 アメリはアメリで、なんかチンアナゴとくじらの愛の劇場を始めましたよ。でもほえほえさん、たしか前はそめごろうイカといい仲な設定じゃなかったっけ? 移り気な気性なのね。


 一方私はというと、今日も今日とてお仕事なう。周りがにぎやかでもまるで気にせずお仕事できるのは、我ながらちょっとした特殊能力かもしれない。


 時計を見ると、もう二時半。


「これから、お茶請けのお菓子を買ってこようと思うんだけど、二人は何か食べたいのあるかな?」


 くるりと椅子を回して問う。


「おー? アタシまだよくわかんねーからアメリと同じのでいい~!」


「アメリは、何でもいいよ~」


 ふむ、二人揃って力強いお言葉。


「白部さんも、遠慮なさらずにリクエストなさってください」


「えっ、私もですか? 悪いですよ」


「ご遠慮なさらず。二人のぶんもありますし」


 「恐縮です」とおっしゃりながら少し逡巡しゅんじゅんし、「リンゴのドライフルーツをお願いしてもよろしいでしょうか? なければ、普通のリンゴをお願いします」と、オーダーを頂戴しました。


「はい。では、子供たちの面倒を少しの間お願いします」


 一礼して、いざスーパーへ~。



 ◆ ◆ ◆



 というわけで、さくっと帰ってきました。ちょうど、リクエスト通りのドライフルーツがあって良かったー。


 紅茶をれ、トレイに載せて寝室に運ぶ。


「お待たせしましたー。みんなでいただきましょう」


「おねーちゃんおかえりー!」


「ありがとうございます。ノーラちゃんも、ちゃんとお礼しよう」


「おー! ありがとー!」


 ゴッドレンジャーごっこは一旦中断し、三時のおやつ。


「そういえば白部さん。文字学習タブレットの塩梅はどうですか?」


「ノーラちゃん最初あんまり興味示してくれなかったんですけど、エレメントレンジャー……ゴッドレンジャーが出てくる番組ですね。それの絵本が読めるようになるよって教えたら、俄然興味を持ってくれて。たいへん役立ってます。ありがとうございました」


「それは良かったです。やはり、ノーラちゃんも物覚えが早い感じですか?」


 ドライフルーツをぱくっ。うーん、甘~い。


「そうですね。まだ学習を始めたばかりなのでなんとも言えないですけど、早いほうだと思います」


 白部さんも、美味しそうにドライフルーツを食む。


「やはりそうなんですか。ノーラちゃん、お勉強楽しい?」


「んー……別に。でも、エレメントレンジャーの本読みたいから頑張ってる!」


「そっかそっか。頑張り屋さんだねえ」


 彼女の頭を撫でると、「ふへへ~」と目を細める。向学心が異様に強いアメリがレアケースで、このぐらいの動機のほうが普通よね。


「『くろねこクロのたび』のほうはどう?」


「んー……イマイチ」


 あらら、お気に召しませんでしたか。


「そうなんですよ。ノーラちゃん、まるでとは言いませんけど、それほど興味ないみたいで。なので、もっぱら私の気分転換用の読み物になってますね」


「やっぱり、もっと男の子向けっぽいほうが性に合うのかもしれませんね」


「かもしれません。今度また駅前に行ったとき、吟味してみようかと」


 紅茶で互いに喉を潤す。


「駅前といえば、やはり移動はバスですよね?」


「はい。でも、今度のボーナスで軽の中古でも買おうかと思ってます。免許自体は、医大時代に取ってますので」


「そうなんですか。そういえば、近くに月極駐車場がありましたね」


「ええ、そことも契約しようかと」


 白部さんの新生活設計も、順調みたいね。


「そういえば、ジュニアシートは買われないんですか?」


「あっ!」


 白部さんに指摘され、すこーんと頭からジュニアシートの発想が抜けてたことに気付く。


 そういえば私、後ろにアメリだけじゃなく子供を乗せる機会が多いから買っとかなきゃよね。義務じゃないからって失念してたわ……。あとで通販でポチらなきゃ。


「思い出させていただいて、ありがとうございます。あとで購入しておきますね」


「お役に立てたようで、良かったです」


「危ないところでした。何か起こってからじゃ遅いですものね」


 自覚はあるけど、私もだいぶ粗忽者そこつものだなあ……。



 ◆ ◆ ◆



 楽しいティータイムも終わり、私はお仕事、三人は遊びを再開。まあ、白部さんは子供と遊びつつデータ取ることがお仕事なんだけど。


 PCと向き合っていると、LIZEのメッセージ着信が。どなたでしょ? と見てみると、優輝さん。


「十九日にF公園でフリマがありますね! 一緒に回りませんか?」


 と、おなじみバンザイ猫スタンプ。


「白部さん。優輝さんから十九日にフリマを回りませんか? ってメッセージが来ました。そちらにも届いてませんか?」


 首を向け問うと、スマホを操作する彼女。


「あ、来てます来てます」


「私は面白そうなので行ってみたいですが、白部さんはいかがですか?」


「私もご一緒したいですね。参加の旨を返信しておきます」


 良きかな良きかな。私も、参加を返信っと。


 こうしてつつがなく日も暮れていき、白部さんとノーラちゃんもご帰宅。今日も充実した一日でした。


 あ。通販、通販……。よし、ジュニアシート注文完了っと。思い切って、安めのだけど三席ぶん買っちゃいました。後ろに子供三人乗せること多いものね。

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