「「こんにちはー!」」
「こんにちは」
公園に行こうとすると、いつぞやアメリの写真を取らせてほしいとお願いしてきた女学生二人組に挨拶されたので、ご挨拶返し。
「おおー、こんにちはー!」
愛娘の、しゅびっと挙手してご挨拶。
「アメリちゃん、可愛いー! また、写真撮っていいですか? 修正はかけますんでー」
「あ、はい。いいかな、アメリ?」
「いいよー」
というわけで、パシャリ。
私たちは、それぞれの名前をモロに出して漫画に出しているもので、新・あめりにっきが始まってからというもの、このあたりで、ちょっとした有名人になってしまいました。
「猫崎先生~! 漫画、いつも楽しく読ませてもらってますよー!」
「ありがとうございます」
女学生ズと別れた後、私と同じぐらいの歳の女性にエールを送られ、ぺこりとお辞儀。
今思うと、実名はまずかったかなー? でも、旧作時代から、私の名前は出しちゃってるもんねえ。今さら仮名もなんか変だし。
本当は、アメリの意思を問うべきだったのかもしれないけれど、旧作を想像だけで続けるのも辛くて、娘の成長を待つのが難しかったという側面がある。
実録育児もの作品を描いている作家さんには、共通の問題かもしれない。
ため息をつくと幸せが逃げると言うけれど、悩ましい問題に、つい出てしまうね。
「おねーちゃん、心配事?」
いけない。アメリを心配させてしまった。
「ううん。お仕事、ちょっとだけ疲れたなって思って」
「おお~。おねーちゃん、いつも頑張ってるもんね! あとで、肩揉んであげる!」
嘘ついちゃったなあ。ごめんね。
「ありがとう。さ、着いたよ」
というわけで、とうちゃーく!
「あ、アメリちゃんだ!」
そう反応したのは、ともちゃんでも、英一くんや美子ちゃんでもなく、まだあまりよく知らない子。
彼女の声が呼び水となって、子供たちがわーっと駆け寄ってくる。
「すげー! 生アメリだ!」
「握手してー!」
「お、おお」
いやはや、まるでアイドルだ。「ねこきっく」は、もっと上の年齢の女性を対象にした雑誌だけど、子供だって読むことはあるわけで。メディアの力って怖いね。
「はいはい、押さないでー」
もみくちゃにされてるアメリを囲む子供たちに声をかけると、保護者の方々から、すみませんとお詫びされながら、子供たちが引き剥がされていく。これはこれで、逆にちょっと子供たちに申し訳がない気がしてくる。
まあ、子供だけで遊びに来てる子たちは、まだアメリに群がって、わちゃわちゃしてるけど。
しかし、人気者だからといって有頂天にならないのが、アメリの出来てるところ。
みんなで遊ぼうと提案し、子供たちで話し合った結果、ケイドロに決まりました。
「こんにちは。なんだか大変ですね」
背後から声をかけられたので、振り返ると、親子さんでした。もちろん、ともちゃんも一緒。
「こんにちは。ともちゃんもこんにちは」
「こんにちは! アメリちゃん、取られちゃった……」
しゅんとする、お砂遊びセットを手にした、ともちゃん。
「ケイドロは苦手?」
問うと、こくりと頷く彼女。むーん。
「アメリが疲れてなかったら、あとで砂場で一緒に遊んであげられないか、お願いしてみるね」
そう言うと、こくこく勢い良く頷くともちゃんでした。
私はアメリを。親子さんは、お砂遊びするともちゃんを。それぞれ、方向違いの視線で見ていなければならないので、なかなか会話も弾まず。
アメリは、内気なともちゃんから、声をかけられなかったものだから、彼女に気づかなかったみたいで、無邪気にケイドロ中。まあ、アメリ的には楽しいみたいだから、それを喜んであげなくちゃね。
幸い、英一くんと美子ちゃんも来て、ともちゃんも孤独ではなくなりました。
あ、ケイドロが一段落ついたみたい。
「おおー! みんなこんにちはー!」
アメリが四人に声をかけると、ともちゃんの顔が、ぱあっと明るくなる。
「アメリちゃん! お砂遊びしよー!」
「お水飲んでからでいい?」
こくこくと、勢い良く頷くともちゃん。
アメリはお水を飲んだ後、自転車からバケツとスコップを持って、戻ってきました。
「何作ろっかなー」
アメリちゃん、元気ですねえ。若さがうらやましいわ。でも、帰ったら仮眠取らせたほうがいいかな? 子供って、けっこう無理しちゃうからね。
親子さんとも、おしゃべりできるようになったので、世間話に花を咲かせる。
近々、ディスティニーの新作が、駅前の映画館で上映されるそうで。そういえば、なんだかんだでディスティニー作品見れてないなあ。いい機会だし、観に行こうかな。
私からは、最近仕入れたレシピの話を振ってみる。親子さん、興味深そうに聞いてくれました。
そんな、他愛もないおしゃべりが一段落すると、例によってアメリちゃんが謎オブジェを作っていました。
「アメリ、それなーに?」
「そめごろう!」
そめごろう、よくわからない姿になって……。
でも、上手上手と褒めるのを忘れない。子供は、褒めて伸ばす!
そうしていると、お別れの時間がやってきました。
「友美ー、そろそろ帰るよー」
スマホのアラームを止めながら、親子さんが愛娘に呼びかける。
「はーい。アメリちゃん、また遊ぼーね!」
「うん! 英一くんと美子ちゃんはどーする?」
「オレも帰ろうかな」
美子ちゃんも、お兄ちゃんに同意のようです。
「おお。じゃあ、アメリも帰ろーかな」
片付けを始める、うちの子。
新たに公園にやってきた子に、また囲まれそうになるけど、「ありがとー。でもごめんね、もう帰るの」と、申し訳無さそうに応える。我が子ながら、きちんとしてるなー。
帰り道も、色んな人に声をかけられながら戻るのでした。
この先どうなるかわからないけれど、きっと素晴らしい未来が拓けていると、私は信じて疑わない。
我が最愛の娘に、幸あれ!
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