神奈さんとアメリちゃん

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第五百九話 アメリと赤ちゃん

公開日時: 2022年2月27日(日) 21:01
文字数:2,195

 今日は、白部さんとノーラちゃんがオフ。なので、近井さんご一家ともども、公園に行きましょうというお話になりました。


 相変わらず暑いけど、少し曇ってるおかげで日差しがやや弱いのが救いかな。白部さんは念の為に、塩分補給のタブレットを持ってきているそうです。さすが、お医者様。


「「「とーちゃーく!」」」


 公園に着くと、嬉しそうに声を出す子供三人。暑いのに元気ですねえ。


「あら、模部もぶさん! こんにちはー!」


 突如、親子ちかこさんが声を上げます。彼女の視線を追うと、ベビーカーとともにベンチで休んでいる、私たちぐらいの年の女性がいました。その人に気づくと、良夫さんもご挨拶します。向こうも、ご挨拶返し。


「お知り合いですか?」


「はい。お隣にお住まいの、模部さんです」


「私たちも、ご挨拶しなきゃですね」


 というわけで、私たちも模部さんにご挨拶。


「はじめまして。近井さんの友人の、猫崎と申します。こちらは、娘のアメリです」


「同じく、白部と申します。娘のノーラです」


 子供たちも、ご挨拶。


「はじめまして、模部です。親子ちかこさんから、お話はかねがね伺っていました。本当に、猫の耳なんですねえ」


 もはや、猫耳人間はご近所で人の口に上りすぎたのか、さして驚かれていないご様子。


 ベビーカーを見ると、まだ一歳にもなっていないであろう赤ちゃんが、すやすやと眠っていました。


「可愛いですね。服の色からして、娘さんですか?」


「はい、女の子です。名前は栄子えいこっていうんです」


「おおー? ちっちゃい人間だー」


 興味深げに、栄子ちゃんを見る愛娘。


「そっか、アメリは赤ちゃん見るの初めてか。生まれて間もない、人間の子供だよ」


「「おおー」」


 感心する、猫耳幼女の二人。


「撫でようとして、頭触っちゃダメよ。まだ、頭の骨がくっついてないはずだから」


「おお!?」


「えー! そーなのかー!?」


 白部さんが説明する、人体の神秘に子供二人びっくり。


「あ、起こしちゃったかな」


 栄子ちゃんが、うっすらと目を開ける。見知らぬ人……私たちに、きょとんとしているね。


「手、握っていいですか?」


「はい」


 手を握る。ほんと、ちっちゃいなあ。


「アメリも、握ってみていい?」


「ええ。優しくお願いね」


 模部さんの許可を得て、アメリもそっと握る。


「おお~、あったかい! お手々、ちっちゃーい!」


 きゃっきゃと喜ぶ、栄子ちゃん。


「栄子、アメリちゃんのこと、気に入ったみたいよ」


「おおー! 気に入られた!」


 嬉しそうな愛娘。


「アタシもいいかー?」


「どうぞ」


 ノーラちゃんも、手を握る。


「おー! これが赤ちゃんの手かー! ほんと、ちっちぇーなあ!」


 少しだけ、ゆらゆら。すると、突如栄子ちゃんが、泣き出してしまいました!


「え!? アタシ、なんか悪いことしたか!?」


「いえ、多分おむつかも……一度、帰宅させていただきますね」


 そう言い、ベビーカーを押して、公園から出ていく模部さん。


「ルリ姉、おむつって何だ?」


「赤ちゃん用の下着だね。うんちとか、おしっこを受け止めるために履かせるの」


「うえー、ばっちー!」


 不快感を、隠そうともしないノーラちゃん。


「そうこと言わないの。ノーラちゃんだって、最初は床に垂れ流してたんだからね」


「猫だった頃の話、言うなよー……」


 ばつが悪そうに、耳としっぽを垂れて、しょんぼりする。


「おねーちゃん、赤ちゃんって可愛いね!」


 キラキラ瞳のアメリちゃん。


「そうね。私も白部さんも、生まれて間もない頃は、ああだったのよ」


 「へー!」と感心する、子供たち。


「写真、残ってるかな。今度帰省したら、見せてあげるね」


「おおー!」


 愛娘の瞳が、さらに瞳をキラキラを増す。


「模部さん、またこちらに戻ってこられるのでしょうか?」


「どうでしょう? 暑いですからねえ……」


 白部さんの質問に、ハンカチで額の汗を拭いながら、答える親子ちかこさん。


「友美、お砂場で遊ぶかい?」


「うん! アメリちゃんも、ノーラちゃんも遊ぼ!」


「「おおー!」」


 良夫さんのご提案で、いつもの砂遊びに。元気、元気!


 今回は、みんなでオブジェ作り対抗戦。やはり、例によって、よくわからない物体を作っていく我が娘。


 いや、ノーラちゃんのも割と謎だな……。なんだろう、これ?


「ノーラちゃん、それなーに?」


「早井選手だぜ!」


 ええと、ノーラちゃん憧れのサッカー選手だっけ。あまり、人に見えないわね……。


 ともちゃんは、堅実にピラミッドを作っています。お上手~。


「できたー!」


 アメリの完成宣言。


「それは、なーに?」


「あのね、えっとね……みろろん! ラーメン屋さん!」


 お砂オブジェで、うどん屋と蕎麦屋とラーメン屋さんが揃ったね。次は、スパゲッティー屋さんかしら?


「あ、模部さん戻ってこられましたよ」


 親子ちかこさんが戻ってきた彼女に気づき、一同に声をかける。


「おおー! また、赤ちゃん見よー!」


「ええー! アタシ、まだ完成してねーぞー」


「あとで、また作ろうよ! 二人とも、行こー!」


 アメリが汚れた手のまま駆け寄ろうとするので、「手を洗ってからね」と注意する。「おお」と言い、水道に向かうのでした。


 こうして、アメリたちは赤ちゃんとのふれあいを、「べろべろばあ」をしたり、思う存分堪能。とても素晴らしい体験となったようです。


 猫耳人間って、子供産めるかどうかわからないのよね。まだ、大人になった子がいないから。


 もし、アメリに子供が生まれたら、どんな子になるんだろう? 同じ猫耳人間同士としか、産めないのかな? ちょっと、謎だね。

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