神奈さんとアメリちゃん

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第四百二十六話 私が水着に着替えたら ―中編―

公開日時: 2021年12月5日(日) 21:01
文字数:2,048

 食後は、「るるる」にとんぼ返り。まずは、子供たちのぶんを先に済ませちゃいましょうってことで、いつもの児童服売り場へ!


 私と近井さんはすでに子供用の水着を買っている身なので、さつきさんたちとウィンドゥショッピング。


「ミケ子見てるとさ、ウチも子供欲しくなっちゃうよなあ」


 嬰児えいじ服売り場を眺めながら、そんなことをおっしゃる久美さん。


「姉さん、そんないい相手いたっけっすか?」


「オメー、わかってて言ってるだろ」


 最初にお会いしたとき以来の、じゃれ合い空振りローキック。


「もうー。すーぐ、そうやってどつき漫才始めるんですから~」


 由香里さんが、ため息を吐く。


「モテたかったら、酒量を今の半分にはしたほうがいいっすよ~」


「よけーなお世話だ。生きがいを減らせるかってーの。人生冗談しかない、オメーに言われたかねえ」


 軽く、肩口にチョップ。ほっとくと、いつまでもやってそうね。


「その、お二人はいつもそんなご感じで?」


 面食らった近井さんが、お二人に尋ねる。


「あー、どうもすんません。こいつさつきとは、子供ガキの頃からずっとこんな感じで。ほんとに、口を開けば九割冗談しか言わないんですよ」


「あっはっはー。メンボクないっすー」


 これまた、なんだか懐かしいやり取り。メンボクないっすーは、バーベキューのときだったかな。あれで彼女のキャラを、完全把握したもんです。


「お店にご迷惑だから、そろそろやめてくださいね。まあ、うちの親とか結婚しろアタックしてこなくて、気楽ですけど」


 由香里さんが制止しつつも、そんなことをおっしゃる。


「うちもですねえ。奇しくも、アメリという孫ができて、その顔を見せることができましたけど」


 傍らで、ともちゃんとおしゃべりしていたアメリの頭を、優しくぽんぽん叩く。


「私が言うのもなんですけど、今は結婚して家庭持つのが、すべてではないですからね。ライフスタイルが多様化を迎えてるんだと思います」


 そうおっしゃる近井さんも、ともちゃんの頭を優しく撫でる。


 近井さんのご家庭は円満だろうから、そういう方を見ると、ちょっと結婚願望が刺激されちゃうかな。


「自分は、ケッコンするならぜひ、姉さんとがいいっすねえ……」


 頬に手を当て、身をくねらせるさつきさん。


「子供産ませろよ。人の話聞けよ」


 また、漫才してる……。ほんとに、仲がおよろしいことで。


「やあやあ、にぎやかですねえ。子供たちの水着がだいたい決まったんですけど、皆さんの意見もいただきたくて。ちょっと、試着室のほうに来ていただけますか?」


 優輝さんが試着室のあるほうから歩いて来ながら、私たちに助言を求めてきました。では、さっそく行ってみましょう~。



 ◆ ◆ ◆



 現場に到着すると、お三方の勧めで、順番にミケちゃん、クロちゃん、ノーラちゃんが入ったボックスに首を突っ込んで覗いていく。


 服の上から試着してるから、イメージがそのまま伝わるわけではないけど、漫画家として鍛えた審美眼を発揮してみせましょうとも!


 まず、ミケちゃん。赤で、肩口と腰にフリルの付いたタイプ。これはとても似合ってる。いかにもミケちゃん、って感じだわ。


 次、クロちゃん。なんというか、ぱっと見、黒い旧スクール水着。逆に、よくこんな地味なのを児童服売り場に置いてたなって感じ。クロちゃんらしいといえばらしいけど、私的にはノーかなあ。


 最後、ノーラちゃん。薄緑のワンピース。フリルなんかの装飾はないけど、機能的だし鮮やかで、ノーラちゃんによく似合っている。これまたグー!


 というわけで、所感を優輝さん、まりあさん、白部さんにそれぞれ伝える。


「うーん、クロちゃん。やっぱりもうちょっと可愛いのにしましょう?」


「そういうの、ボクに似合うかなあ……?」


 一度試着したものを脱ぎ、着替えてボックスから出てくるクロちゃん。


「私的には、黒基調なら、中央に縦に白が太く走ってるのを選びますねえ。サイドの黒と合わさると、すごく締まった感じが出ますけど」


「わたしは、ピンクが黒髪に映えると思うんですよ。互いに引き立て合う配色ですから」


「自分的には、黒髪を目立たせるなら、フリル付きの純白をオススメしたいっすね」


 絵心トリオでワチャワチャ。どうにも、それぞれに一理あって、これ! という意見が出ない。


「近井さんは、どう思われます?」


 私たちでは堂々巡りになるので、彼女にパスを投げてみる。


「私ですか!? そうですねえ……クロちゃんは、それがいいって思ったのよね? だったら、好きなのがいいんじゃないかしら。いかがでしょう?」


 クロちゃんとまりあさんを、それぞれ見る彼女。


「ボクは……うん。やっぱり、これがいいなって」


「クロちゃんがそう言うなら、わたしとしても、意思を尊重したいですね」


 こうなると、私たちの出る幕ではないね。結局、好きなのを着るのがイチバン!


 というわけで、三人の水着が無事決まり、続いてスポーツ用品店で浮き輪とポンプをお買い上げ。かくてるの皆さんは、複数人乗りのビニールボートも買っていきました。


 これらを一度トランクに収めた後は、いよいよ大人組のお買い物ですよ! 楽しみですねえ!

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