ぼーっとした頭でトーストをかじり、牛乳で流し込む。今日からアメリも同じ朝食だ。
アメリが色々話しかけてくるが、私の反応は鈍い。起き抜けの私に「精気」の二文字はない。
「あー。今日はショッピングモール行こうかー、アメリー」
パンをもそもそと咀嚼していると、少しずつ覚醒してくるのでアメリに問う。
「しょっきんぐ……も?」
「ショッピングモール。お店がいっぱいあるところー」
今の私の脳みそでは、これが精一杯の説明です。
「行きたい! 行きたい! 行きたい!」
私のテンションとは真逆に、大盛り上がりのアメリ。
というわけで、私の意識がしゃっきりするのを待ってから、着替えてガレージに向かうのでした。
◆ ◆ ◆
「おお~! これが、じどーしゃの中か~」
自動車については昨日の質問攻撃のときに教えているが、中に入るのは初めて。正確には猫時代に病院などへ連れて行くとき、かごに入れた状態で乗せたことはあるけど。
「シートベルトしようね。降りるときまで外しちゃダメだよ」
後部座席のアメリのシートベルト着用を手伝い、運転席に乗り込む。
「しゅっぱーつ!」
かくして、駅前を目指す。例によって「あれ何?」「これ何?」攻撃が飛んでくるが、「後で教えてあげるから静かにね」と、運転中につきやんわりと黙らせる。
そして、駅前のショッピングモール「るるる」に到着!
地下駐車場に停め、駐車券を受け取る。
エレベーターに乗るとアメリはもうそわそわで、いても立ってもいられないという感じ。ドアが空いた途端走り出さないか、注意しないと。
ドアが開くと案の定走り出そうとするので、後ろから抱きとめる。
「はーい、はしゃがないの。まずは、靴を買おうね」
手をつないで三階の靴屋を目指す。「あれ何?」攻撃が道中飛んでくるので、あれは何々屋さんだよ、と説明していく。
「いらっしゃいませ」
靴屋に着くと、店員のお姉さんがお出迎え。
「この子に合うスニーカーを探しているんですけど」
「サイズはいくつですか?」
「それが、ちょっとわからなくて。こちらで測っていただけると」
お姉さんが「かしこまりました」とメジャーを取り出し、腰掛けたアメリの足サイズを測る。
「二十一センチですね。ですから、二十一.五センチのものをお勧めします」
「じゃあ、アメリ。見て回ろう」
こうして、店内を物見遊山。
「これなんかどう?」
ピンクのマジックテープタイプのスニーカーを手に持って見せる。
「んー……こっちがいい!」
代わりに同型の白いスニーカーを指差すアメリ。ふむふむ。
「もう一足ぐらい買っておこうか」
棚を見せてまわると、薄紫のスニーカーが気に入ったようなのでそれを取る。
アメリがかしこまった場に出ることはないだろうし、フォーマルな靴は要らないかな。
「試し履きいいですか?」
「はい」
店員さんがやって来て、アメリの試し履きに付き合う。
「どう? 歩きにくかったりしない?」
「いいと思う!」
「とてもお似合いですよ」
そのようなわけで、白いほうをそのまま履いていくことにし、サンダルと薄紫のスニーカーは袋に入れてもらう。
歩きやすい靴を手に入れて、ルンルン状態のアメリ。
「よし、次はパジャマだね」
今はTシャツでもなんとかなってるけど、これからのためにパジャマも必要だ。いやはや、諭吉先生に羽根が生えて飛んでいくなあ。でも、愛するアメリのためだもんね。
エスカレーターで二階に向かう。こちらには児童服売り場がある。
パジャマ売り場を案内してもらい、アメリに合うサイズのものから彼女の気に入った柄を二着選んでもらう。
ピンクに白い猫足跡柄のものと、同じくピンクに愛らしい猫とリボンがプリントされたもの。両方猫柄とは、やはりシンパシーを感じるのかしら。
ただこれ、両方ともボトムがパンツなのよね。まあ、少し手を加えればしっぽ出せるかな。
「試着してみたいのですけど」
試着ボックスを案内してもらい、アメリの着替え終わった合図で中に首だけ突っ込む。
おおおおおお! まずは足跡柄のほうね! かわいい! 究極! 語彙崩壊! 撮影会を始めたくなるけど、ここで開催したらただの変な人だ。ただ、無理やりしっぽ出してるから、お尻がちょっと見えちゃってるな。
「すごい似合ってるよ~」
とろけそうな、本家本元であるアメリ以上の猫撫で声を出す。
「ほんと!? じゃあこれにする!」
「もう一着も試してみよう」
首を抜き、アメリの声とともに再度首を突っ込むとこれまた究極の可愛さ!!
はぁん……などと妙に艶っぽい声が漏れてしまう。とろけるわぁ~……。
「いいよいいよー。それもすっごい似合ってる!」
というわけで、アメリには元の外着とキャスケット姿に戻ってもらって、二着ともお買い上げ。ちゃんとしっぽ出せるようにした、これ着たアメリ見るの楽しみ~。
ついでにソックスも三着購入。服関係はこんなところかな。
「ご……おねーちゃん、お腹すいた~」
おお、買い物に夢中になってたらもうすぐ正午。本格的に混み始める前に、入店しちゃいたいね。
「今日はグラタン以外の、新しい食べ物にしてみようか。オムライスにしよう」
「おむらいす?」
「美味しいよー」
というわけで、アメリの手を引き再度エスカレーターで四階の飲食店フロアに向かうのでした。
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