まりあさんとの楽しい会話から二日後の午後一時。もうすぐクロちゃんが遊びに来る運びになっています。
ネームのほうはありがたいことに一発で通り、現在執筆中なう。
こつこつ下書きを進めていると、インタホンがピンポンと鳴りました。応対すると、果たしてクロちゃん。門までお迎えに行きましょ。
「はーい……あら? 白部さん、こんにちは」
クロちゃんと一緒に、白部さんとノーラちゃんが立っているじゃないですか。クロちゃん、ノーラちゃんとも挨拶を交わす。
「こんにちは。お散歩しようとしたら、ちょうど猫崎さんのお宅の前でクロちゃんを見かけまして。話を聞いてみたらアメリちゃんと一緒に遊ぶとのことで、よろしければ私たちもお邪魔しようかと思いました。ご迷惑でしたら、当初の予定通り散歩にでかけますが……いかがでしょう?」
「そうですね。仕事中なので、私自身はそちらに集中していて構わないのでしたら、一向に構いませんよ。ちょうど、おせんべいもあるのでおもてなしできますし」
「ですって、ノーラちゃん」
「おー! じゃあ、図鑑とゴッドレンジャー持ってくる!」
ぴゅうと、自宅に舞い戻ろうとするノーラちゃん。
「あ、こら。鍵かかってるわよー。一旦、失礼します」
慌てて後を追いかける白部さん。いやはや、相変わらずエネルギッシュだね、ノーラちゃんは。
「ボクは、先に上がっていていいですか?」
「いいよー。アメリ、寝室にいるから」
クロちゃんと連れ立って、屋内へ。
「お先にどうぞ。お茶菓子持っていくからねー」
「ありがとうございます」
ぺこりと一礼して、寝室に向かう彼女。
お茶とおせんべいを用意して寝室に行こうとすると、インタホンの呼び鈴が。一旦リビングの机にお茶菓子を置き応対すると、白部さんでした。
二人を招き入れ、寝室へ移動。
「どうぞ、召し上がってください」
白部さん含めた四人に配膳する。
「ありがとうございます。ほら、ノーラちゃんも」
「おー! ありがとな、カン姉!」
元気に拳を突き上げるノーラちゃん。
クロちゃんも、「ありがとうございます」とぺこりと頭を下げる。
さて、私はお仕事の続きだよ~。子供たちと戯れたいけど、生活も大事なのよ。しくしく。
「アメリ、漢字のお勉強したいんだってね」
クロちゃんがアメリに問いかける。ガサガサと紙を取り出す音と、鉛筆を置く音が聞こえた。
「おお~。そだよー」
「あら、お勉強会? 感心感心。ノーラちゃんも、せっかくだからお勉強しましょ?」
「ええ~。恐竜の話したいぞー」
これは、白部さんとノーラちゃん。
「クロちゃんが先約なんだから、だーめ。それに、お勉強なら私が教えてあげられるし。どう、クロちゃん?」
「そうしてもらえると、助かります」
クロちゃんが、ちょっと恐縮気味に言う。
「ね、二人ともお勉強したいって。ノーラちゃんも、早く絵本や図鑑を一人で読めるようになりたいでしょ?」
「う~……。わかった、勉強する!」
「よし! その意気だよ、ノーラちゃん!」
すると、「えへへ~」というとろけた声が聞こえる。そちらをちらりと見ると、ノーラちゃんが白部さんに頭を撫でられていた。
その後は、それぞれの学力に合わせた三面指導を白部さんが務める。さすがお医者様というか、教え方にそつがなくて上手い。
勉強内容がもともと漢字だったので、先行組には漢字、ノーラちゃんにはひらがなの授業をしているご様子。
「あー、惜しいなノーラちゃん。そこは『え』じゃなくて『へ』って書かなきゃダメなんだよー」
「うー、ムズカシー!」
ふむ。ノーラちゃんも、やっぱりそのあたりで一度詰まるかー。
「おおー、ノーラ頑張れー! そこアメリも難しかったけど、乗り越えたら楽だよ!」
「うん。あと一息だよ、ノーラ……!」
「うおー! 頑張って絵本と図鑑読めるようになるぞー!」
先輩ズに励まされ、気合を入れ直すノーラちゃん。ふふ、ほほえま!
そしてしばらく経つと、「はい、ここでちょっと休憩しよう」と、白部さんの声。
「ちょっと能率が落ちてきたように感じるから、休憩しましょ」
ふー、と息を吐く三人娘。
「あ、お茶淹れてきましょうか?」
「すみません、お願いできますか?」
私もちょうど休憩したかったところなので、白部さんから湯呑とお皿の載ったお盆をいただく。
……さて、台所に来たはいいけれど、お菓子を切らしちゃってるのよね。よし、あれを作っていきましょう!
◆ ◆ ◆
「お待たせしましたー」
「おー、カン姉遅かったなー」
「こら。せっかくお茶出していただいてるんだから、そういうこと言わないの。ありがとうございます」
白部さんがノーラちゃんをたしなめる。
「ごめん……。ありがとー、カン姉!」
「うん、お礼が言えて偉いね!」
アメリとクロちゃんもお礼を述べてくれ、ほっこり笑顔でお茶菓子を配膳する。
「あ、これ……!」
クロちゃんが、お菓子を見て反応する。
「おお~! カップケーキだー!」
そう。お菓子としてさっと作れる、いつぞやのカップケーキを用意してきました~。ちなみに、お茶は紅茶に変えてます。
「おー? 何だこれー?」
「カップケーキ! すごく美味しい!」
アメリ語彙で、ノーラちゃんに魅力を伝える。
「私も、デスクでいただきますね」
デスクに腰掛け、カップケーキをスプーンですくう。
やーん、美味しい~。お手軽かつ美味しいなんてサイコーね!
ちなみに、今回ははちみつをジャム代わりに混ぜています。
「うめーッ!!」
ノーラちゃんも好感触。
「美味しいです。この時間で作れるということは、結構お手軽なおやつなんですか?」
「はい。簡単に作れますよ。レシピはネットにありますので」
「そうなんですかー。私も今度、ノーラちゃんに作ってあげよう……」
うんうん頷きながら食む白部さん。ノーラちゃんが、キラキラした期待の眼差しを向ける。
美味しくおやつを食べ終わり休憩し終わったところで、空のカップを下げる。戻ってくると、みんなでお勉強を再開していました。
私もお仕事を再開。すると、「あっ!」と白部さんが素っ頓狂な声を上げる。
「どうされました?」
驚いて、彼女の方を向く。
「いえ、私この間、誕生日が近いことを伝えてましたっけ?」
こないだ……。お土産交換会のときかな?
「いえ、初耳ですね」
「これは、うっかりしていました。私、今月十五日が誕生日なんです」
「あら、おめでとうございます!」
ぱちぱちと拍手する。子供たちも、それに続く。
「じゃあ、優輝さんに伝えないとですね! 彼女、お祝いごと大好きですから」
「はい。なんか催促してるみたいで気が引けちゃいますけど、角照さんそういうの大好きですものね」
スマホを操作する白部さん。多分、LIZEに入力しているのでしょう。
すると、LIZE着信音が鳴り、白部さんが視線を動かす。
「当日お昼、お祝いしましょうとのことです」
「良かったですね!」
良き哉良き哉。それにしても、誕生日ラッシュだねー。まあ、いつものメンバーだけで十一人いるものね。
当日が楽しみだなあ!
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