神奈さんとアメリちゃん

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第四百五十一話 これからも一緒に、楽しく、幸せに暮らしていこうね

公開日時: 2022年1月1日(土) 21:01
更新日時: 2022年2月27日(日) 11:44
文字数:2,080

「アタシも参加したかったぞー!!」


 二人が帰ってから、しばらく後のこと。LIZEで、ぷんすか猫スタンプを貼るノーラちゃん。今日から、彼女もチャットの仲間入りです。


 今日、三人でレトロ遊びフルコースを楽しんだと聞いたら、この有様。困ったね。


「まあまあ。今日はスマホとか、色々買いに行ってたんだから仕方ないじゃない」


「今度、また遊ぼう? 次も、持っていくから」


 なだめる白部さんとクロちゃん。


「う~……。ゼッタイにゼッタイだぞ! うおー! 遊ぶぞー!!」


 いやはや、テンション高いな。


「これから、ここもいっそう、にぎやかになりそうですね」


 うふふ笑い猫スタンプを貼る由香里さん。


「もうすぐクロちゃんの誕生日だし、海開きも始まってますからね! いやー、楽しみだなあ!」


 優輝さんの、バンザイ猫スタンプ。イベント大好きガールの血が騒いでしょうがないって感じですねえ。


「誕生パーティー、楽しみです」


 当の本人も、いつもの静かな口調ながら、内心ものすごく楽しみにしてそう。


「クロちゃんが転生してから、もう二年か~……。早いですねえ」


 感慨深そうなまりあさん。


「元気にすくすく育って、嬉しい限りです。最近は、人見知りも克服してくれて」


「お姉ちゃん、それは忘れてよ……。なんていうかね、アメリがボクを変えてくれたんだ。もちろん、ミケもノーラも。友達がいるって、いいね」


 きっと、画面の向こうではにかんでいることでしょう。


「そうね。フシギな縁よね。優輝たちがたまたまここに住もうって思わなかったら、ミケ、みんなときっと出会ってなかったもの」


 私は最近、ことにこの不思議なご縁に思いを馳せることが多いけど、ミケちゃんもなんだね。


「ああそうだ、一応念のため。クロちゃんの誕生パーティーは、十五日お昼にうちで予定しています。ご予定を空けておいてくださいね」


 サムズアップ猫スタンプをぺたりと貼る優輝さん。


 一同、同じくサムズアップ猫スタンプで返す。


「順路なので、近井さん、まりあさんの順に、車でお迎えに行きますね」


 お二人から、「ありがとうございます」とお言葉をいただく。


「海のほうはどうするっすか?」


「あー、梅雨が明けたらさっそく……といきたいけど、どうですか?」


 しばしチャット停止。皆さん考え込んでいるのでしょう。


「私の下書きが終わるのを、待っていただくのは難しいですか? さすがに、下書き渡す前にまる一日遊んじゃうと、アシさんがそのぶんしわ寄せを受けるので……」


 現在、ネームは通っており、下書きまで進んでいる状態。


良夫よしおさんが二十一日と二十二日に有給取って五連休にしてますけど、二十一日はいかがですか? 間に合いそうでしょうか、猫崎さん」


 良夫さんというのは、近井さんの旦那さんだ。


「あ、はい。その頃には、いくら何でも作画に入ってないとまずいぐらいなので、問題ないです」


「わかりました。では、二十一日に仮予定で。雨天だったら、また考え直しましょう」


 優輝さんがまとめ、一同、「了解です」とか、「はーい」とお返事。


 アメリちゃんの水着にしっぽ穴も作ったし、楽しみですねえ!


「作業を進めるためにも、そろそろ落ちますね」


 みんなから、「お疲れ様でした」とか、「おねーさん、またねー」などの言葉をいただく。さあ、もうひと頑張りいってみよう!


 愛娘は、もう少し雑談を続けるようです。



 ◆ ◆ ◆



 仕事に打ち込んでると、「ふわあ~」と大あくびが聞こえてくる。ベッドを見ると、アメリが船を漕いでました。


「アメリ、おねむ? 電気消そうか?」


「歯、磨いてくる~」


 のそのそと歩いていくのを見送る。今日も、大ハッスルしてたものね。


 ややあって、また大あくびしながら戻ってきました。


「おねーちゃん。ご本読んで欲しい~」


「いいよー。好きな本取ってね」


 作業を保存し、PCをスリープ。


 「うどんのめがみさまと あいのてんし」を受け取り、ベッド横のサイドテーブルのランプ以外は照明を落とす。


 アメリちゃんがもぞもぞと布団に潜り込んだのを確認すると、静かに落ち着いた声で読み聞かせるのでした。


「てんしさんが、『めがみさま。にしのまちのこどもたちが、おなかをすかせてこまっています……』」


 朗読の途中で、穏やかな寝息が聞こえてきたので、声を止める。「続きを読んで~」とか言ってこないので、完全に眠ってしまった模様。


 起こさないように、静かに立ち上がって本を戻し、デスクの作業用ライトを点け、逆にサイドテーブルのランプは電源を切る。


 ダークエネルギーやエディアカラ紀について熱心に調べる一方、こうやって寝入りのときに、絵本の読み聞かせを求める我が娘。


 とてもアンバランスだけど、それがこの子の、あるがままの姿。


 バランスが取れてないのが、悪いこととは思わない。このアンバランスさは、贈り物ギフトだ。


 たとえアメリがどんな子であっても、愛しい我が娘。それは絶対に揺るがない。天才かもしれないというのは、出来事として大きくないといえば嘘になるけど、かける愛にとってはささいなこと。


 大切な娘に、二度目の幸福な生を送らせてあげたい。私の心には、それしかない。


 これからも一緒に、楽しく、幸せに暮らしていこうね。

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