神奈さんとアメリちゃん

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第百四十八話 いざ、福井へ!

公開日時: 2021年4月25日(日) 07:01
文字数:2,371

「ピピピピ! ピピピピ!」


 ん……。


「ピピピピ! ピピピピ!」


 あー……そうだ、福井に帰る日だ。起きないと。


「おねーちゃん、おはよー!」


 寝ぼけ眼を開くと、ベッドに正座してしゅびっと挙手しているアメリが目に入る。朝から元気だねえ。


「うぉはよぉ……」


 アラームを止め、ゆっくりと起床。


 ひとあくびして、のそのそと着替えを済ませる。万事スローモーな私の動作に対し、アメリの行動はテキパキの極み。私、朝の弱さを克服できる日って来るのかしら?


 暖房も切って、キャリーケースを引きずりつつキッチンへ移動。サンドイッチと飲み物をいただきますする。


 もそもそ食んでると、少し頭がしゃっきりしてきた。出かける前に、きちんと歯磨き。二人ぶんのブラシとコップ、アメリ用の甘い歯磨き粉もキャリーケースに入れる。


 うん、多分準備オーケー……おっとと。わずかに水滴が垂れるように、洗面台の蛇口を少し緩めておく。こうしておけば、水道管が凍結・破裂する心配はない。


 今度こそ準備完了かな?


「そんじゃー、行くよー」


 アメリに声をかけ、一緒に表に出る。鍵の確認をして、自転車にカバーを掛けて……と。


 そいじゃ、バス停に向かいましょうか。


 市バスの八時始発に搭乗。このバス、だいたい四分ぐらい遅れてくるんだっけ。忘れてた。


 待つこと少々。バスが来ました。運賃百円を現金で支払う。


 初バスにはしゃぐアメリに、バスのあれこれについて説明する。


 東F駅に着いたので、そのままエスカレーターを上がり渋谷までの切符を購入。新宿行きもあるのでそちらから品川に行ってもいいんだけど、新宿駅は本気で日本最強の迷宮なのと、渋谷経由のほうが少しだけ運賃が安いという理由で渋谷経由を愛用しています。


 初めて乗る電車に、アメリ大興奮! 窓を向いて席に座りそうになるので、慌てて注意する。代わりと言っては何だけど、「あれ何?」攻撃に快く答えていく。


 東F駅は基本鈍行しか停まらないので、C駅で特急に乗り換え。ちなみに桜京線における特急は、ほかの路線の特急と異なり単に早い急行というだけのもの。最初、特別料金取られるのかしら? なんて思ったものです。


 C駅から渋谷に行くまでの乗り換え駅・M駅を経由して、渋谷に到着! さらに、渋谷でNR線に乗り換え、品川に到着~!


「ふっふっふ~。アメリちゃん、お楽しみタイムですよ!」


 購買に着くと、たーくさんの駅弁が私たちを待ち受けていました!


 私が帰省に車を使わない理由の一つは、帰省ラッシュの渋滞の中八時間とか運転してられないのと、駅弁が大好きだから!


 いやー、どれにしようかなー。迷っちゃうなー。でも、あんまり悩んでいるわけにもいかない。新幹線が来てしまう。


「よし、アメリちゃん。私イチオシのこれを一緒に食べよう!」


 私が手に取ったのは「鯵な押し寿司」という駅弁。私、これ大好きなのよ~。


「おお~! お弁当だー」


「駅弁は旅行のお楽しみなのですよ、アメリちゃん。これ、二つくださーい。あと、『TOKIOばななん』も」


 というわけで、二つ+お土産ひとつお買い上げ。福井までは約三時間。米原で乗り換えた頃にはちょうどお昼どき。


 「TOKIOばななん」は人気の東京土産。お母さんたち、帰省のときこれいつも楽しみにしてるのよね。


 新幹線の改札窓口で予約番号を見せ、切符を発券してもらう。


 しばらく待っていると、やって来ました新幹線くん! アメリ、またまた大興奮! せっかくだから、写真でも撮っときましょうかね。


 着席~。いやー、さすが帰省ラッシュ。満員だわ。車や通常の電車とは比べ物にならない速度ですっ飛んでいく背景に、驚きと興奮を隠さないアメリ。


 車内販売のカートが通りかかったので、名物「シンカンセントテモカチカチアイス」と温かいお茶を買う。


「お、おねーちゃん。これ、固い……」


 カチカチアイスに手も足も出ないアメリ。


「それ冗談抜きで固いから、かなり溶けてから食べたほうがいいよ」


 先に、お茶をいただく。は~、あったかー。アメリもアイスの早期攻略は諦めて、お茶を飲み始める。


 二時間ほどして、中継地点・米原に到着! 私たちも、溶けたアイスを満喫済み。特急に乗り換え、お楽しみの鯵寿司の封を解く。


 ふっふっふ。美しい見た目! これが理由の一つ。そして、ぱくっと食べるとこれが実に美味しい! いやー、ほんとに美味しい。大事なことなので、二度思いました!


 アメリもキラキラ瞳を輝かせ、夢中で食べている。これを選んだかいがあるというものです。


「何も見えなくなった!」


 車窓からの風景を愉しんでいたアメリが、驚きの声を上げる。


「ああ、トンネルに入ったんだね」


 しばらく外を眺めていても面白くない状態が続くので、雑談に花を咲かせることにした。


 そして景色が戻ってくると、晴れていた空が曇天に。雪も見え、県境の山脈を抜けたことがわかる風景だ。「帰ってきたんだなあ」という気持ちがしっとりと湧いてくる。一変した風景に、アメリが「おお~!」と声を上げる。


 そして、ゴール福井駅にとうちゃーく!


 いやー、この駅舎と駅前。積もった雪。実に福井! 我が故郷! アメリはもの珍しそうに周囲をキョロキョロ見ている。雪に触って、「冷た!」とびっくりしたり。


 スマホを取り出し、実家に連絡。


「あ、お母さん? 今着いたよー。迎えに来てー」


 アメリと会話しながら待つことしばし、ロータリーに馴染み深い乗用車がぐるりと入ってきました。手を振って、位置をアピール!


「神奈、誰その子!?」


 車内に乗り込んだ私に、お母さんが発した第一声はこれでした。


「ふっふっふー。言ったでしょ、お母さんもよく知ってる子だよ」


 いたずらっぽく微笑む。


「おお~? おねーちゃん、この人誰?」


「ありゃ、こっちはこっちで覚えてないのか。私のお母さんだよー」


 紹介すると、「おおー!」と声を上げる。


 さてさて、家に着いてアメリを紹介するのが楽しみですねえ!

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