神奈さんとアメリちゃん

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第三百七十話 夢見る神奈

公開日時: 2021年10月3日(日) 21:01
文字数:2,331

 優輝さんたちを乗せたカートが帰ってきて、私たちの番となりました。我々が出発してから前の皆さん下車なので、すれ違えないのが少し残念。五人が乗ったまま、こちらに手を振っています。軽く手を振り返す。


 とりあえず後もつかえてるし、乗りましょ乗りましょ。先頭ゲーット! いやーん、ドキドキするぅ~。


 お隣に座っているうちの子を見ると、緊張とわくわくで、小さく「ぉぉぉぉ……」とつぶやいてます。おねーさんも、キンチョーとワクワクでいっぱいですよ~!


 グループ全員着席したようで、「いってらっしゃーい」と、係員さんたちにフランクに見送られてしゅっぱーつ! カートがゆっくり動き出す。


 まず、開幕右手側で人気キャラクターの一人、犬っぽいほんわかした外見の「ミント」くんとその仲間たちが、ケーキを作ってお出迎え! わあ……なんかもう、すでに童心に帰りつつある自分がいる。


 水上を進むとはいうけれど、実際にはガイドレールの上を走る感じ。レールの周りに、水が満たされているという仕掛けだね。


 ミントのケーキ工房を抜けると、いきなり下り坂! スピードが出ているわけじゃなくけれど、ちょっとひやっとする。優輝さん、悲鳴を上げてなかったらいいんだけど。


 下り坂を抜けると、動物たちと……「キラとラキ」が! キラとラキは、擬人化された星の双子。アメリには悪いけれど、実はここのキャラクターでは一番ハマったのがこのキラちゃんとラキくんなのです。


 保育園時代から大好きだったけど、中学生に上がったら私も思春期に突入して周りの目が気になり始め、離れちゃったんだっけ。


 その後、私の中心は漫画とアメリになっていって、熱が戻ることはなかった。


 ただ、こうして目の前に大きなあの二人が現れると、心の底から何か温かいものが、ぶわあっと湧き上がってくる。


 自分の心が、一気に幼女時代に引き戻されていく。ああ、ここは魔法の国の入り口なんだ!


 扉が開き、今度はウサギのキャラクター「メロディア」ちゃんと……その隣の黒ずきんの子はなんだろう? 私もここのファン離れて長いからな……知らないキャラだ。


 続いて、ジャングルにお猿さんたちが。これまた知らない子たちだ。ここのキャラも、ずいぶんたくさんいるからねー。


 あ、「けろぽん」だ! さすがにこれぐらい有名だと知ってる。かわいい~。


 わあ、今度は「ポンポンゼリー」! さきほどのミントとはまた別系統の犬キャラです。なんか、歯車に囲まれながらゼリー作ってる~。


 再びミントに出迎えられ、今度は上り坂! 次は何が待ち受けているんだろう? 先が見えないから、ドキドキ!


 おお!? 洞窟! そして、そこを抜けるとカジノが! ちょいワルペンギン、「わる丸」がギャンブルしてますよ。私たちに憎まれ口叩いて、悪い子ねえ。あはは、次の場面でお母さんに怒られてる。


 エアポートと書かれた扉を抜けると、青いイルミネーションが施された大木が現れ、背筋がぶわっとなる。やだ、何これきれい……。すごい感激……!


 ぽーっと夢見心地で眺めていると、どんどん大木が見えなくなっていく。やだ、もっと見せてよ……!


 しかしカートは私の気持ちをよそにさらに進み、雲のエアポートと書かれたエリアへ。


 気球に乗ったミントやメロディアちゃんに……雲のブランコに乗ってるキラとラキ! また会えたね! 二人との再会が嬉しくて、大木とお別れした寂しさが吹っ飛んでしまう。


 さらにカートは進み……おお!? なんかミントがワープする映像が! 何が起きるの!?


 カートは、一路パーティ会場へ! 満を持して姿を表したドレスアップケイティちゃんに、隣のアメリが「おおー!」と興奮!


 扉を抜けると、そこはお城のパーティー会場! すごいすごい! オールスターだ! ちゃんと、キラとラキもいる~!


 素敵で温かい歌に包まれて、会場を進んでいく私たち。ケイティちゃんご一家に、アメリも先ほど以上に「おおおお!」と大興奮!


 あら、ケイティちゃんのアナウンスによると、記念撮影ですって。カメラを見ればいいのね? にっこり笑顔を向ける。


 「はい、チーズ!」という掛け声とともに、フラッシュ! きれいに撮れたかしら?


 そして山場を越えたカートは粛々と進んでいき……ああ、ゴールが……。やだ、夢が覚めめちゃう!!


 「また会おうね!」というキャラクターたちの言葉に送られ、ついに素敵な夢から覚めてしまいました。


 前のカートが動き出すのを待つ、私たちのカート。そして入れ替わりにゴールインし、まだ夢見心地で下車。


「おかえりなさーい」


 かくてるの皆さんが、出口の離れでお出迎え。ああそうか、現実に帰ってきたんだ。


「どうでした?」


 感想を尋ねる由香里さん。


「夢を見ているようでした」


 私は語彙力も乏しく、そう一言答えることしかできませんでした。


 白部さんも似たような感じで、逆にノーラちゃんは「もっとスピードあるほうがよかったなー」と、不満げ。これ、ジェットコースターじゃないのよ。


 まりあさんは、「すごく刺激を受けました」と、絵本作家ならではのご感想。


 うちのお嬢様は、ケイティちゃんとの別れが寂しいのか泣き出しそうになってしまっているので、よしよしと頭を撫でる。


 ちなみに優輝さん、あの下り坂でやっぱり軽く悲鳴を上げたようで。「でも、楽しかったですよ」と、それはそれとして楽しまれたようで何よりです。


 由香里さんにどのぐらい乗っていたのか尋ねたところ、十分じゅっぷんもなかったらしい。もっと長く乗ってた気がするのに、意外と早かった。


 たった十分じゅっぷんもない白昼夢だったけど、すっごく楽しかったー!


 さきほどの記念写真を、少し離れたところにあるショップでお買い上げ。ふふ、私もアメリも、ほかの四人もみんないい笑顔。なんだかんだで、ノーラちゃんもちゃんと楽しめたのね。


 さあ、次は何を楽しもうかな?

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