「それだけ、ご緊張されていらしたんですねえ」
近井さんから、共感の言葉をいただく。
本日土曜につき、例によって近井さん親子が遊びにいらしています。
「はい、不覚にも気が緩んでしまったせいか」
今の話題は、昨日思わず泣いてしまったこと。彼女に話すようなことではないかもしれないけど、IQ検査の話をしていたら、流れ的になんか話す状況になってしまいました。
「娘の前で、ちょっとみっともないところを見せてしまいました」
「そんなことないですよー。私も同じ立場だったら、きっとそうなっちゃいます」
否定せず、あくまでも共感してくださる。本当に優しい人だ。
「お、おおおお……」
ともちゃんとブロック遊びしていたアメリが、突如マナーモードに突入。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。怖くない、怖くない」
デスクから座椅子に歩み寄り、ぎゅっと抱きしめる。
「すみません、あれからときどき、こうなっちゃうんです」
「アメリちゃん。緊張しなくて大丈夫よー」
近井さんも、頭を撫でて落ち着かせようとしてくださる。
「アメリちゃん、きんちょーしなくてだいじょーぶよー」
ともちゃんまで。
「おお……ありがとう。少し落ち着いた……」
まだ、ちょっと小刻みに震えてるけど、気丈にそう応える愛娘。
「アメリ。失敗したところで、悪いほうにころころーって転がったりなんてしないから。気楽に、気楽に」
おでこをこっつんこ。
「これ以上、この話題はしないほうがいいかもしれませんね」
「ですね。ごめんね、アメリ。もう、この話しないからね」
「うん……」
最後に、頭を優しく撫でて、デスクに戻る。
「そうそう。交流掲示板の使い味はどうですか?」
「なかなかいいと思います。絵文字とかも、きちんと表示できるんですね」
「はい。世界を視野に入れてますから、いろんな状況に対応できるように心がけて作りました」
すごいなあ。
「ところで、そろそろお茶とお菓子のおかわり持ってきましょうか?」
「お願いします。ありがとうございます」
お茶と一緒に、子供向けビスケットのおかわりも持ってくる。ともちゃん来るから、今日の買い物のついでに買ったのよね。大変好評で、良き哉良き哉。
「お待たせしましたー」
お茶菓子を配膳していく。
「ありがとうございます。友美もお礼言おうね」
「ありがとーございます!」
「よく言えました。偉い偉い」
頭を撫で撫で。えへへと、とろけるともちゃん。
「おおー。ありがとー、おねーちゃん」
あ、なんかチラチラ見てる。なるほど。
「アメリもちゃんと言えて偉いよー。よしよし」
こちらも頭を撫で撫ですると、「うにゅう」と気抜け声を上げる。なんだか、すっかり甘えんぼさんになっちゃって。可愛いけど。
デスクに戻り、再度筆を執りながらおしゃべり。
「あれから、エイイチくんとミコちゃんにはよく会われます?」
「小学生ですからね。やっぱり、土日祝日でないと会えませんねえ。うちのご近所だと思うんですけど」
そりゃそうか。
「そうすると、ともちゃん寂しくありません?」
「そのへんは割と大丈夫ですよ。ときどき、ほかの子ともお砂遊びしてるので」
ほほー。
「それなら良かったです。アメリも、どうしてもミケちゃんたちと遊ぶことが多いもので」
「今度また、ご一緒したいですね。あー、友美、ぼろぼろこぼしちゃダメ~」
あらら。ビスケット食べこぼしちゃったか。
「コロコロ出しますね」
折りたたみ机のそばに行き、「コロコロ」で、コロコロと食べかすを吸着。
「すみません」
「いえいえ。子供だから、しょうがないですよ」
使い終わった面を切り取り、ゴミ箱にポイ。
「友美、ごめんなさいしよう?」
「ごめんなさい」
「いーのいーの。それより、お姉さんは、美味しく食べてくれてるのが嬉しいよ」
頭を撫で撫で。すると、なんだか視線を感じる。
「アメリも、美味しく食べてくれて嬉しいよ~」
撫で撫ですると、おなじみの「うにゅう」ボイス。ほんとに、甘えんぼさんになっちゃって。でも、今精神的に不安定だから、安心させてあげることが第一だもんね。
ともかくもデスクに戻り、お仕事再開。行ったり来たり、なんだか忙しいな。
しかし、ともちゃんの前ではあんまり甘えんぼぶり隠さないのね。ともちゃんぐらい小さいと、逆に気にならないのかな?
◆ ◆ ◆
夕方までたっぷりおしゃべりと遊びを楽しみ、近井さんたちは帰っていきました。
「おねーちゃん。今日は、おねーちゃんにごはんつくってほしいな」
「おねーちゃん。何かお話しよー」
「おねーちゃん。褒めて褒めて~」
そして、何かと構ってムーブしてくるアメリちゃん。ほんとに、今日は甘えんぼさんぶりがすごいねえ。
「おねーちゃん、お膝乗っていい?」
「うーん、それやるとペン入れできないからなあ。……そうだ。座椅子を、私の左横に置いて、そこに座って。あ、背もたれはデスクに向けてね」
左手で愛娘の頭を撫でながら、ペン入れ続行。我ながら器用なもんだ。「うにゅう~」と、とろけそうな声を出すアメリちゃん。
今日はあれかな。近井さんに甘えるともちゃんを見て、自分も甘えたくなっちゃったのかな。昨日の今日だし。
もちろん、その後のお風呂でも甘えんぼさんムーブ全開。こんな状態だから、今日はダンスもボクササイズもお休み。
寝る前には、絵本の読み聞かせをせがまれました。
こんな日が、あってもいいよね。不安と必死に戦ってるんだもんね。
おやすみなさい、愛しい愛しい私の娘。
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