神奈さんとアメリちゃん

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第四百五十八話 甘えんぼアメリちゃん

公開日時: 2022年1月7日(金) 21:01
文字数:2,183

「それだけ、ご緊張されていらしたんですねえ」


 近井さんから、共感の言葉をいただく。


 本日土曜につき、例によって近井さん親子が遊びにいらしています。


「はい、不覚にも気が緩んでしまったせいか」


 今の話題は、昨日思わず泣いてしまったこと。彼女に話すようなことではないかもしれないけど、IQ検査の話をしていたら、流れ的になんか話す状況になってしまいました。


「娘の前で、ちょっとみっともないところを見せてしまいました」


「そんなことないですよー。私も同じ立場だったら、きっとそうなっちゃいます」


 否定せず、あくまでも共感してくださる。本当に優しい人だ。


「お、おおおお……」


 ともちゃんとブロック遊びしていたアメリが、突如マナーモードに突入。


「だいじょーぶ、だいじょーぶ。怖くない、怖くない」


 デスクから座椅子に歩み寄り、ぎゅっと抱きしめる。


「すみません、あれからときどき、こうなっちゃうんです」


「アメリちゃん。緊張しなくて大丈夫よー」


 近井さんも、頭を撫でて落ち着かせようとしてくださる。


「アメリちゃん、きんちょーしなくてだいじょーぶよー」


 ともちゃんまで。


「おお……ありがとう。少し落ち着いた……」


 まだ、ちょっと小刻みに震えてるけど、気丈にそう応える愛娘。


「アメリ。失敗したところで、悪いほうにころころーって転がったりなんてしないから。気楽に、気楽に」


 おでこをこっつんこ。


「これ以上、この話題はしないほうがいいかもしれませんね」


「ですね。ごめんね、アメリ。もう、この話しないからね」


「うん……」


 最後に、頭を優しく撫でて、デスクに戻る。


「そうそう。交流掲示板の使い味はどうですか?」


「なかなかいいと思います。絵文字とかも、きちんと表示できるんですね」


「はい。世界を視野に入れてますから、いろんな状況に対応できるように心がけて作りました」


 すごいなあ。


「ところで、そろそろお茶とお菓子のおかわり持ってきましょうか?」


「お願いします。ありがとうございます」


 お茶と一緒に、子供向けビスケットのおかわりも持ってくる。ともちゃん来るから、今日の買い物のついでに買ったのよね。大変好評で、良きかな良きかな


「お待たせしましたー」


 お茶菓子を配膳していく。


「ありがとうございます。友美もお礼言おうね」


「ありがとーございます!」


「よく言えました。偉い偉い」


 頭を撫で撫で。えへへと、とろけるともちゃん。


「おおー。ありがとー、おねーちゃん」


 あ、なんかチラチラ見てる。なるほど。


「アメリもちゃんと言えて偉いよー。よしよし」


 こちらも頭を撫で撫ですると、「うにゅう」と気抜け声を上げる。なんだか、すっかり甘えんぼさんになっちゃって。可愛いけど。


 デスクに戻り、再度筆を執りながらおしゃべり。


「あれから、エイイチくんとミコちゃんにはよく会われます?」


「小学生ですからね。やっぱり、土日祝日でないと会えませんねえ。うちのご近所だと思うんですけど」


 そりゃそうか。


「そうすると、ともちゃん寂しくありません?」


「そのへんは割と大丈夫ですよ。ときどき、ほかの子ともお砂遊びしてるので」


 ほほー。


「それなら良かったです。アメリも、どうしてもミケちゃんたちと遊ぶことが多いもので」


「今度また、ご一緒したいですね。あー、友美、ぼろぼろこぼしちゃダメ~」


 あらら。ビスケット食べこぼしちゃったか。


「コロコロ出しますね」


 折りたたみ机のそばに行き、「コロコロ」で、コロコロと食べかすを吸着。


「すみません」


「いえいえ。子供だから、しょうがないですよ」


 使い終わった面を切り取り、ゴミ箱にポイ。


「友美、ごめんなさいしよう?」


「ごめんなさい」


「いーのいーの。それより、お姉さんは、美味しく食べてくれてるのが嬉しいよ」


 頭を撫で撫で。すると、なんだか視線を感じる。


「アメリも、美味しく食べてくれて嬉しいよ~」


 撫で撫ですると、おなじみの「うにゅう」ボイス。ほんとに、甘えんぼさんになっちゃって。でも、今精神的に不安定だから、安心させてあげることが第一だもんね。


 ともかくもデスクに戻り、お仕事再開。行ったり来たり、なんだか忙しいな。


 しかし、ともちゃんの前ではあんまり甘えんぼぶり隠さないのね。ともちゃんぐらい小さいと、逆に気にならないのかな?



 ◆ ◆ ◆



 夕方までたっぷりおしゃべりと遊びを楽しみ、近井さんたちは帰っていきました。


「おねーちゃん。今日は、おねーちゃんにごはんつくってほしいな」


「おねーちゃん。何かお話しよー」


「おねーちゃん。褒めて褒めて~」


 そして、何かと構ってムーブしてくるアメリちゃん。ほんとに、今日は甘えんぼさんぶりがすごいねえ。


「おねーちゃん、お膝乗っていい?」


「うーん、それやるとペン入れできないからなあ。……そうだ。座椅子を、私の左横に置いて、そこに座って。あ、背もたれはデスクに向けてね」


 左手で愛娘の頭を撫でながら、ペン入れ続行。我ながら器用なもんだ。「うにゅう~」と、とろけそうな声を出すアメリちゃん。


 今日はあれかな。近井さんに甘えるともちゃんを見て、自分も甘えたくなっちゃったのかな。昨日の今日だし。


 もちろん、その後のお風呂でも甘えんぼさんムーブ全開。こんな状態だから、今日はダンスもボクササイズもお休み。


 寝る前には、絵本の読み聞かせをせがまれました。


 こんな日が、あってもいいよね。不安と必死に戦ってるんだもんね。


 おやすみなさい、愛しい愛しい私の娘。

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