神奈さんとアメリちゃん

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第百六十九話 愛と情熱のペスカトーレ!

公開日時: 2021年4月25日(日) 17:31
文字数:2,764

「どっは~……!」


 夜六時すぎ、やっっっとこネーム完成! 真留さんに送信~。疲れたー!


 しかし、疲れたからといって手を抜いてはいけないのが育児。少なくとも、私はアメリに関してはそう考えている。彼女のほうを見ると、「ごはん?」という期待の眼差しと視線が交差します。


「お待たせだねー。ごはん作るからね~」


 腰をトントン叩きながら、キッチンへ向かう。二十代の女がやっていいアクションなのかと思わないでもないけど、職業柄仕方ないのデス。とてとてと後をついてくるアメリ。


 さてさて。今日の晩ごはんは、アメリちゃんから「スパゲッティー食べたい!」とご所望をいただいたので、午前中に入手した材料でペスカトーレを作っちゃいますよ!


 スマホでレシピ動画セット! 脳内MP3プレーヤーで三分でクッキングするBGMをオン! よーし、作るぞー!


 まずは、スパゲッティー二百グラムを茹でまーす。その間に、冷凍シーフードを電子レンジで解凍~。


 そして、フライパンでオリーブオイルとチューブ入りにんにくを炒めましてー。解凍されたシーフードとカットトマト缶の中身を投入~。さらにこれにスパゲッティーの茹で汁を大さじ一杯入れーの、煮立たせーのっと。


 煮立ったら、火を止めて塩で味を整えまーす。うん、こんなもんかな?


 あとは、茹だったスパゲティをザルに空けて、ペスカトーレの具とソースを半分別皿に移してスパゲッティーにかけて、バジルをぱらぱら~。でっきあがり~!


「はーい、できましたよ~アメリちゃーん」


「おおー……アメリ、お手伝いすることなかった!」


 ちょっとしょんぼり気味なアメリ。


「ごめんねー。結構簡単なバージョンで作っちゃったから。今度また、凝ったやつ作りましょ」


「はーい」


 というわけで、紅茶と一緒に配膳。エプロンを外し、対面に着席!


「いただきます!」


 二人で合唱! なんか、ネーム明けでちょっとハイかも私。大丈夫だと思うけど、真留さんから突っ返される可能性もあるから、あんまり有頂天になってるのもあれだけどねー。


 まあいいや、ごはんのときはごちゃごちゃ考えない! 目の前の美味しそうな物体をやっつけましょう~。


 くるくる、ぱくっ。うん、お手軽な割には美味しいわ~。


「美味しい!」


 アメリちゃんもご満悦。


「アメリ、漢字の進み具合はどう?」


「んー……結構進んでると思う!」


 ふむ。今、小二向け漢字を学習中の彼女。真留さんの返事が来るのは時間的に明日になりそうだし、後でちょっと実力テストしてあげようかな。


 小二向けをマスターしたら小三向けかー。あと私が教えてあげられそうな教科というと、おなじみ算数。社会と理科は、ちゃんとした教材がないと厳しいしなー。どうにも、アメリの学習内容が偏ってしまう。


 ともかくも、ごちそうさまの後はお片付け。残りの具とソースは明日の朝ごはんにしまーす。


 歯を磨いて、寝室でアメリにちょっとした漢字テストを出すと、正解率四割! わあ~、ほんと飲み込み早いわこの子。


 すごいすごいと頭を撫でると、「うにゅう」と嬉しそうに目を細める。ふふ、猫っぽい~。


「アメリー。ぎゅーってしていい~?」


「いいよー」


 ぎゅーっ。はう~、アメリの温もりと香り~。


「おお~。おねーちゃん、白部せんせーっぽい~」


 ふぉうわっ!? うう、白部さんっぽいですか、そうですか……。いやまあ、ちょっと……いや、かなり否定できない。実際、猫耳人間に対するダメマトリックスが結構重なってるとは思います。ハイ。


 ……とか考えたら、白部さんに怒られちゃうかしら。ともかくも、アメリ成分吸収! もうひと頑張りできるエネルギー、チャージ完了!


「ともかく、ありがとうアメリ。これで、お姉ちゃんもうひと頑張りできちゃうよ!」


「おお~! アメリもお勉強頑張る~!」


 最後に彼女の頭をひと撫でして、デスクに着席!


 ネームが終わっても、今月は単行本化作業があるので、あまり余裕綽々しゃくしゃくというわけにはいかない。すると、LIZEにメッセージ着信が。あら、まりあさん。


「こんばんは。今、お話よろしいですか?」


「こんばんは。電話、おかけしますね」


 メッセージを返信し、右手にペンを左手にスマホを状態になり、コール。


「改めまして、こんばんは。お仕事のほう、いかがですか?」


「順調です。先ほどネームを送信しまして、今単行本の作業を進めようとしていたところです」


「あら! 新刊出されるんですか!?」


 あ、そういえば言ってなかったっけ。


「はい、来月刊行予定です」


「まあ~。楽しみです! 買わせていただきますね!」


「ありがとうございます。そういえば連載のほうですけれど、私としてもそろそろまりあさんとクロちゃんを出してあげたいんですけど、もう一話使ってかくてるの皆さんのモチーフキャラを印象付けようという話になりまして」


 コーヒー牛乳で口を湿らせる。


「そうなんですか。わたしのほうは、特に急いで出していただきたいとかないですから、全然構いませんよー」


「はい。再来月までお待ちいただければ、お見せできるかなと思います」


「楽しみですー」


 本当に、声が嬉しそう。ご提案したかいがあるなあ。


「あ、そうだ。クロちゃんって、お勉強でアメリに教えられそうなことってあります? アメリは今、割り算を覚え終わって、小二向け漢字を学習しているところなんですけれど」


「クロちゃんですか? そうですねえ……それでしたら、漢字を教えられるかもしれません。あの子、漢字が結構好きみたいで」


 なんとなくそんな感じはしてたけど、国語好きなのね。


「そうなんですか。でしたら、アメリの先生を近々お願いできないものでしょうか?」


「ちょっと訊いてみますね」


 そう言ってまりあさんの声が小さくなり、クロちゃんに意思確認をしていると思しき声が小さく聞こえる。


「任せて、とのことです」


「ありがとうございます~。美味しいおせんべい、用意しておかないと」


「いえいえ。クロちゃんも乗り気ですので」


 そうはおっしゃるけど、もてなして悪いことないわよね。教えに来る日が決まったら、買っておきましょ。


「あ、おせんべいといえば、皐月ヶ浦さつきがうら煎餅ありがとうございました。とっても美味しかったです」


「気に入っていただけたようで良かったです。よろしければまた、大型連休帰省のお土産にしましょうか?」


「ありがとうございます。では、私もあのバスのドーナツ買ってきますね」


 そんな感じでほのぼのと会話と原稿が進んでいく。


「あ、すみません。クロちゃんに呼ばれてしまいました。今日はこれぐらいにしておきますね。また、お話しましょう」


「はい、では失礼しますー」


 通話終了。ふう、表紙も線画終了。我ながら、惚れ惚れするマルチタスクぶりね! あとは着色だー!


 今日も一日頑張った! やはり、アメリと良い友人が身近にいると、とても作業がはかどる。折り返し部分のメッセージに、そんなことを書いてみようかな。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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