「おねーちゃーん。まーだー?」
「もーちょっと待ってね。えーと、ここを禁止して……」
現在チマチマと、見せていいサイトや使っていいアプリの設定中。LIZEと、セーフ機能付きで検索エンジンはOKとして……動画サイトも、健全オンリーで許可しときますか。
ためしに、自分でアレな検索ワードを入れてサーチ。……よし、ヒットしない。いくつか試してみるけど、大丈夫みたいね。検索ワードをクリアして、と。
「はーい、お待たせー。使い方教えるねー」
「やったー!」
一緒にベッドに腰掛け、フリックやスワイプなどの操作を手取り足取り教えていく。最初は専門用語に混乱していたアメリちゃんでしたが、そこは地頭の良さ。すぐに飲み込んで、ものにしていきます。
「じゃあ、ためしに自分で操作してみようか」
「はーい」
「カタツムリ」と入れて検索すると、有名百科辞典サイトの項目が映し出される。
「おお~!」
食い入るように眺めるアメリちゃん。
「難しい漢字がある……」
「そういうのは……」
コピーして、検索。すると、漢和辞典サイトに繋がる。
「おお~! こう読むんだ!」
「とまあ、そんな感じで使っていけばOKよん。あとは、私とLIZEでお友達登録しようか」
QRコードを表示し、読み取らせる。
「おっけー。これでいつでも私と連絡取れるようになりましたよ」
「おおお~!」
だだだと、イヤホンを手に、どこかへ裸足で駆けてくアメリさん。
ややあって、LIZEにの通話に着信が。
「はいはーい」
「おねーちゃん聞こえる!?」
声がエコーしてるな?
「聞こえますよー。ひょっとしてお風呂場?」
「おおー! すごい! よくわかったね!」
「まあね。あ、それ水に濡らしたら壊れちゃうから、気をつけてね」
「おお……気をつける!」
だだだ、とまた慌ただしく戻ってきました。
「ミケやクロともお話したい!」
「優輝さんたちを経由するほうがいいかな。ちょっとまってね」
アメリをグループチャットに誘う。
「何か書いてごらん」
「おお……」
ぽちぽちと何やら書くお嬢様。
「こんにちは!」と元気なメッセージが表示されました。私も、「こんにちは」とお返事。ほかの皆さんも、アメリの名前と画像を見て、次々にご反応。
「アメリちゃん、スマホ買ったんすか?」
「さっき、おねーちゃんに買ってもらった!」
「おー、ウチらの仲間入りだな!」
凸凹コンビとそんな会話を交わす。
「あら、すごい。ノーラちゃんだけなしってのも可哀想ね。買ってあげようかしら」
これは白部さん。
「白部さんは今、体育館ですよね?」
「はい。ノーラちゃん、ちょうどスポドリ休憩中でした」
「さすがに、友美には早いですよねー」
「さすがに未就学児には、早いと思いますよ」
近井さんと優輝さんの会話。
「私はちょこちょこ横目で見ながら、お仕事再開しますね」
デスクに戻って充電器にスマホを立て、ながら見できる位置に調整。PC版LIZEを立ち上げる。
「ああ、あたしらもサボってる場合じゃないですね。同じく」
こうして、おそらく優輝さんらも、スマホで見て何か書かれたらPC版で返答するという体制を整えたのでしょう。
アメリちゃんが色々書いてくるので、都度みんなでわちゃわちゃと書き込み。現在の話題は、さっき食べたカタツムリが美味しかったという話。
その後しばらく、濃ゆいのからライトな話題まで、様々なアメリちゃんトークが繰り広げられるのでした。
◆ ◆ ◆
ときどきちらちら画面を見ながらお仕事していたけど、アメリの書き込みがぱたっと止みました。皆さんがどうしたんだろうとご心配。
気になって、当の本人を見ると……ベッドの上で、足だけでろんと外に投げ出した、変な体勢で寝息を立ててました。
「寝ちゃったみたいです。どうしましょうか。変な体勢で」
「どんな状態っすか?」
写真を貼り付ける。
「うっは。器用な寝方するなあ、アメ子」
「風邪引いちゃいますね」
「いえ。体を冷やすと風邪を引くというのは、俗説なんですよ」
由香里さんの言葉に反応する白部さん。
「どうも、また休憩中です。運動と休憩のリズムが大事ですからね。それはさておき、体温と風邪を引くことの因果関係は、立証されてないんですよ」
一同、思わず感心。
「じゃあ、このままにしといたほうがいいんでしょうか?」
「いえ、毛布一枚ぐらいは、かけてあげたほうがよろしいかと。体を冷やして、いいことがあるかといえば、ないですし」
「わかりました」
起こさないように、そっと毛布をかける。アメリのスマホはもう一台の充電器に。
「しかし、新しいおもちゃで遊び疲れて爆睡なんて、可愛いもんだなー」
久美さんが、にっこり猫スタンプを貼る。
「ええ、本当に。我が娘ながら、可愛いですねえ」
私も、にっこり猫スタンプを返す。
いや、ほんとに子供のこういうムーブ可愛いなあ。フリーダム&プリティー!
「昼寝させすぎると良くないので、一時間ぐらいしたら起こさないとですね」
「ノーラちゃんも、帰ったら仮眠取るでしょうから、寝かせ過ぎないようにしないとですね」
思案顔猫スタンプを貼る白部さん。
「後どのぐらいで上がりですか?」
「オーバーワークさせても良くないので、次のワンセットが終わったら上がらせるつもりです」
「なるほど」
PCの時計を見れば、もう三時だ。白部さんたちはずいぶん長くやってたのか、始めたのが遅かったのか。後者かな?
「ノーラちゃん、体力が回復したみたいなので、ラストワンセットやらせますね」
「お疲れ様です」
バイバイ猫スタンプを貼り、音信が途絶える彼女。
「しかし、アメ子もついにスマホデビューたあ、感慨深いねえ」
「こういうのってくるときは一気にくるもんですね。白部さんも買う的なこと仰ってましたし」
久美さん、まりあさんという微妙に珍しいコンビで会話。
「おっと、私もサボってる場合じゃなかった。お仕事しないと」
ふと我に返り、スマホを充電器に立ててお仕事再開。
「お疲れ様です」「わたしも、お仕事再開しないと」などと皆さん書き込み、再びチャット欄が静かになりました。
アメリちゃんの装備もパワーアップ! これから維持費もかかるし、お仕事頑張りましょー!
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