神奈さんとアメリちゃん

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第八十八話 再来! 猫崎飯店!

公開日時: 2021年4月20日(火) 20:01
文字数:2,045

「おねーちゃん、おねーちゃん」


 お仕事に励んでいると、背後からアメリに呼びかけられた。


「なーに?」


 くるりと椅子を回転させて、座椅子に掛けている彼女のほうに向く。


「足し算と引き算、数字でやる場合どうしたらいいの?」


 紙を前に「9 7 2」とか書いてある。ああ、いけない。肝心の記号を教えるの忘れてた。


「えっとね。この三つを使うんだけど……。これが足す、これが引く。で、これが『は』。こう書くとね、一足す二は三ってなるの」


 紙に1+2=3と書くと、「おお~!」と感心の声を上げる。


「引き算もおんなじね。こう書くと、十一引く四は七ってなるの」


 足し算の下に11-4=7と書くと、またも「おお~!」と感心。


「せっかくだから、筆算……文字で計算する方法も覚えようか。こうやって、線を一本書いてね。で、左端の上に足すか引くを書いて……引き算なら上に元の数字、下に引きたい数字を書くの。足し算ならどっちが上下でもいいよ」


 線を引き、マイナス記号、上に13、下に8と書いてみせる。


「さ、計算してみようか。答えはその位……この1が十の位、3と8が一の位っていうんだけど、その列の線の下に書いてね」


 8の下に5とスラっと書くアメリ。


「こう!?」


「正解です、アメリちゃん!」


 ぱちぱちと拍手すると、「えへへ」と照れる。


「これで、百とか千とか、もっと大きい位の計算もできるようになるよ。今度教えてあげるね。今は、十の位と一の位だけで色々勉強してみて」


「おおー!」


 気合を入れて、色々筆算を始める彼女。あ、よく見たら鉛筆の先が随分丸くなってるなあ。


「ちょっと待っててね」


 仕事机の引き出しから、小型の鉛筆削りを取り出す。


「じゃーん! 鉛筆削り~」


「おお~?」


 アメリが不思議そうに初めて見る物体を眺める。


「今、鉛筆の先っちょが丸くなってて書きにくいでしょ? これをね、穴に入れて右に回すと……ほら、先がとがるのです!」


「おお~! すごい!」


「削りカスがこんな風に出るけど、溜まったらここのゴミ箱に捨ててね」


 鉛筆削りのカバーを開け、逆さにして中身を捨てる。


「はーい!」


 アメリが再度筆算に熱中し始めたので、私も仕事に戻るのでした。



 ◆ ◆ ◆



「ん~……っ!」


 疲れたので、思いっきり伸びをする。PCの時計を見れば、もう六時前。アメリはというと、まだ紙相手にずらずらと筆算していた。いやはや、私もこの子もすごい集中力だね。


 では、今日のお楽しみ料理を作りますか!


「アメリー、ごはん作りに行くよー」


「おお~? もうそんな時間?」


「うん。私もアメリも、ほんと熱中しちゃうとのめり込んじゃうタイプよね」


 苦笑しながら彼女を伴い、キッチンに向かうのでした。



 ◆ ◆ ◆



 三分でクッキングする例のBGMを脳内で流しながら、スマホをセットし、レシピ動画を準備。


 まず、冷ました後冷蔵庫に入れておいた冷や飯を取り出しザルに空け、流水で洗ってぬめりを取りまーす。これ、超重要!


 次に、キッチンペーパーで丹念にお米の水気取り。続いて、昨夜の残り物の煮豚を細切れに。あとは卵を二つぶん溶き卵にして、刻みネギも用意。


 中火で熱したフライパンに胡麻油を多めに引き、チューブ入り生姜をちょいと投入!


 油が馴染んだら、溶き卵を投入! 木べらで半熟化するまで大きくへらを動かして混ぜる。


 半熟化したら、お米を投入! お米をほぐしながら、卵とよく混ぜまーす。


 お米の水気が飛んだら、ここで塩胡椒! そして、チャーシューも投入! うわあ、すごい量ね。食べ出がありそう。


 仕上げに刻みネギを入れてお醤油を鍋肌から注ぎ、、軽く炒めたら完成!


「ふう。さあ、アメリちゃん。炒飯ができましたよ~」


 額の汗を拭い、お皿に盛ったほかほかの炒飯をテーブルに置く。


「おお~! 美味しそう!」


「有名シェフの直伝レシピだからね。きっとお美味しいよ~。お肉もいっぱい入ってるし」


 烏龍茶の残りをコップに注ぎ、エプロンを外してアメリの対面に着席。


「それじゃあ、いただきますしようか。いただきます!」


「いただきます!」


 レンゲですくってまずひと口。うん、美味しい! 特に、肉! って感じがすごく食べ出があるわね!


「どう?」


「美味しい!」


 アメリもご満悦。良きかな良きかな


 次は何を体験させてあげようかなあ。彼女の世界をもっと広げてあげたい。世の中のいろんな楽しいことや面白いことを、たくさん教えてあげたい。


 そうだ、次は三桁の足し算引き算を教えてあげよう。そしたら、アメリにあれ・・をさせてあげたい。今後彼女が自分で色々活動していく上で、どうしても必要になる知識だ。


 あとは、掛け算と小一向けの漢字も教えてあげたいな。う~ん、教えてあげたいことがいっぱいだ! アメリは本当に楽しんで勉強してくれるから、こっちまで教えるのが楽しくなっちゃう。


 でも、無理はさせないようにしないとね。あくまでも、アメリが望んだら教える。これ大事。


 そんな物思いにふけりながら食んでいると、二人とも炒飯完食! 美味しゅうございました。さあ、お鍋と食器を洗ってお風呂入ったら、二人の明るい未来のためにお仕事頑張るぞ!

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