神奈さんとアメリちゃん

退会したユーザー ?
退会したユーザー

第二百六十八話 神奈、思い悩む

公開日時: 2021年6月22日(火) 21:01
文字数:2,321

「うん、これならもう公道走らせてだいじょぶじゃね?」


 今日も、アメリとミケちゃんがかくてるハウスで自転車の特訓!


 隣で一緒に見守っている久美さんがおっしゃるように、ふらつく感じもなくたしかに問題なさそう。


「そうみたいですね。アメリー、合格だよー!」


 手で大きなマルを作って結果を告げると、キッと停まり「おおー! 合格~!」と、バンザイする。


「むむむ……クロに続き、アメリまで……。お姉ちゃんとして立場がないわ……!」


 真剣な表情で、一所懸命漕ぐミケちゃん。プライド、本当に高いねえ。


「じゃあ、補助輪外してみるか?」


「えっ!」


 唐突な提案にびっくりして停まる彼女。


「久美、ミケその、大丈夫だと思う……?」


「ミケ子のやる気次第だな。どーする?」


「……やる!」


 おお、ミケちゃんが燃えている! 久美さんも焚き付け方が上手いというか何というか。


「じゃ、工具取ってくるわ。優輝にはウチから言っとくな。あ、神奈サン。アメ子は合格ハンコってことで、帰ってだいじょぶだぜ。仕事あるっしょ?」


「そうですね。ミケちゃんのことも気になりますけど、原稿仕上げないとですね。では、お先に失礼します。ミケちゃんも頑張ってね」


「任せてよね! すぐに妹たちより上手くなってみせるんだから!」


 胸を反らしドヤ顔。ふふ、可愛い。


 二人にお辞儀し、アメリを連れて帰宅。短い距離だけど、初めて公道を補助輪なしで走り、感動の「おお~!」を言うアメリちゃんでした。


「これからは、また一緒に自転車に乗れるね!」


「そうね。しっかり走れることが確認できたら、少し遠くに行くのも悪くないね」


 着替えながら、そんな会話を交わす。


 ふう、楽なスウェット姿に戻りましたよ。それじゃあ、お仕事頑張りましょー。



 ◆ ◆ ◆



 静かに時間が過ぎていく。今日のアメリちゃんの一人遊びは読書。この子、どんどん本の虫になっていくねえ。もっと積極的に、色々構ってあげられたらいいのだろうけど。割と真剣に、分身の術でも覚えたいわ……。


 それにしても、読書ペースが早いなあ。新しい本買ってあげないと。明日、まりあさんの新作と一緒に何か買ってあげよう。


 そんなことを考えながら筆を走らせているとアラームが。おお、もうお買い物タイムですよ。補助輪なしアメリちゃんの初出陣です。


「アメリー。お買い物行くけど、食べたいものあるー?」


「おねーちゃんとの料理、楽しいし美味しいから何でもいいよー!」


 むう。いつもの力強いお言葉。


「じゃあ、洋食と中華だったらどっちがいい?」


 ちなみに、お昼は昨日の残り(菜の花はおひたしにしました)に卵焼きを加えた和食だったので、和食は候補から外してます。


「んー。洋食だったらどんなのー?」


「チラシ次第かなー? ほら、私っていつもいきあたりばったりで決めるし」


 改めて、我ながらテキトーだなーと思う。


「中華だったら?」


「それも、チラシ次第ね」


「……おねーちゃん、じゃんけん」


「ん? ほい」


 適当にパーを出すとアメリはチョキ。


「じゃあ、洋食でー」


「らじゃー」


 じゃんけんで決めましたか、アメリちゃん。テキトーなとこまで私に似なくていいのよ?



 ◆ ◆ ◆



 往路。アメリの様子を何度も振り返りながら、徐行運転。見事にきちんと乗りこなしてるわね。偉い、すごい。とはいえ、油断禁物!


 慎重を期しながら、無事いつものスーパーにゴールイン。ふう、と一息吐く。


 では、お買い物たーいむ!


 いつもの店内BGMに包まれ、チラシチェーック!


 ちなみになんでいつも事前にチェックしないかというと、なんとなくワクワク感がなくなるから。ちょっと子供っぽい理由だけど、それが私イズムなのです。


 で、肝心のセールは……。


 お肉、玉ねぎ、絹さや。ふむ、これで何か面白いのを……。検索、検索。お、これ面白そう!


 牛薄切り、じゃがいも、玉ねぎ、人参、絹さやをかごにイン! これとは別に、厚揚げも。よし、これで具材は整いましたよ。後はおなじみ三種の神器~。


「アメリちゃん。何か買いたいものはありますか?」


「明後日クロのところに行きたいから、おやつ!」


「うう、できればうちに来てもらえるほうがありがたいかな~……?」


 子離れできない、ダメなおねーちゃんでゴメンナサイ。


「わかった!」


「じゃあ、おせんべいと羊羹でも買っていきましょうか」


 「亀池堂」さんのお菓子でないのが恐縮だけど。


 こうして、お会計を済ませるのでした。



 ◆ ◆ ◆



「こんばんは。どうされました?」


「こんばんは。アメリが明後日、クロちゃんと遊びたいと言うのですけど、来てもらうというのは難しいでしょうか?」


 帰宅後、まりあさんにコール。なんだか自分が情けなくなるなあ。妹一人、笑顔で送ってあげられないものか。まあ、まだ一人で走らせるのは危ないしと脳内で言い訳してみたり……。


「ちょっと訊いてみますね」


 少し音が遠くなり、何やらクロちゃんとやり取りしているらしい。


「オッケーみたいですよ。何時頃伺わせましょうか?」


「お昼過ぎがよろしいかと。あ、お菓子はこちらで用意してますので、お気遣いなく」


「ありがとうございます。では、明後日お昼すぎにそちらに伺わせます」


 通話終了。ふう、まりあさんは子離れできててすごいなあ。優輝さんもきっとできているだろうし。白部さんは私の仲間っぽそうだけど、彼女も違うか。転生翌日に、何ごともなく私に一日預けていったし。


 うわーん、子離れできてないの私だけだー。自己嫌悪。


「おねーちゃん、具合悪いの?」


 デスクに突っ伏してると、アメリによしよしされる。うう、不甲斐ないおねーちゃんでごめんなさい……。


「なんでもないよ。私の問題。もうすぐごはんが炊けるね」


 なんだか気まずくて、ついごまかすようなことを言ってしまう。


 アメリ依存からの自立。これが今後の課題だなー。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート