「うん、これならもう公道走らせてだいじょぶじゃね?」
今日も、アメリとミケちゃんがかくてるハウスで自転車の特訓!
隣で一緒に見守っている久美さんが仰るように、ふらつく感じもなくたしかに問題なさそう。
「そうみたいですね。アメリー、合格だよー!」
手で大きなマルを作って結果を告げると、キッと停まり「おおー! 合格~!」と、バンザイする。
「むむむ……クロに続き、アメリまで……。お姉ちゃんとして立場がないわ……!」
真剣な表情で、一所懸命漕ぐミケちゃん。プライド、本当に高いねえ。
「じゃあ、補助輪外してみるか?」
「えっ!」
唐突な提案にびっくりして停まる彼女。
「久美、ミケその、大丈夫だと思う……?」
「ミケ子のやる気次第だな。どーする?」
「……やる!」
おお、ミケちゃんが燃えている! 久美さんも焚き付け方が上手いというか何というか。
「じゃ、工具取ってくるわ。優輝にはウチから言っとくな。あ、神奈サン。アメ子は合格ハンコってことで、帰ってだいじょぶだぜ。仕事あるっしょ?」
「そうですね。ミケちゃんのことも気になりますけど、原稿仕上げないとですね。では、お先に失礼します。ミケちゃんも頑張ってね」
「任せてよね! すぐに妹たちより上手くなってみせるんだから!」
胸を反らしドヤ顔。ふふ、可愛い。
二人にお辞儀し、アメリを連れて帰宅。短い距離だけど、初めて公道を補助輪なしで走り、感動の「おお~!」を言うアメリちゃんでした。
「これからは、また一緒に自転車に乗れるね!」
「そうね。しっかり走れることが確認できたら、少し遠くに行くのも悪くないね」
着替えながら、そんな会話を交わす。
ふう、楽なスウェット姿に戻りましたよ。それじゃあ、お仕事頑張りましょー。
◆ ◆ ◆
静かに時間が過ぎていく。今日のアメリちゃんの一人遊びは読書。この子、どんどん本の虫になっていくねえ。もっと積極的に、色々構ってあげられたらいいのだろうけど。割と真剣に、分身の術でも覚えたいわ……。
それにしても、読書ペースが早いなあ。新しい本買ってあげないと。明日、まりあさんの新作と一緒に何か買ってあげよう。
そんなことを考えながら筆を走らせているとアラームが。おお、もうお買い物タイムですよ。補助輪なしアメリちゃんの初出陣です。
「アメリー。お買い物行くけど、食べたいものあるー?」
「おねーちゃんとの料理、楽しいし美味しいから何でもいいよー!」
むう。いつもの力強いお言葉。
「じゃあ、洋食と中華だったらどっちがいい?」
ちなみに、お昼は昨日の残り(菜の花はおひたしにしました)に卵焼きを加えた和食だったので、和食は候補から外してます。
「んー。洋食だったらどんなのー?」
「チラシ次第かなー? ほら、私っていつもいきあたりばったりで決めるし」
改めて、我ながらテキトーだなーと思う。
「中華だったら?」
「それも、チラシ次第ね」
「……おねーちゃん、じゃんけん」
「ん? ほい」
適当にパーを出すとアメリはチョキ。
「じゃあ、洋食でー」
「らじゃー」
じゃんけんで決めましたか、アメリちゃん。テキトーなとこまで私に似なくていいのよ?
◆ ◆ ◆
往路。アメリの様子を何度も振り返りながら、徐行運転。見事にきちんと乗りこなしてるわね。偉い、すごい。とはいえ、油断禁物!
慎重を期しながら、無事いつものスーパーにゴールイン。ふう、と一息吐く。
では、お買い物たーいむ!
いつもの店内BGMに包まれ、チラシチェーック!
ちなみになんでいつも事前にチェックしないかというと、なんとなくワクワク感がなくなるから。ちょっと子供っぽい理由だけど、それが私イズムなのです。
で、肝心のセールは……。
お肉、玉ねぎ、絹さや。ふむ、これで何か面白いのを……。検索、検索。お、これ面白そう!
牛薄切り、じゃがいも、玉ねぎ、人参、絹さやをかごにイン! これとは別に、厚揚げも。よし、これで具材は整いましたよ。後はおなじみ三種の神器~。
「アメリちゃん。何か買いたいものはありますか?」
「明後日クロのところに行きたいから、おやつ!」
「うう、できればうちに来てもらえるほうがありがたいかな~……?」
子離れできない、ダメなおねーちゃんでゴメンナサイ。
「わかった!」
「じゃあ、おせんべいと羊羹でも買っていきましょうか」
「亀池堂」さんのお菓子でないのが恐縮だけど。
こうして、お会計を済ませるのでした。
◆ ◆ ◆
「こんばんは。どうされました?」
「こんばんは。アメリが明後日、クロちゃんと遊びたいと言うのですけど、来てもらうというのは難しいでしょうか?」
帰宅後、まりあさんにコール。なんだか自分が情けなくなるなあ。妹一人、笑顔で送ってあげられないものか。まあ、まだ一人で走らせるのは危ないしと脳内で言い訳してみたり……。
「ちょっと訊いてみますね」
少し音が遠くなり、何やらクロちゃんとやり取りしているらしい。
「オッケーみたいですよ。何時頃伺わせましょうか?」
「お昼過ぎがよろしいかと。あ、お菓子はこちらで用意してますので、お気遣いなく」
「ありがとうございます。では、明後日お昼すぎにそちらに伺わせます」
通話終了。ふう、まりあさんは子離れできててすごいなあ。優輝さんもきっとできているだろうし。白部さんは私の仲間っぽそうだけど、彼女も違うか。転生翌日に、何ごともなく私に一日預けていったし。
うわーん、子離れできてないの私だけだー。自己嫌悪。
「おねーちゃん、具合悪いの?」
デスクに突っ伏してると、アメリによしよしされる。うう、不甲斐ないおねーちゃんでごめんなさい……。
「なんでもないよ。私の問題。もうすぐごはんが炊けるね」
なんだか気まずくて、ついごまかすようなことを言ってしまう。
アメリ依存からの自立。これが今後の課題だなー。
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