神奈さんとアメリちゃん

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第百四十一話 プレゼントを選ぼう! ―前編―

公開日時: 2021年4月24日(土) 20:01
文字数:2,103

私、今とても悩んでいます。というのも、さつきさんへのプレゼントを何にしたものやらと。


 ご本人に何が欲しいか尋ねるのが手っ取り早いけど、何だかそれも味気ない気がするし。


 さつきさんといえばフィギュアだけれど、思えば彼女が好きな作品が何かというのを知らない。


 以前拝見したラインナップを見る限り、美少女とアメコミヒーローがツボみたいだけれど、どっちも詳しくない分野だ。あとは、拝見した時間が短いのとフィギュアが多すぎて、被り・・を避けられる自信がない。そもそも、ジャンルが一致してたからって、好みのキャラを渡せるとも限らないわけで。


 逆に久美さんはわかりやすい。銘酒の類なら、だいたいの物は喜んでくださるはずだ。となると、ここは故郷福井の銘酒をぜひお贈りしたい。よし、通販を使って「黄龍」を取り寄せよう。


 ぽちっ。うん、これでおっけー! 数日後には届くことでしょう。


 久美さんはこれでいいとして、もう一度さつきさんへの贈り物に立ち返る。


 ……うーん、ギブアップ! 私では、彼女の好みを把握しきれない。禁じ手を解き、直接尋ねちゃおう!


「神奈さん、こんにちはっす~! どしたんすか? 自分に直接電話って珍しいパティーンっすね?」


「こんにちは。いやー、それがすっかりさつきさんへのプレゼントで悩んでしまって」


「あー、なるほど。そゆことっすか。美少女フィギュアとアメコミヒーローの世界なんて馴染みなさそうっすもんね」


「恐縮です」


 電話口で頭を下げる。


「いやいや。むしろ、ハズレを渡してがっくりさせたくないって気持ち、しかと伝わったっす! じゃあ、『ピュアリリー』ちゃんのフィギュアをリクエストしちゃっていいっすか?」


「どんなキャラでしょうか……?」


 PCで検索すると、清楚な感じの女児向けアニメらしい華やかで可愛い、白基調のコスチュームをまとった女の子の画像が出てきた。


「画像が出てきましたけど……」


 画像の少女の特徴を告げると、「そうそう、その子っす!」と興奮気味なお返事。


「いやー、昨日のフリマで『ピュアローズ』ちゃんお迎えしたせいで、次の作品で稼ぐまでリリーちゃんをお迎えする余裕なくなっちゃったんす……」


「私に贈っていただいたフィギュアのせいでもありますよね。恐縮です」


「いやいや! それは気に病まないでくださいっすよ! 善意百%、打算なし。これ大事っすから!」


 「ありがとうございます」と、電話口で頭を下げる。


「そういえばあのキャラ、名前はなんと言うんでしょう?」


「あれっすか? まんまケイティちゃんの擬人化っすよ」


「ええー!?」


 なんとびっくり。言われてみれば、箱に書いてあった気もする。


「あ、変な声出してすみません。いやー、ケイティちゃんカニになったりとかしてますけど、美少女化とかもやってるんですねえ」


「ですです。ほんと手広くやってるっすよねー、ケイティちゃん」


 「はー」と、感心したような、あるいは脱力したような声を出し、コーヒー牛乳をひと口飲み込む。


「あ、ちなみに。リリーちゃんは朝アニメのヒロインなんで、『トイザウるスおもちゃ屋』でも手に入るはずっす」


「そうなんですか。では、あたってみますね」


「サンクスっす~。リリーちゃんのお迎え、楽しみっす~」


「では、さっそくトイザウるス行ってきたいと思います。失礼します」


 善は急げということで互いに挨拶し、通話終了。


「アメリー。お出かけするよー」


 後ろでかにざえもんカニのお絵かきをしていたアメリに声をかける。彼女も「おお~!」と応じ、駅前へと向かうのでした。



 ◆ ◆ ◆



「アメリは、三つのプレゼント何にするかもう決めた?」


 運転をしながら、後部座席のアメリに問う。


「ん~。さつきおねーちゃんと久美おねーちゃん、何喜んでくれるかわからない……」


「そっかー。そうだよねー」


 アメリが贈るぶんのプレゼントまで私が買うのも、変な話だし。


「アメリが贈れる範囲のもので、ちゃんと心がこもったものならそれでいいと思うよ」


「おお~……むずかしい……」


 うんうんという唸り声が後ろから聞こえる。


「アメリ、私の絵を書いてくれたことがあったじゃない?」


「うん」


「あれ、とっても嬉しくてね。きちんと大事にしまってあるんだ。だから、とりあえずさつきさんと久美さんへは絵を贈ってあげるといいんじゃないかな」


「おお~! わかった!!」


 嬉しそうな声。交換会用のプレゼントが決まってないけど、それは現地で一緒に考えればいいかな。



 ◆ ◆ ◆



 というわけで、「トイザウるス」に到着! アメリにも「好きなもの買っていいよー」と伝えるけど、かにざえもんを手に入れたばかりだからか、とくにピンとくるものがない模様。それじゃ、本命を買っていきますか。


 女児向けお人形コーナーに行くと、あったあった、ありました。画像と同じ、ピュアリリーちゃんのフィギュアですよ。では、さっそくかごにイン。お会計へ~。


 ところが、レジで店員さんがラッピングせずに紙袋に入れて渡してくるので、慌てて「贈答用に包んでください」と言い添える。


 まあ、アラサー女が幼女連れて女児向けアニメのフィギュア買ってたら、娘へのプレゼントにしか見えないよね……。


 前半戦終了! さて、交換会用のクリスマスプレゼントはどうしようかな。

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