神奈さんとアメリちゃん

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第百三十九話 フリマを楽しもう! ―前編―

公開日時: 2021年4月24日(土) 19:01
文字数:2,707

本日は晴天ナリ! 十二月十九日、F公園でフリマが開かれる日です。いやー、いい天気で良かった!


 ただ一つ、前日揉めたというか、問題になったことが。


 私、まりあさん、かくてるの皆さん、白部さん。各ご家庭の人数を合わせると十一人。どうしても一人、車に乗れない人が出てしまうのです。


 バンの後部を片して無理やり誰か乗せようかとかいう無茶な案も出たし、白部さんが「私たちはバスで行きます」とおっしゃると、まりあさんが「それは申し訳ないので、わたしたちもバスで」とおっしゃり始め、どうしようこうしようという相談の果てに、優輝さんが「では、言い出しっぺが責任を取る形で」と、一人自転車で行くという形で話がまとまりました。


 内訳は、私の車にはまりあさん、クロちゃん、アメリ、ノーラちゃん。あちらのバンには運転手として由香里さん、助手席にさつきさん。後部座席に白部さん、ミケちゃん、久美さんというのがバランスがいいのではないかという形になりました。


 前日ひと悶着あったものの、無事到着。優輝さんと管理センター前で合流。二つの駐輪場がいずれも公園のはずれにあるため、彼女は自転車を引いていくことにしたようです。


 中央広場に進むと、多数の露店がさっそく見えてきました! 通路では、多数のお客さんが往来している。いいねー、このにぎにぎしい感じ!


「早く行こーぜ! 目玉品なくなっちまうよ!」


 久美さんがトットットッとリズミカルに足踏みして、皆を促す。


「いやー、こういうのはじっくり見て回るのが風情ってもんっすよ、姉さん」


 一方、相方のさつきさんはのんびりモード。


「そうですよ。わたしたちだけじゃなくて、子供もいるんですから」


「む……そう言われると弱いな。たしかに、転んで怪我でもしたら大変だもんな」


 由香里さんの言葉に久美さんが足踏みを止め、徐行モードに切り替える。


「じゃあ、順繰りに見ていきましょう」


 かくして、一同固まって、おしゃべりしながら商品を物色していく。さっそく売り物にピン! ときたのは優輝さん。ものはキャンプ用テント。こんなのも売ってるとは……。


「優輝ちゃん、テントもう十分あるよ?」


「いやいや、由香里。まず予備としても有用だし、他の皆さんをお招きするときにも使えるじゃないか。一人用だけど、さしあたってあって損はないと見たね」


「うーん……まあ、優輝ちゃんのポケットマネーから出すぶんには、どうこう言う権利ないけど」


 これは鋼の意志だと感じた由香里さんが、肩をすくめて同意に転向する。


「うんうん。由香里のそういう物分りのいいとこ、好きだよ。すみませーん」


 さっそく交渉に入る優輝さん。数分の話し合いの末、少し値引きしてもらえたようだ。


「いやー、いい買い物した」


 ホクホク顔の彼女。ほんと嬉しそう。


 お隣の露店で気になるものが売っていた。ホットサンドメーカー。あら、これはちょっと良さそうじゃない? と手を伸ばすと、優輝さんと同時にタッチしてしまった。


「あ、どうぞどうぞ。ちょっと気になっただけですから」


「いえいえ。そういうわけにはいかないですよ。きちんと、じゃんけんで決めましょう」


 なんだかそんな流れになり、優輝さんとじゃんけん。あら、チョキで勝っちゃった。


「うーん、これも勝負の運。神奈さんにお譲りします」


「どうもすみません」


 というわけで、私も交渉。……うふ、百円値引きしてもらっちゃった。


 こうして和気あいあいと回っていくと、アメリがビビっと反応する一品が! ケイティちゃんの子供用スリッパ!


「おねーちゃん、欲しい!」


「ちょっと待ってね。サイズ訊かないと。すみません、大きさいくつですか?」


 二十一.五とのお答え。


「じゃあ、これくださいな」


 交渉の結果、どうせうちの子がもう履けないのでと、また百円値引きしてもらっちゃいました。うーん、順調!


 続いてクロちゃんが、将棋のコマと盤に興味津々。


「お姉ちゃん。ボク、将棋やってみたい」


「そうねえ。クロちゃんが将棋指せるようになったら、戸成となりさん喜びそうね」


 ご近所の将棋好きさんかな?


 まりあさんが購入を申し出るも、なにぶん優しい彼女のこと、値札の価格でそのままお買い上げ。


 ただ、代わりに一緒に売っていた子供向けの将棋入門本を、善意でおまけにつけてもらいました。


 さらに進んでいき、由香里さんがアンティークな置き時計を買ったり、久美さんがCDを大量に買ったり、さつきさんが子供向けアニメのヒロインフィギュアを買ったりなどなど、どんどん荷物が増えていく。


 流石に一度トランクに入れたほうがいいという話になり、各車に買い物を一度しまう。


「ルリ姉~疲れたぞー」


 苦情を言うノーラちゃん。実際、とても疲れてそうだ。気持ちは元気なんだけど、体がついてこないのね。


「じゃあ、食堂で休憩しましょう」


 優輝さんの鶴の一声で、休憩タイムと相成りました。



 ◆ ◆ ◆



「おねーちゃん、なーにこれ?」


 ソフトクリームの写真を指差し、アメリが首を傾げる。


「ソフトクリームっていうアイスだよ。食べてみる?」


「うん!」


 というわけで、私たちはソフトクリームを購入。アメリはオーソドックスなバニラ、私はチョコ味。ほかの皆さんもめいめいいろんな飲食物を買い、着席。


 まりあさんたちも、ソフトクリームにした模様。クロちゃんはやっぱりというか何というか、抹茶のソフトクリームを買っていた。まりあさんも同じく。まー、みんな、この寒いのにソフトクリームってのもすごいよね。このお店、開放型なのに。


「おねーちゃん、ソフトクリーム美味しい!」


「そっかー、良かったねえ」


 キラキラした瞳を向けてくるので、微笑んでキャスケット越しに頭を撫でると、「うにゅう」という例の気抜け声を出す。


「うへー。姉さん、よく入るっすねー……まだ、十時半っすよ?」


 カツカレーをもりもり食む久美さんに、舌を巻くさつきさん。ちなみに、彼女はホットコーヒーを飲んでいる。


「朝イチで、近所ランニング一周したからな。逆にこんぐらい食わないと持たん」


 さすが久美さん。スポーツの化身って感じね。


 一方、休憩のきっかけとなったノーラちゃんは、アメリと同じバニラ味のソフトクリームを「うめー、うめー」と美味しそうになめているところ。本当に美味しそうに食べるねえ。


「私、こんなに羽伸ばしたの久しぶりです」


 ホットコーヒーを飲みながら、感慨深げにこぼす白部さん。先月、ちょうどこの公園で紅葉狩りはしたけれど、今の業務になるまで本当にお急がしそうだったものね。


「ごちそうさまでした!」


 久美さんがカツカレーを成仏させ、合掌する。


「食べてすぐ動くのも良くないですし、もう少し休憩してから再開しましょうか」


 由香里さんの提案に皆賛成し、おしゃべりを楽しむのでした。続く!

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