神奈さんとアメリちゃん

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第三百六十九話 愛しのケイティちゃん ―後編―

公開日時: 2021年10月2日(土) 21:01
文字数:2,378

 アメリに手を振ったり、握手を求めるケイティちゃん。すると、突然アメリがわんわん大声で泣き出してしまいました! どうしたの!?


 慌てるケイティちゃんと私。係員さんも、急いでこちらにやって来る。


「いかがなさいましたか?」


「ケイティちゃん! ケイティちゃん!」


 アメリの言葉は、もはや意味をなしていない。でも、なんとなく理由がピンときた!


「すみません! うちの子ケイティちゃんが好きすぎるので、多分感極まっちゃったんだと思います。お騒がせしてすみません!」


 ぺこぺこと平謝り。係員さんが「ケイティちゃんを好きでいてくださって、ありがとうございます」と優しい声で言い、きぐるみケイティちゃんもアメリの頭を優しく撫でると、お辞儀とバイバイをして次の席へと向かいました。係員さんも、「引き続き、お食事をお楽しみください」と言って、お辞儀して引き上げる。


「ああ、ケイティちゃん行っちゃった……」


 まだぐすぐすしながら、名残り惜しそうなアメリちゃん。


「ほかの子も、ケイティちゃんと触れ合いたいからね。独り占めしちゃダメよ。みんなの人気者だもの」


「うにゅう……」


 不承不承といった様子で、食事に戻る娘。


 いやはや。それにしても、泣き出してしまうほど好きだとは。


 私も食事再開。どの料理も美味しく、せっかくなので今度はさきほど気になったラーメンを取りに行く。


 キャラかまぼこのほかに、先ほどの卵。あとは、アルファベットのかまぼこなんかもある。よし、「キラとラキ」のかまぼことカラフルうずら入れて、「KANNA」の文字を作って持っていこう。ふふ、面白いなあ。


「見てー、神奈ラーメン」


「おお~」


 席につき、アメリに見せると感心の「おお~」をいただく。せっかくなので、スマホでパシャリ。


「アメリも取ってくるー!」


「ああ待って、私も行くよ」


 まだ、ビュッフェのマナー把握しきってないだろうからね。


 アメリちゃんは、ケイティちゃんかまぼこまみれのラーメンと、再びケイティちゃんいなりと肉まんをゲット。お客さんも増えてきたので、ゼリーのほうは、もはや原型を留めない状態に……。


 「おおお……ケイティちゃんが……」と、項垂うなだれる我が娘。ぽんぽんと、優しく頭を叩く。


 席に戻り、ラーメンをやっといただく。おお、これまた美味しい! うずらは、色の割にはまともな味でした。


 ほかにも、唐揚げやグラタン、クロワッサンなど色んなものを楽しみ、ラストにケーキをいただくともう満腹! 「もう食べられないよ~」なんて、居眠りしてる漫画キャラみたいなこと言いそうになってしまいます。


 食休みを取っていると、今度はケイティちゃんの恋人である「マニュエルくん」が、グリーディングで席にやって来て私たちと触れ合う。アメリ、彼にはケイティちゃんほどにはハマってないようで、普通に喜んでました。


 こうして、ハプニングがありつつも楽しかった食事も終了。美味しゅうございました。



 ◆ ◆ ◆



「いやー、もうお腹いっぱいですよー」


「あたしもです」


「さすがにウチも、腹いっぱいだわ」


 店外で、みんなお腹ぱんぱんなことをほのぼのと話し合う。


「しかし、さっきは驚いたぜアメ子」


 久美さんが肩をすくめる。レストラン中に響く鳴き声だったもんねえ。


「すみません、本当に。アメリもごめんなさいしよう?」


「おお~……ごめんなさい……」


「いやいや、別にウチには謝らなくていいって。アメ子さ、ほかのちびっこたちもだな。大人になると、あんま泣くの許されなくなってくるのよ。だから今の内に、泣きたいときは好きなだけ泣いとくといいぜ!」


 ウィンクして、グッとサムズアップする彼女。そうね。大人だって、泣きたいときぐらいあるのにね。


「お気遣い、ありがとうございます」


 ぺこりとお辞儀。


「いいってことよ。で、次はどこから攻める?」


 久美さんがパンフレットを開いたので、皆もそれにならい作戦会議を開始。


このフロア四階と三階は、レストランとか物販が中心みたいですね。遊べるスポットも、ないではないみたいですけど……。どうでしょう、多分後になるほど混みますし、『ウォーターライド』からいってみません? 二階ですね」


 イべント大好きガール優輝さんが、「こんなんいかがでしょ」って感じで勧めてくる。パンフレットによると、キャラクターたちで満ちあふれた空間を、ゆっくりと乗り物で水上巡りしていくアトラクションらしい。


「いいかもしれませんね。お腹いっぱいであんまり動き回りたくないですし、待ち時間が多少あるぐらいのがいいのかもしれません」


 ほかの方々も異存ないようで、ウォーターライドへと向かうのでした。


 いやー、平日だってのに結構な行列で……。二十分待ちとか書いてありますよ。


 ま、このぐらいのほうが、ぱんぱんなお腹で歩き回るよりいいでしょう。


 私の前後は、それぞれかくてるの皆さんと白部さん。さらにその後ろにまりあさん。


 手持ち無沙汰なので、白部さんと話していよう。


「やはり、今日の諸々もレポートとしてまとめられるんですよね?」


「そうですね。平日で仕事日ですし、ただ遊んで終わりというわけには。『猫耳人間の娯楽への興味と反応』……とか、そんな体で記すことになると思います」


 勤め人も大変ですねえ。フリーランスには、フリーランスンなりの苦労ってのがあるけれど。


「ノーラちゃんのサッカーのほうはいかがですか?」


「まだ指導を受けて間もないので、さすがの猫耳人間でもまだまだこれからという状態ですね」


 そうおっしゃいながら、愛娘の頭を優しく撫でる彼女。「ふへ~」と、とろけそうな表情になるノーラちゃん。ふふ、二人の愛の絆を感じますね。


 こんな感じで雑談していると、かくてるの皆さんがカートに乗り込み、そこで分断されてしまいました。これ、二人乗りの三両編成なのね。


 今度はアメリと江戸時代トークしながら十分じゅっぷんほどさらに待つと、とうとう私たちの番が来ました!


 わくわくだね!

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