神奈さんとアメリちゃん

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第二百十八話 アメリ、心を込める

公開日時: 2021年4月30日(金) 21:01
文字数:2,085

「まずは、人参、じゃがいも、玉ねぎをカットするよー。どれか一つだったら、どれをやりたい?」


「んー……人参!」


「りよーかい! じゃあ、人参の皮を剥いて、一センチ角の大きさに切ってくれるかな?」


「らじゃー!」


 というわけで、私は私でじゃがいもと玉ねぎの皮を剥き、こちらも一センチ角に切っていく。


「できた!」


「お疲れー、ありがとねー。じゃあ、ボウルに入れといてちょーだい」


「はーい」


 少し遅れて、私も処理終了!


 オリーブオイルを引いて熱したフライパンで、チューブにんにくを炒める。うーん、食欲をそそる香りが漂ってきましたよ!


 ここで、お野菜ズを投入! じゅうじゅう炒めて、少ししたら小麦粉大さじ一杯半も入れて、さらに炒めまーす。


 一分ほど炒めたら、水二カップ、顆粒コンソメ、ローリエを投入して、お野菜ズに完全に火が通るまで煮込みまーす。


 もう一個、フライパンにオリーブオイルを引いて、これまたチューブにんにくを炒め、アサリ半分と白ワイン四分の一カップをイン! ガラス蓋をして、ワイン蒸しにしまーす。アサリが一、二個ぱかっと開いたら、野菜の鍋に投入~! 牛乳一カップも入れ、塩胡椒で味を整えまーす。


「おお~。お仕事ない?」


「んー、ごめんねー。次のボンゴレでは手伝ってもらうねー」


「わかった!」


 さて、クラムチャウダーは完成したので、一旦テーブルの鍋敷きの上に置いといて、と。


「じゃ、アメリちゃん。さっそくお願いしますね」


「うん!」


 選手交代~!


「さあ、まずはスパゲッティーを茹でるよ! お湯を沸かしましょー」


 寸胴鍋に水を入れコンロに置くと、アメリが点火する。


「で、フライパンにオリーブオイルを引いて、チューブにんにくと、この鷹の爪を炒めてね」


「はーい」


 じゅうじゅうと炒めていく彼女。


「じゃあ、次はパセリを炒めて……そうそう、そのぐらいね。で、アサリさんと、この白ワインを入れてガラス蓋をしてちょーだいな」


 アサリが、ぱかっと一個開く。


「ん。火を止めて。蓋はそのまま。あとは、お湯が沸騰するのを待つよ」


 しばしおしゃべりに興じていると、ボコボコと泡立つ。


「よし、スパゲッティーとお塩を入れましょー」


「はーい」


 スパゲッティー二人前とお塩少々を投入してもらい、タイマーをセット。ちょっと固めにするのがポイント。おしゃべりしながら、菜箸でぐるぐるかき回してもらう。


 すると、タイマーがピピピと鳴りました。


「じゃあ、お湯を捨てるわけだけど……アメリにはちょっと重いから、私がやるね」


 お湯を少し取っておいて捨て、スパゲッティーをザルに揚げる。


「お次は、フライパンからアサリを取り出して、このスパゲッティーを中火で混ぜながら炒めてちょうだい」


「わかった!」


 アサリと入れ替わりに、投入されるスパゲッティー。アメリシェフ、これをじゅうじゅう炒めます。


「ん。少し継ぎ足したほうがいいね」


 スパゲッティーの茹で汁を少し足しながら、塩も足して味見する。


「よし、こんなもんかな。あとは、追いパセリと追いオリーブオイルだね! それぞれ、かけてちょうだい。……うん、そのぐらい。あとは、さっきのアサリを入れ直して」


「アサリさん、何度もごめんねー……」


 アサリさんに謝るアメリちゃん。そして、ほんのり温まるまで炒めること少々。


「はーい、でっきあがりー! お見事です、アメリシェフ!」


 パチパチと盛大に拍手すると、「うにゅう」と照れくさそうに後頭部を撫でる彼女。そんなぷりちーヘッドを撫で撫でする。


「じゃあ、クラムチャウダーを温め直して、まずはスパゲッティーからいただきましょ」


 クラムチャウダーを再度火にかけ、紅茶をれてボンゴレとともに配膳する。


 そして、エプロンを外し着席。


「「いただきます!」」


 合唱。アメリのいただきますが、心なしかいつもより力強い気がする。


 ぱくっ!


「うん、美味しい! 美味しいよ、アメリちゃん!」


「ほんと!? えへへ~……」


 またもや照れくさそうに後頭部を撫でる彼女。ほほえま!


 実際、本人も手製のボンゴレを、自ら美味しそうに食べている。


 クラムチャウダーがグツグツいい始めたので様子を見、かき混ぜながら湯気を確認し、パセリをまぶして深皿によそう。


「はい、こちらもどうぞ」


「ありがとー! ……美味しい!」


 瞳を輝かせる彼女。良きかな良きかな


 私も着席し、料理の出来栄えを確かめる。うん、上出来!


「「ごちそうさまでした!」」


 再度合唱。やはり、アメリの言葉に今までよりも、さらに心がこもっている気がする。思えば、生き物を直接殺生するのはこれが初めてだったものね。


 こうして、後片付け。歯を磨いた後は、「あめりにっき」三巻ぶんのルビ付き原稿を渡す。


 三巻は、生後五ヶ月から一歳という成猫への成長を描いた物語。


「おお~、アメリやんちゃだなー……」


 まるで他人事のように、自分の行動を食い入るように読みふける。


 このまま様子を見守っていたいけれど、お仕事をしなければいけない。


 自分のおもしろ行動に、感心するやらどきどきするやらな彼女を残し、デスクでネーム執筆。こちらも、今晩中にはできあがりそうだ。


 ネーム、一発通過するといいな。明日は、どんな一日になるだろう。楽しみ!

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