「でーきーた~!!」
アメリちゃん構い倒しからさらに数日。下書きもついに完成! アシさんに指示を出して、小休止。
時間に余裕のある今のうちに、白部さんのお誕生日プレゼントを買ってしまいたい。
白部さんといえばリンゴ。それもアップルサイダー。国道沿いに大きな酒屋さんがあるので、そこでさっそく買おうかと思い腰を上げたものの、ふと動作を止めた。
(もしかしなくても、被りまくるのでは――!?)
白部さんの好物は皆さんご承知。もしかしなくても、白部さんのプレゼントが当日アップルサイダーまみれになるのは容易に想像できる。
飲兵衛の久美さんならともかく、白部さんがアップルサイダー六本を軽々と消費する図は逆に想像できない。
では、どうしたものか。白部さんはほかには猫耳人間を愛しているわけだけど、猫耳少女のフィギュアもらって喜ぶかと言うと……。ちょっとこれも違う気がする。彼女は間違いなくナマの愛好者だ。
あとは、彼女が愛するものといえば猫。でも、猫の大きなぬいぐるみとかどうなだろう。白部さんの家は広くないので、あまりかさばる物もご迷惑だろう。
あ、アメリちゃん写真集は!? ……私はアホか。
アップルサイダーで決め打ちだと思ってたけど、意外とムズカシイな……。
「アメリは、白部さんのプレゼント何にするー?」
くるりと椅子を捻り、背後の彼女に問う。
「絵にするー!」
ほほう。鉄板で来ましたね、アメリ先生。
アメリにかつて教えた、「贈り物は心が大事」。その精神に則るなら、何でもいいといえばいいのだけど……。ううむ、なんか思考が堂々巡りしてきた。基本に立ち返ろう。
白部さんはリンゴと猫耳人間と猫、あとは子供が大好き。
このうち、猫耳人間と子供の物は色々アレすぎるので除外。
リンゴは多分、アップルサイダーが集中する。……かくてるハウスの皆さんなら、相談してバラけるかもだけど、逆に言えば誰か一人は絶対選びそう。あと、まりあさんも。
となると……やはり猫! よし、ここまでは組み上がった。
で、白部さんの家は広くない。大きな物はかえってご迷惑になる。
と、なーるーとー……む! 写真集とかどうかしら?
うん、いいんじゃない? いいんじゃない!?
「アメリちゃん、駅前に行きましょう!」
「おお~? また何か買うの~?」
「うん。白部さんに、猫の写真集を贈ろうかと思って。アメリは何か買いたいものある?」
「んー……カタツムリ食べたい!」
ほむ。もうお昼は済んじゃってるから、行くなら早くて五時頃かなー。六時以降だとすごい混みそう。
「りょーかい。じゃあ、五時前に出発ね」
「おお~!」
それじゃ、時間までお仕事だね! アシさんの質問を待ちながら、本稿の執筆を進める。人物と背景でバラしてそれぞれ描けるのが、デジタルのいいところだねー。
◆ ◆ ◆
アシさんからの細かい質問にも答え、だいぶ作業が進みましたよっと。四時半にセットしていたアラームがお出かけ用意開始の合図をしてくれる。
「よーし、アメリ。そんじゃーお出かけの用意しよっか!」
PCをスリープにしながら背後の彼女に呼びかけると、「おお~!」と元気な返事。多分、おなじみの拳突き上げアクション取ってるのかな。
さーて、外着に着替えてメイクしましょうねー。
◆ ◆ ◆
とうちゃーく。今日も「るるる」には用がないので、市営駐車場のお世話に。
さっそく「シャンデリア」にGO!
今日は、まずもちろんエスカルゴ! これに加え、一流シェフがおすすめしていたもう一つの料理、パルマ風スパゲッティーをいただくことに。スパゲッティーだけで主食として十分なので、フォカッチャはなし。
注文後に、スマホでシェフさんのインタビューを詳しく見る。唐辛子と粉チーズとオリーブオイルをかけて、ズバッといくのがおすすめです、と。なるほど。
ほどなくして、やって来ました! では、いただきます!
「おお~……!!」
まずは愛してやまないエスカルゴから手を付けたアメリが瞳を輝かせる。
私は、アメリのためにもスパゲッティーからいって、調味料の適量を味見してみようかな。
ぱらぱら~。……こんなものかしらね? ぱくっ!
あら、ほんとに美味しい!! さすが一流シェフのオススメ。
「アメリ、アメリ。このスパゲッティーね、唐辛子と粉チーズとオリーブオイルをかけて食べるとすごく美味しいよ!!」
今しがた使った調味料三つを彼女に差し出す。
「おお? わかったー、それで食べてみる!」
アメリも私の真似をする。
「美味しい!!」
またも瞳をキラキラ輝かせる彼女。良き哉良き哉。
……ふう。今日も、美味しいイタリアンをごちそうさま。
さて、本日のメイン、写真集を買いに行きましょう~。
◆ ◆ ◆
「麗文堂」さんに到着~。写真集コーナーへ、れっつらご~!
お、ありましたありました。猫ちゃんの表紙が可愛い写真集ですよ。これはメインクーンかな?
ぱらぱらとめくってみると、どの子も実に可愛い。私は写真は詳しくないけれど、カメラマンさんの腕もとてもいいと思う。よし、これにしーましょ。
「アメリは買いたい本ある?」
「んー……。まだ前の読みきってないから、特にない~」
ほむほむ。じゃあ、ここでの用事はこんなもんかな。
続いて、「ダイナー」へ!
ここでは包装紙を買いまーす。おお、ちょうど猫柄なんてある。良き哉良き哉。
「アメリは、何か欲しい物ある?」
「コラ・コーラ!」
「ほいほい。じゃあ、それも買っていきましょうね」
というわけで、お会計。ふう、白部さんへの贈り物、ミッション半分達成! あとは当日のお楽しみだね!
読み終わったら、ポイントを付けましょう!