神奈さんとアメリちゃん

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第百八話 天高く、馬肥ゆる秋。なので……

公開日時: 2021年4月23日(金) 17:01
文字数:2,467

「むう!?」


 お風呂上がり。体重計に乗ると、体重が微増! がーん。


 マスペ飲みすぎたかなー。最近、スーパーも歩きじゃなくて自転車だし。


「アメリも乗ってみて」


「おお?」


 彼女も乗ると、やはり微増。アメリの場合成長かもしれないけれど、本来なら学校で体育の授業を受けているような年齢。でも、私はてんでそれを怠ってきたわけで。基礎体力を付けさせるためにも、なにか運動を始めたほうがいいね、こりゃ。


 というわけで、お着替え後にアスリートの久美さんにLIZEで打診すると、お返事をいただきました。


「まー、オススメはやっぱランニングなんだけど、アメ子がスポーツウェア着れないよね?」


「ですねー」


 何のためにアメリがいつも丈の長いスカートを履いてるかといえば、しっぽを隠すため。そんな格好では、走りづらいことこの上ない。


「つーわけで、屋内運動推奨かな。ランニングマシーンとか置けそう?」


「スペース的に、ちょっと厳しいですね」


「なるほど……」


 悩み猫スタンプとともに、しばし考え込む久美さん。


「んじゃー、ストレッチの動画撮って送るわ。ウチら柔道家が鍛錬始める前、体ほぐすためにやるんだけどさ、けっこーいい運動になるよ」


「ありがとうございます!」


 かくして、ネームを描きながら待っていると、動画が送られてきました。さっそく、私が床、アメリがベッドの上で実行!


 画面に映る、セパレートスポーツウェアの久美さんが、足首をくりくり回したり、片足を伸ばして反対側の手で先を持ったり、足を折りたたんで仰向けになったり、開脚をしたり、足を組んだまま上半身を捻ったりと、見た目以上にハード! お風呂上がりなのに汗だくで、これはもう一回入らなきゃだわ……。


「ああ~、きっつ。アメリは大丈夫~?」


「おお~? 疲れるけど、難しくはないよー」


 すごい、開脚なんかも本当に楽勝でこなしてる。アメリ……恐ろしい子! いや、ほんとすごいな。


「は~……アメリって体柔らかいんだねえ」


 久美さんに意外とハードだったことと、アメリが苦もなくこなしてることを伝えると、「慣れだよ、慣れ。でも、ミケ子も初ストレッチ楽勝でこなしてたっけなー」なんて、のんきなお返事。


 へえ、ミケちゃんもなんだねえ。猫耳人間って、人間の上位互換存在だったりして? ……うーん、我ながら漫画脳。


 ともかくも、「ありがとうございました」とお礼を述べ、第二ラウンド開始。せっかく汗かいたなら、かききっちゃいましょうという腹づもり。


 すると、LIZEの着信音が。


「あー、最初は無理しないでな?」


 との久美さんのお言葉。エスパー!? ……まあ、初心者が陥りがちなミスを事前に指摘してくれただけよね、きっと。


「気をつけます」


 と返信し、もうワンセットだけやって終了。ふう、疲れた。漫画家の体力不足、ここに極まれり。


「アメリー。終わったらお風呂もっかい入りましょー」


「おおー? まだできるよー?」


「久美さんが、『最初は無理しないように』だって」


 袖で汗を拭いながら、受けたばかりの注意事項を伝える。


「そっかー、わかった!」


 ううむ、元気ですこと。私も十代に戻りたくなるわあ。



 ◆ ◆ ◆



 お風呂上がりの一杯は、麦茶。ここでマスペとかキメたら、何のために運動したんだかわからなくなっちゃう。はあ~……火照った体に染み渡る……。


 とりあえず、お風呂前のストレッチは習慣化しよう、うん。


 晩ごはんももういただいてしまったので、あとはお仕事するのみ。


 由加……優輝さんの代理の荷解きも終わり、我が家でアメリとミキちゃん……ミケちゃんの代理と戯れながらお茶を愉しむという展開。


 このへん、ちょっと史実・・とは違うけど、ミキちゃんにカレー食べさせるわけにもいかないし、このあたりが落としどころかな、と。


 猫時代のミケちゃんのキャラ・・・は優輝さんからいろいろ伺ってるけど、やっぱりというか、プライドが高いタイプだったみたい。


 その情報をもとに、「ミケちゃんが猫だった頃は、きっとこうだったよね」と想像を巡らせながら、筆を進める。


 もくもくと執筆していると、LIZEの着信音が。はて、久美さんかな? と思ってメッセージを見ると、バンザイ猫スタンプとともに、「芋掘り行きませんか?」との優輝さんからのメッセージが届いていました。


 まりあさんは、「病み上がりですので……」と遠慮していたけれど、「あ、すぐにという話ではないです。完全復活してからでOKです」との優輝さんのお返事。


「芋掘りですか、面白そうですね。ただ、アメリの服が……」


 アメリはしっぽを隠すために、外ではロングスカート。これでは芋掘りは難しい。


「まあ、それはしょうがないので子供たちは見学ですかねー」


 しょんぼり猫スタンプとともに、優輝さんの返事。ミケちゃんもクロちゃんも、同様にスカートだからだ。


「そういえば、こないだの紅葉狩りの話ってどうなりました?」


 ふと頭に浮かんだイベント予定について尋ねてみる。


「ああ。それなんですけど、紅葉こうようが遅れてまして、もう少し先になりそうです。まあ、まりあさんの体調も考えると、先延ばしになって良かったのかもしれません」


 なるほど。


「このサイトで、F公園の紅葉こうよう情報が見れるので、良かったら参照して下さい」


 と、URLがぺたっと貼られる。へえ、公園の公式サイトかー。紅葉こうよう度は「青い」、だって。こりゃまた、ずいぶん先になりそう。だから芋掘りの提案してきたのかな? 優輝さん、イベント大好きガールだし。


 芋掘りかー。高校のときにやったっけな。懐かしい。


「おお~? 何のお話?」


「ん? 優輝さんが今度、芋掘りしましょうって。さつま芋っていうんだけど、こういうのね。これが地面に埋まってるから、掘り起こして持ち帰ったら、食べるんだよー」


 別画面を呼び出し、スラスラとさつま芋のイラストを描く。


「おお~! アメリもやりたい!」


「んー……、アメリはスカートだからねー。見学かな。ごめんね」


 すると、「うにゅう……」という声を上げ、しょげてしまう。


「あー、よしよし」


 頭を撫でると、少し元気が出たみたい。


 いつか、アメリと思う存分野外活動したいなあ……。そんな日が来たらいいな。

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