「むう!?」
お風呂上がり。体重計に乗ると、体重が微増! がーん。
マスペ飲みすぎたかなー。最近、スーパーも歩きじゃなくて自転車だし。
「アメリも乗ってみて」
「おお?」
彼女も乗ると、やはり微増。アメリの場合成長かもしれないけれど、本来なら学校で体育の授業を受けているような年齢。でも、私はてんでそれを怠ってきたわけで。基礎体力を付けさせるためにも、なにか運動を始めたほうがいいね、こりゃ。
というわけで、お着替え後にアスリートの久美さんにLIZEで打診すると、お返事をいただきました。
「まー、オススメはやっぱランニングなんだけど、アメ子がスポーツウェア着れないよね?」
「ですねー」
何のためにアメリがいつも丈の長いスカートを履いてるかといえば、しっぽを隠すため。そんな格好では、走りづらいことこの上ない。
「つーわけで、屋内運動推奨かな。ランニングマシーンとか置けそう?」
「スペース的に、ちょっと厳しいですね」
「なるほど……」
悩み猫スタンプとともに、しばし考え込む久美さん。
「んじゃー、ストレッチの動画撮って送るわ。ウチらが鍛錬始める前、体ほぐすためにやるんだけどさ、けっこーいい運動になるよ」
「ありがとうございます!」
かくして、ネームを描きながら待っていると、動画が送られてきました。さっそく、私が床、アメリがベッドの上で実行!
画面に映る、セパレートスポーツウェアの久美さんが、足首をくりくり回したり、片足を伸ばして反対側の手で先を持ったり、足を折りたたんで仰向けになったり、開脚をしたり、足を組んだまま上半身を捻ったりと、見た目以上にハード! お風呂上がりなのに汗だくで、これはもう一回入らなきゃだわ……。
「ああ~、きっつ。アメリは大丈夫~?」
「おお~? 疲れるけど、難しくはないよー」
すごい、開脚なんかも本当に楽勝でこなしてる。アメリ……恐ろしい子! いや、ほんとすごいな。
「は~……アメリって体柔らかいんだねえ」
久美さんに意外とハードだったことと、アメリが苦もなくこなしてることを伝えると、「慣れだよ、慣れ。でも、ミケ子も初ストレッチ楽勝でこなしてたっけなー」なんて、のんきなお返事。
へえ、ミケちゃんもなんだねえ。猫耳人間って、人間の上位互換存在だったりして? ……うーん、我ながら漫画脳。
ともかくも、「ありがとうございました」とお礼を述べ、第二ラウンド開始。せっかく汗かいたなら、かききっちゃいましょうという腹づもり。
すると、LIZEの着信音が。
「あー、最初は無理しないでな?」
との久美さんのお言葉。エスパー!? ……まあ、初心者が陥りがちなミスを事前に指摘してくれただけよね、きっと。
「気をつけます」
と返信し、もうワンセットだけやって終了。ふう、疲れた。漫画家の体力不足、ここに極まれり。
「アメリー。終わったらお風呂もっかい入りましょー」
「おおー? まだできるよー?」
「久美さんが、『最初は無理しないように』だって」
袖で汗を拭いながら、受けたばかりの注意事項を伝える。
「そっかー、わかった!」
ううむ、元気ですこと。私も十代に戻りたくなるわあ。
◆ ◆ ◆
お風呂上がりの一杯は、麦茶。ここでマスペとかキメたら、何のために運動したんだかわからなくなっちゃう。はあ~……火照った体に染み渡る……。
とりあえず、お風呂前のストレッチは習慣化しよう、うん。
晩ごはんももういただいてしまったので、あとはお仕事するのみ。
由加……優輝さんの代理の荷解きも終わり、我が家でアメリとミキちゃん……ミケちゃんの代理と戯れながらお茶を愉しむという展開。
このへん、ちょっと史実とは違うけど、ミキちゃんにカレー食べさせるわけにもいかないし、このあたりが落としどころかな、と。
猫時代のミケちゃんのキャラは優輝さんからいろいろ伺ってるけど、やっぱりというか、プライドが高いタイプだったみたい。
その情報をもとに、「ミケちゃんが猫だった頃は、きっとこうだったよね」と想像を巡らせながら、筆を進める。
もくもくと執筆していると、LIZEの着信音が。はて、久美さんかな? と思ってメッセージを見ると、バンザイ猫スタンプとともに、「芋掘り行きませんか?」との優輝さんからのメッセージが届いていました。
まりあさんは、「病み上がりですので……」と遠慮していたけれど、「あ、すぐにという話ではないです。完全復活してからでOKです」との優輝さんのお返事。
「芋掘りですか、面白そうですね。ただ、アメリの服が……」
アメリはしっぽを隠すために、外ではロングスカート。これでは芋掘りは難しい。
「まあ、それはしょうがないので子供たちは見学ですかねー」
しょんぼり猫スタンプとともに、優輝さんの返事。ミケちゃんもクロちゃんも、同様にスカートだからだ。
「そういえば、こないだの紅葉狩りの話ってどうなりました?」
ふと頭に浮かんだイベント予定について尋ねてみる。
「ああ。それなんですけど、紅葉が遅れてまして、もう少し先になりそうです。まあ、まりあさんの体調も考えると、先延ばしになって良かったのかもしれません」
なるほど。
「このサイトで、F公園の紅葉情報が見れるので、良かったら参照して下さい」
と、URLがぺたっと貼られる。へえ、公園の公式サイトかー。紅葉度は「青い」、だって。こりゃまた、ずいぶん先になりそう。だから芋掘りの提案してきたのかな? 優輝さん、イベント大好きガールだし。
芋掘りかー。高校のときにやったっけな。懐かしい。
「おお~? 何のお話?」
「ん? 優輝さんが今度、芋掘りしましょうって。さつま芋っていうんだけど、こういうのね。これが地面に埋まってるから、掘り起こして持ち帰ったら、食べるんだよー」
別画面を呼び出し、スラスラとさつま芋のイラストを描く。
「おお~! アメリもやりたい!」
「んー……、アメリはスカートだからねー。見学かな。ごめんね」
すると、「うにゅう……」という声を上げ、しょげてしまう。
「あー、よしよし」
頭を撫でると、少し元気が出たみたい。
いつか、アメリと思う存分野外活動したいなあ……。そんな日が来たらいいな。
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