神奈さんとアメリちゃん

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第二百六十三話 白部さんとお買い物に行こう!

公開日時: 2021年6月15日(火) 21:01
更新日時: 2021年6月18日(金) 20:05
文字数:2,377

「えっ!? そんなに早いんですか!?」


 電話口で変な声を出す私。


 なんでそんな声が出てしまったかというと、通話相手の白部さんから「女の子の思春期は八歳から始まることがある」と聞かされたから。


 何ということでしょう! 可愛いアメリちゃんが、明日にでもおませな子に突入してしまうということ!?


「あ、いえ。あくまでも人間の女の子の場合です。猫耳人間の場合、転生時が八歳児相当なので、サンプルが多いわけでもないのですけど、早くても人間換算年齢で十歳ぐらいみたいですよ?」


 尋常ならざる私の様子に驚いたのか、彼女が慌てて付け加える。


 ほっ。少なくともあと一年半は純粋無垢なアメリちゃんでいてくれるということなのね。


「まあ、猫崎さんのお気持ちわかります。私も、ノーラちゃんを抱きしめたり吸ったりがいつまでできるのか気になって、こないだ調べ直したんですよ」


 吸ったり!? 相変わらずですね、白部さん……。


 しかし、女子の思春期突入ってそんなに早かったっけ。私のときは十二歳ぐらいだった記憶だけど、言われてみればクラスメイトに早い子がいたような気がしないでもない。


 ちなみに白部さんがおっしゃるには、男子だと人間でも猫耳人間でも十歳~十二歳ぐらいだそうで。


 当たり前だけど、男の子の猫耳人間もいるのね。


 こないだもちらりと考えたことだけど、アメリも近いうちに自分の体の変化に戸惑ったり、アイデンティティに思い悩んだり、はては恋したりするんだなあ。


 かくいう私は、白部さんのお話に戸惑ったり思い悩んだりしながら、すらすら下書きを進めるという器用なことをしてますけども。


 当のアメリに視線を向けると、今日もぬいぐるみ遊び。とても、すぐに思春期に突入するようには見えないから、ほっとするというかなんというか。


 でも、この海産物ファミリーたちが「卒業」で戸棚の肥やしになる日も遠くないと考えると、少し切ない。


 いつまでも子供のままでいてほしいというのが、親のわがままだというのはわかっているつもりだけれども。


 その後も、白部さんと猫耳人間についてのあれやこれやつについてや世間話をしながら、下書きを進めるのでした。



 ◆ ◆ ◆



 PCの時計を見ると、そろそろお買い物に行くべき時間。スマホを使ってるとアラームが教えてくれないからうっかりしがちね。


「すいません白部さん。お買い物に行く時間になってしまいました。長電話してしまってすみません」


「いえいえ。猫耳人間の保護者さんのご相談に乗るのも、仕事の一環ですから。お買い物、そこのスーパーですよね?」


 彼女がいつものスーパーの名前を挙げる。


「はい。大抵あそこでお買い物していますね」


「でしたら、ご一緒にどうですか? 私もそろそろ、買い出しに出かけようと考えていたところで」


 白部さんと連れ立ってごはんの買い出しかー。たまにはいいかもね。


「はい。では、ご一緒に参りましょう。私たちは車で行く予定です」


「では、私たちもそうしますね。駐車場が少し離れてますので、用意ができたらご連絡差し上げます」


 かくして、通話終了。着替えてご連絡を待っているとコールが来たので応対し、私たちも車に乗り込むのでした。



 ◆ ◆ ◆



「白部さんも、いつもこちらのお店で?」


 例のBGMに包まれながら、四人で店内にイン。


「そうですね。やはり一番近いので、車がなかった時代もこちらを使ってましたから」


「なるほど。では、今日のチラシチェックを……」


「今日は、ひき肉と玉ねぎが安いみたいですよ」


 あらら。先に調べてらしたのね。さすが、いきあたりばったりな私と違ってそつがない。


「というわけで、今日はハンバーグでも作ってあげようかと思いまして」


「ハンバーグですかー。いいですねえ」


 うちもハンバーグにしようかしら? でも、同じメニューというのも芸がないような。いや、張り合うようなものでもないけれど。


 何か面白いのないかな……? あっ!


「今日、うちは焼売にしてみます」


「焼売ですか。それも美味しそうですね」


 まずは、仲良く青果コーナーへ。私は玉ねぎのみ、白部さんは玉ねぎと人参、そしてリンゴをかごに。


「ノーラちゃん、人参平気なんですね」


「はい、ありがたいことに。ピーマンはまだ試してないんですけど」


「でしたら、今度ピーマンの肉詰めを作ってあげるといいかもしれません」


 私が子供時代、これでピーマンを克服したことを語ると、興味深そうに聞く彼女。


「それは試してみる価値ありそうですね。せっかくだし、今日それにしちゃいましょう」


 ピーマンも追加でかごに入れる。私たちをよそに、子供二人は恐竜トークに熱中なう。


「出勤してた頃はコンビニ弁当のレパートリーから選ぶのが一苦労でしたけど、自炊できるようになると、これはこれで毎日の献立に悩みますね」


「わかります。うちも、アメリになるべく色んなもの食べさせてあげたいから、いつも悩むんです」


 互いに、微笑みとも苦笑ともつかない表情をする。


 その後は、精肉コーナーへ。私は豚、白部さんは牛豚の合い挽きをかごに入れる。さらに私は、焼売の皮もイン。


 続いて、粉関係のコーナー。こちらは買うものがないけれど、彼女が小麦粉をお買い上げに。


 そして日配品コーナーでは卵と牛乳を二人で買い、白部さんはリンゴジュースをさらに追加。本当に、リンゴお好きなのね。


 最後に私は食パン、彼女はロールパンを買ってフィニッシュ。


「やっぱり、車があると便利ですねえ」


 トランクに荷詰めしながら述べる白部さん。


「そうですね。とはいえ、車ばっかり使っていると運動不足になってしまうので、自転車をなるべく使うようにしています。今はアメリが補助輪なしの練習中なので、車ですけど」


「いいお心がけだと思います」


 微笑みを向けてくる。


「ありがとうございます。……よし! 荷詰め完了! そちらもオッケーみたいですね。では、帰りましょうか」


「はい」


 かくして、仲良く家路をたどるのでした。

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