神奈さんとアメリちゃん

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第百一話 神奈、かくてるハウスのキッチンに立つ ―後編―

公開日時: 2021年4月22日(木) 18:01
文字数:2,217

お米の炊飯をセットした後は、久美さんと手分けしてお肉のカットなう。


 いやー、二人並んでまな板使えるってほんと広いキッチンだねー。こんなおうち、一回住んでみたいわー。


 アメリが大きくなって料理ができるようになったら、一緒にキッチンに並んで……。ああ、想像しただけでほほえま! よーし、頑張って稼ぐぞー!


 おっといけない。集中、集中!


「けっこーできたね」


 久美さんがボウルに入れた切り分けたお肉を見て、素直な感想をこぼす。


「ですねー、切るだけで結構疲れちゃいました。皆さん、いつもこんな大変なんですねえ」


「まあ、今日は人数多いしねー。いつもはもう少し楽だよ。じゃ、漬け込もーか」


 ビニール袋に醤油、みりん、料理酒、チューブ入りしょうが、そして鶏肉を混ぜ入れてよく揉む。揉みこんだら、口を結んで五分放置~。取り出したらザルに空け、余分な汁気を切りまーす。あとはボウルに入れた片栗粉と薄力粉を半々にした衣をまぶしていく。


 続いて副菜。これは単純に久美さんとキャベツとネギを半分こして千切り&斜め切りに。トマトもひと口サイズにカット。キャベツとネギはそれぞれボウルに入れ、トマトはお皿に載せておく。あー、キッチンが広いとほんと置き場所に困らなくて便利!


「んじゃ、神奈サン。うちのIHの使い方よく見ててな」


 油を張った中華鍋と、お水を張ったやや大きめの鍋が載ったコンロのボタンを操作し、中華鍋のコンロを百六十度、大きめの鍋のほうは九十五度にセット。あとはスイッチポン。うわ~お手軽……。


 うーん、ガス党を貫く宣言をこないだ脳内でしたばかりだけど、ちょっと心が揺らぐ。でも、鍋類やフライパンをかなり買い換えなきゃいけなくなるしねえ……。


 ややするとお湯が沸騰、鍋も細かく泡が出てて、多分適温に達している。


「どっちやる?」


「じゃあ、唐揚げのほうを担当しますね」


 というわけで、それぞれボウルを持ち、投入~。唐揚げはあまり一気に投入せず、一つ一つ間をおいて投入する。ある程度入れたら、三分後に油から揚げ、五分休ませましてー。五分経ったら二百度にして一分再加熱! これぞ奥義・二度揚げ! ……大げさか。


 久美さんのほうはネギとお麩に火が通ったようで、湯温を七十度に設定してお味噌を溶きつつ、ちょこちょこ味見。


 私のほうも、作業を繰り返すこと数度、出っ来上がり~!


「あー、そっちも完成? んじゃ、みんな呼ぶな。神奈サンはちびっこたち呼んできて」


 「はーい」と、スマホを操作している久美さんを残しリビングへ向かう。リビングに着くと、三人でトランプで何やら遊んでいるところだった。場面を見るにババ抜きかな?


「アメリ、トランプ教えてもらったの?」


「うん! 面白いね!」


「そっかー。良かったねー」


 と言って頭を撫でると、「うにゅう」という気の抜けた声を上げる。


 おっと、本題を忘れるところだった。


「ご飯できたから、みんな食べにおいでー」


 「はーい」と言いながらトランプを片付けた後、三人娘が私の後にぞろぞろ続く。カルガモの親子みたい。ほほえま!


 三人を着席させると、優輝さん、さつきさん、由香里さんの順に次々と入室してくるので、「こんにちは」と互いに挨拶を交わす。


「やー、今日は唐揚げですか。美味しそうですねえ」


 優輝さんが嬉しそうに述べる。


「はい、ちょうど鶏肉が目についたものですから」


 応えながら、久美さんと手分けして配膳。


 「飲み物はわたしが配るね」と、由香里さんも配膳に加わった。


「あ、ビール頼むわ」


 当然のようにお酒を注文する久美さん。


「私は先ほどマスペをいただいたので、緑茶をお願いしていいですか?」


 「はーい」と、皆のリクエストに由香里さんが応えていく。


「いやー。五人暮らしには手頃なテーブルかと思ったんだけど、来客があるとすーぐ手狭になるよねー。もうワンランク大きいのに買い換えよっか?」


 優輝さんが満員のテーブルを見て所感をこぼす。たしかに、まりあさんや白部さんが来たときは無理やり椅子増やしてたものね。


「ん。そーゆーことなら賛成するよ。ウチもこんなに、人とのご縁ができると思ってなかったからなー」


 久美さんに続き、さつきさん、由香里さんも賛成する。


「そのうち、どっかのお城みたいな長~いテーブルまで行き着いたら面白いっすね」


「それはないと思うよ、さっちゃん」


 さつきさん渾身のボケを、真顔で潰す由香里さん。なんというボケ殺し。


「まああれだ、そういう積もる話は食べながらしよーぜ。いただきます!」


 皆も、久美さんに続いて「いただきます!」とごはんに手をつける。


「唐揚げ美味しいっすねー。これ、どちらの仕事っすか?」


「衣まぶすとこまでは共同作業。揚げたのは神奈サン」


「おお~。外はカリッ、中はジュワッってやつで、ほんと美味しいっすよ!」


 さつきさんのべた褒めぶりに、「いや~、それほどでも」と、照れつつ恐縮する。


「ということは、お味噌汁が久美さんかな? こっちも美味しいですよー」


 由香里さんが太鼓判を押す。かくてるハウスお料理ツートップの一角に称賛され、久美さんドヤ顔。


「みんなも美味しい?」


 子供たちに問うと、「うん!」「はい」と口々に答える。


 その後は、食事をしつつめいめいおしゃべりを楽しみ、楽しいひとときを過ごしました。


 食後は食洗機でまとめて洗い、三人娘にリビングでお勉強を教えたり、トランプで遊んで休憩したりしながら過ごし、夕食も担当&ご相伴させていただいてアメリと帰宅。疲れたけど、充実した一日を過ごしました。

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