「アメリちゃーん。九時になったら、お買い物行きましょーかー」
もっさもっさと、すっかり冷めたトーストをかじりながら、とっくに食事を終え、対面でテレビを見ている愛娘に呼びかける。
時刻は……この覚醒具合だと、まだ七時四十分ぐらいかなあ? ……ふわあ。
「おお~? スーパー?」
「うん。今、保存食しかないからね……ふわあ~」
このパンも、連休前に凍らせておいたものだ。それにしても、眠い。
「おおー! 久しぶりのスーパー楽しみー!」
わくわくアメリちゃん。ほんと朝から元気ねえ。羨ましいわあ。あふ……。
◆ ◆ ◆
いつものスーパーにとうちゃーく! 自転車に乗るのも久しぶりですねえ。
なんだか、アメリの猫耳に驚く人が若干減ってるような気がする。
さーて、これまた久々のチラシチェックでございます~。
うーん、今日は日配品だけかー。まあ、三種の神器買っていきたいからちょうどいいけど。
厚揚げは昨日食べたしな。お豆腐でお味噌汁でも作ろうかな。
あとは……店内を回って決めますか。
うろうろ。うろうろ。
てな具合に店内をうろついていると、鮮魚コーナーに着きました。
定番のマグロなんかのほかに、旬の魚が色々ありますなー。お、きびなーご! きびなごじゃないですか!
これ、唐揚げにすると美味しいのよね。よし、晩ごはんはきびなごの唐揚げで。
すると、付け合せは、キャベツ……リーフレタスなんかもいいなあ。よし、リーフレタスにしよう。
「アメリちゃん。今晩はこれを唐揚げにしようと思いますが、お昼は何かリクエストありますか?」
「何でもいいよー!」
満面の笑顔で、久しぶりの力強いお言葉。困ったね。
夜が油ものだから、何かさっぱりしたので……。よし、春雨のサラダを作ろう!
きびなごをかごに入れたら、青果コーナーでリーフレタスときゅうり買って、粉売り場で唐揚げの粉買って、乾物コーナーで春雨も。あとは、加工肉コーナーでハムをっと。
ラストに三種の神器! あ、そうだ。久々にマスペが飲みたいわね。コーラと一緒に買っていきましょ。
「アメリちゃん、コーラは買ってくけど、ほかに自分で何か買っておきたいものはある?」
「んー……特にない!」
ほいほい。そんじゃ、お会計ですねー。
◆ ◆ ◆
帰って荷物を冷蔵庫などにしまったあとは、さっそく着替えてお仕事! どんな辛いお仕事も~、愛しいアメリちゃんがいれば~、耐えられるので~す~よ~。
手をせわしなく動かす一方、陽気な脳内ソングを歌う。
すらすら。すらすら……。
ふー、少し肩が凝ってきたかな。
とんとんと、右肩を叩く。
「おねーちゃん! アメリがもんであげるー!」
「お、ほんと? ありがとー」
とてとてと歩み寄ってきて、両手でもみほぐしてくれるお嬢様。
「おぉ~……。効くぅ~。アメリちゃん、ありがとうねえ」
「どーいたしまして! あのね、クロがこうやってまりあおねーちゃんの肩、よくもんであげてるんだって!」
ほほー。さすがクロちゃん。
「子供たちの間で、いろんな話してるのねえ」
「うん!」
休憩中、ミケちゃんが最近由香里さんにお菓子作りを習い始めたことや、ノーラちゃんがお隣の庭を借りて、ミケちゃんと一緒に、ついに買ってもらった自転車の練習してたことなどを話してくれる。
へ~。連休前にそんなことやってたのねえ、あの子たち。
「ん。ありがとうアメリ。だいぶ肩が軽くなったよ。仕事に戻るね」
肩をぐりぐり動かす。実際、かなりいい感じ。
「はーい! 必要だったらまた呼んでねー!」
いやー、孝行娘だこと。いい子すぎて、逆に心配になっちゃうぐらい。ほんと、無理してないといいんだけど。
仕事もこなしつつ、アメリの様子にも気を配らなきゃね! 頑張るぞー! えい、えい、むん!
◆ ◆ ◆
ぬ。アラームが鳴りました! お昼を作る時間です!
「アメリちゃーん、お昼作りますよー」
「おおー? 今日もアメリが作るー」
いじっていたブロックを置き、すっくと立ち上がる彼女。
ふーむ。難易度の高い料理ではないけれど。
「おねーちゃんね、アメリと一緒に作れるとすっごく嬉しいなー」
目線を下げ、微笑みながら言う。
「おおー! じゃあ、一緒に作ろー!」
ういうい。アメリちゃんのプライドを傷つけず、うまく一緒に作る方向に持っていけました。
それじゃー、キッチンに行きましょー!
◆ ◆ ◆
さあさあ、調理開始と行きましょうか。レシピ動画と、いつもの脳内BGMスイッチオーン!
「アメリシェフ。シェフには、きゅうりとハムを切ってもらいたいのです」
「おおー! 任せて!」
「えっと……ちょっとだけ見本作るね。……こんな感じ」
冷やし中華に入れるような、ハムときゅうりの細切りを作る。
「これを、ハム四枚分と、きゅうり二本分ね」
「らじゃー!」
さて、あちらはお任せして、私は春雨を茹でませう。
熱湯をポットから注ぎ、沸騰させる。続いて、十センチ幅に切った春雨を投入~。タイマーセーット!
菜箸でかき混ぜながら、茹で上がりを待つ。この、柔らかくなっていくのが面白いよね、乾麺は。
タイマーが鳴りました! ザルに揚げて、流水で冷やし、ぬめりも取る。
「おねーちゃーん、できたよー!」
「はーい、お疲れ様ー。そこに置いといてー」
振り向き、笑顔を向ける。
「ねー、あとなんかできることなーい?」
んー? そうだなー……。
「ドレッシング作ってくれる?」
ちゃっちゃっと水をよく切りながら提案。
「任せて!」
「じゃあねー、ごま油、サラダ油、お醤油、お酢、お砂糖を、ボウルに小さじ四杯ずつ混ぜてくれる? 思い出せなくなったらもう一回訊いてね」
「はーい!」
調合を始めるアメリシェフ。
こちらは春雨をボウルに空けた後、キッチンペーパーで丁寧に水気とぬめり取り。
取れたら、ごま油で和えて、くっつきにくくする。
「できたー!」
ナイスタイミングです、アメリシェフ。一度も入れるもの訊き返してこなかったね。さすが、物覚えがいい。
「よーし。じゃあ、さっきのハムときゅうりをドレッシングで和えてくれるかな?」
「らじゃー!」
混ぜ混ぜする。
「いい感じだね。春雨入れますよ~」
春雨も投入し、さらに混ぜ混ぜ。
あとは、それぞれのお皿に盛って、炒り白ごまをまぶしたら……かんせーい!
「でっきあがりでーす!」
手をハイタッチの位置に構える。
「「いえーい!」」
パチン!
では、配膳して着席~。
「「いただきます!」」
つるる……うーん、美味しい! アメリシェフ、いい仕事してますね~。
「良く出来てるよー、アメリちゃーん」
「ほんと!? えへへ~」
嬉しそうに微笑む。誰が見ても可愛い。異論は認めません!
「あとでジュースも飲もうね。今回はジュースも飲んで、ちょうどいいぐらいの量だから」
「はーい」
低カロリーでお腹も膨れる。春雨って素晴らしい!
かくしてごちそうさま。アメリがまたも後片付けをしたいと言うので、お任せ。
無事すべて食洗機に入れたのを見届け、一緒に寝室に戻るのでした。
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