神奈さんとアメリちゃん

退会したユーザー ?
退会したユーザー

第二百二十一話 冬は鍋ですねえ

公開日時: 2021年5月2日(日) 22:01
文字数:2,823

 すいすい、すすすい~。


 下書き作業も順調! マイペースを維持できるのが私の強みだね~。


 背後をちらりと見ると、アメリちゃんも熱心に子供向け科学本を読みふけっていて良きかな良きかな


 現在お米の炊飯中。浸水作業と炊飯作業は手間っちゃ手間だね。私にとっては思い出の品だけど、アメリがお米炊くようになったら最新式のを買ってあげたほうがいいのかなー。


 お。お米のことを考えてたら、ちょうどアラームが。それじゃー、お料理タイムと洒落込みましょう!


「アーメリ。お料理しーましょ」


「はーい」


 本を閉じ、きちんと本棚にしまう彼女。


「お片付けできて偉いね~」


 頭を撫で撫ですると、「えへへ~」と嬉しそう。靴を脱ぎ散らかしていたあの子が、こんなに立派になって……。お姉さん、嬉しい!


 そんなアメリと、一緒にとっとこ台所に向かいました。



 ◆ ◆ ◆



 さーて、さてさて! それじゃあエプロン締めて、調理開始~!


「アメリちゃんも準備オッケーかなー?」


「任せて!」


 しゅびっと挙手する彼女。元気でよろしい!


 おなじみの脳内BGMをセットしましてっと。


「アメリシェフ、この中でビビッと来た食材を三つ選んでちょーだいな」


 鶏もも肉、白菜、おネギ、人参、えのき、春菊を並べる。


「おおー……。これとこれと、これ!」


 アメリが選んだのは、鶏もも肉と人参、おネギ。


「ほいほい。じゃあ、お肉は一口よりちょっと大きいサイズに、人参は皮を剥いて厚さ五ミリの輪切りに、おネギはいつもみたいに斜め切りにしてもらえる?」


「らじゃー!」


 およ。どこでラジャーなんて覚えたのかしらね? ゴッドレンジャーの影響とか?


 とりあえずあちらはアメリに任せて、私は白菜たちを攻略していきましょー。


 まず、白菜~。白いとこは三センチ、菜っ葉の部分は五センチ幅にさくさく。


 ……よし! 春菊は根っこを切り、残りを半分に。


 えのきも根っこを切って終了~。ふう、白菜以外はそんなめんどくさいことないね。


 さて、アメリちゃんの様子はどうかな?


「塩梅はどーう?」


「ここまでできたー」


 もも肉とおネギは切り終わり、人参の皮剥きなうね。


「そっちも後少しか。じゃあ、鶏肉でも煮てますか。もも肉、もらうねー」


 土鍋に水一リットル、料理酒百ミリリットル、鶏ガラスープ顆粒を大さじ二杯イン! で、これに鶏もも入れて強火でひと煮立ちさせるですよ。


 煮立ったら、丁寧にアク取りしながら中火でグツグツ。タイマーを十分じゅっぷんにセーット!


「おねーちゃん、できたー!」


「はーい、お疲れ様ー。そこに置いといてー」


 頭を撫で撫ですると、おなじみの「うにゅう」ボイスを上げる。


 アメリと雑談しながらアク取り、アク取り~。ふう、あっつい。


 お、やっとタイマーが鳴りました! 白菜の白いとこ、おネギ、人参、えのきを入れて蓋して五分放置~。


「ふー。アメリも、本当に料理手慣れてきたねー」


 彼女の隣に腰掛ける。


「おおー! 頑張ってる!」


「ほんと、頑張り屋さんですなあ」


 頭を撫でると、嬉しそうに「えへ~」と声を上げる。幸せ空間。


 しかし、成り行きで付けることになったケイティちゃんのヘアピン、こういう汗かく作業するときに前髪まとめられるのは意外と楽ね。今度から、料理のときは後ろ髪も縛ろうかな?


 アメリとおしゃべりしていると、タイマーが鳴りました。忙しないねー。


 蓋をぱかっと開けると湯気がむわっ。さつきさん、冬はこれ湯気が辛いってぼやいてたっけ。


 春菊と白菜の菜っ葉部分を入れて、再度蓋。今度はタイマーを三分にセット。そんじゃ、お米切りましょうか。


 休憩するほどの時間でもないので、再度着席してアメリとお話し。今日読んだ本の内容で、水の表面張力がとても興味深かったらしい。


 おっと、タイマーが。ふう、忙しいですなあ。ま、これで終わりだけどね。


 テーブルの鍋敷きの上に土鍋を載せ、ご飯をよそう。あとは、お茶をれて、小鉢とポン酢を用意したら準備完了~。


「はーい、できあがりですよー。それじゃあ、食べましょう」


 アメリの対面に着席。


「「いただきます!」」


 合唱し、小鉢に入れたポン酢をつけて白菜をぱくっ。うーん、美味しい! 冬の白菜はほんと美味しいわ~。


「おおー、鶏さん美味しい!」


 アメリちゃんはお肉からいきましたか。では、私も。うん、鶏の旨味がグー! これは箸が進む。


 鍋の中身はどんどん減っていき、ついにおつゆだけに。


「ふー。美味しかったね、アメリ!」


「うん!」


 やっぱ、冬は鍋ですねえ。良きかな良きかな


 今回、調味料は鶏ガラしか入ってないので、雑炊はちょっと無理だね。まあ、お腹いっぱいでこれ以上入らないけど。


 それじゃあ、お片付けしーましょ。



 ◆ ◆ ◆



 仕事をすいすい進めていると、LIZEのメッセージ着信が。あら、白部さん。


「こんばんは。明日、ノーラちゃんがそちらに行きたいと言っているのですけど、構わないでしょうか? 私も同行する形になりますが……」


「こんばんは。ちょっとアメリに訊いてみますね。お返事は通話で構いませんか?」


「はい。よろしくお願いします」


 背後を振り返ると、アメリは熱心にあめりにっき三巻ぶんの原稿を読みふけっていました。


「アメリー。明日白部さんとノーラちゃんが来たいってー」


「おおー! 楽しみー!」


 アメリが本から顔を上げ、キラキラ瞳を輝かせる。おっけー。では、お返事しましょ。


「どうも、お待たせしました。OKだそうです」


「ありがとうございます。ご都合の良い時間はありますか?」


「そうですねえ……。お昼ご一緒にいかがです? 十二時にいらしていただければ、ご用意しておきますよ」


「そんな、悪いですよ」


 恐縮する白部さんを、「まあまあ、せっかくですし」と押していく。私、ちょっと優輝さんに似てきたかも……。


「うーん、これ以上躍起になって断るのも失礼ですね。では、お昼ごちそうになります」


 良きかな良きかな


「腕によりをかけますね! そういえば、ノーラちゃんってミケちゃんやクロちゃんと、アメリを介さず遊ぶことはないんですか?」


「あ、いえ。彼女たちともよく遊んでいますよ。斎藤さんたちにも色々面倒を見ていただいてます。どうにもお邪魔してばっかりで、申し訳なく。うちが広ければ、こちらからもお招きしやすいんですけど……」


「まあ、家屋事情はそれぞれですからねえ。うちも1LDKですから、アメリとの二人暮らしに十分じゅうぶんとは言い難いですし。さすがにここに住むとき、猫耳人間になるとは予想できませんでしたからね」


「そうですね。私も、まさか当事者になるとは夢にも思いませんでした」


 ちょっと楽しげな白部さん。彼女にとって、猫耳人間との同居なんて、まさに夢のような出来事でしょうものねえ。


「では明日、朝一でスーパーでお菓子と飲み物を買っていきますね」


「お気遣いありがとうございます」


「いえいえ。お昼のお礼と思っていただければ。それでは、また明日。おやすみなさい」


「はい。おやすみなさい」


 通話終了。おっと、そろそろストレッチの時間だ。今日という日も、もう終盤戦だ。明日はどんな一日が繰り広げられるのかな?

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート