神奈さんとアメリちゃん

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第百八十一話 お手玉ならお手の物

公開日時: 2021年4月26日(月) 07:01
文字数:2,314

「ねえ! 何して遊ぶ!?」


 子供たちの遊びを見守りたいけれど、お仕事も大事なので聞き守る・・・・ことにしたワタクシ。それにしてもアメリ、みんなを誘っておいて、遊びの内容はノープランだったのね。


「あの、それだったらちょっと面白いの持ってきた……」


 口火を切ったのはクロちゃん。


「おお? 何それ?」


「お手玉っていうんだ。こうやってね……」


 お手玉とは、これまた古風な。でもそういうのすごく似合うよね、クロちゃん。


 少しすると、一同から「おお~!」と歓声が上がる。


 ちょっと気になったのでそちらに首を向けてみると、クロちゃんが四つのお手玉でそれは見事なジャグリングを決めてるじゃないですか! おお~、ほんと上手い!


「こんな感じの遊びなんだけど、八個持ってきたからみんなでやってみる?」


 クロちゃんの提案に、「やるやる!」の大合唱。良きかな良きかな


「えっとまず最初はね。片手だけで低く投げて、同じ手でキャッチするのやってみて」


 ちょっとだけ投げ上げて、それをキャッチしていく子供たち。


「ふふん。簡単じゃない! お姉ちゃんにお任せよ!」


 胸を反らし、ドヤ顔のミケちゃん。


「高さを上げると難しくなっていくよ。最終的に、自分の目の高さに上げたのをキャッチできるまで、少しずつ上げながらやってみて」


 言われた通りに徐々に高さを上げていくと、失敗率も上がっていく。


「むむむ……」


 ミケちゃんの表情が険しくなる。プライド高いからねー、彼女。


「最初は、無理しないのがコツだよ。できるようになったら少し、できるようになったらまた少しって、高さを上げていくといいよ」


 クロ先生指導のもと、挑戦していく子供たち。白部さんは、それを真剣な眼差しで見つめながらPCのキーを叩いている。


 おっと、ついお手玉に見とれてしまっていた。お仕事、お仕事!



 ◆ ◆ ◆



 しばしペンをすいすい走らせていると、「おー、ここまでできるようになったぞー!」とノーラちゃんの自慢げな声。「むう……妹には負けてられないわね!」「アメリも頑張る!」とミケちゃんとアメリの声がそれに続く。


 ちょいとそちらを見るとノーラちゃんが顎下ぐらいまでの高さに上げたお手玉を百%キャッチできるようになっていた。


「すごいね、ノーラ。運動神経いいのかな?」


 クロちゃんも目をくりくりとさせて感心している。アメリたちは、まだ肩口の高さが限界のようだ。


「ノーラちゃん、運動神経いいのかしらね……?」


 白部さんがつぶやく。


 久美さんとのキャッチボールの賜物だったり?


 あっといけない。お仕事に集中~!



 ◆ ◆ ◆



「おねーちゃーん」


「ほいほい、何かな?」


 唐突にアメリに呼ばれたので、そちらを振り返る。


「飲み物のおかわりってある?」


 ああ、そういえばグラスがみんな空になっている。


「あるよー。入れてくるね」


「おねーちゃんお仕事でしょ? アメリが入れてくる!」


 おお、なんと殊勝な心がけでしょう!


「じゃあ、お願いね。グラス落とさないように気をつけるんだよ」


「わかった!」


 アメリが空グラスの載ったトレイを手に後ろを通り過ぎていく。


 残りの三人がお手玉を続ける中、ややあってアメリが無事戻ってきました。


「はい、どうぞ。白部せんせーもどうそ」


「ありがとう。アメリちゃん、偉いわねえ」


 「うにゅう」という気抜け声が聞こえる。多分、頭を撫でられているのでしょう。子供たちも、アメリにお礼を述べる。


 お手玉は一旦休憩。私も、ちょっと休憩挟んだほうがいいな。


「白部さん、お隣失礼しますね」


 コーヒー牛乳入りの愛用のマグカップを手に、彼女の隣に腰掛ける。


「どうでしょう、白部さん。今日の成果は」


「そうですね、やはりみんな上達が早いと思います。特にキャッチボールのときも感じたのですけど、ノーラちゃんは運動神経が猫耳人間の中でも高いように感じます。これは、データ面でも計測されていることなのですけど」


「なるほど、そうなんですね」


 体動かすのが好きそうなタイプだとは思ってたけど、やっぱりというか。


 その後は子供たちのとりとめのない会話に聞き入りながら、白部さんの横でまったりと過ごす。


「でね、凄腕のボディガードが、なぜか女格闘家のコスプレするのよ」


 ミケちゃん、また変な映画の話してる……。


 さて、私も十分じゅうぶん休憩できたし、コーヒー牛乳のおかわりれてお仕事再開しますかー。



 ◆ ◆ ◆



 私と白部さんはお仕事、子供たちはお手玉に集中していると、白部さんが「そろそろクロちゃんは帰らないと、宇多野さん心配するんじゃない?」と声を上げた。


 彼女のほうを見ると、カーテンの隙間から陽の高さを見ているようだ。実際PCの時計を見てみると、五時に近い。いつの間にやらこんな時刻ですよ。道理で随分ページが進んだわけだ。


「もうそんな時間ですか?」


 クロちゃんも同様に、カーテンの隙間から空を眺める。


「ほんとだ。じゃあ、ボクはこれで失礼します」


「おおー。またねー、クロ!」


 アメリたちのお別れを受け、クロちゃんがお手玉を片付け立ち去ろうとしたので、門までついて行く。


「それじゃあ、クロちゃん。またね」


「はい。今日は楽しかったです」


 そういえば、お手玉始めたらみんな夢中になって、ぎくしゃくした空気どっか行ってたね。良きかな良きかな


 互いにお辞儀し、自転車で帰って行く彼女を手を振って見送るのでした。


 寝室に戻ると、三人は白部さんに教えられながら文字のお勉強。


 その後陽が沈みかかると、ミケちゃんと白部さんたちも帰って行きました。


「いやー、今日はにぎやかだったねえ」


 グラスを片付けながら、アメリに話しかける。


「うん! 楽しかった!」


 一時はどうなるかと思ったけど、元の鞘に収まって良かった良かった。


 さて、もうすぐ日が暮れるから、今日も車でお買い物かな。今晩は何を作ろうかなー。

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