神奈さんとアメリちゃん

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第四百三十九話 我が子の成長ぶりを思う

公開日時: 2021年12月19日(日) 21:01
文字数:2,641

「やったね、ノーラちゃん! 花マルだよ~」


 白部さんの明るい声が聞こえる。


「おー! やったぜ! ブンレッツに完全勝利だ!」


 これまた、嬉しそうなノーラちゃん。


「ひょっとして、割り算修了ですか?」


 首を向けて、話しかける。


「はい。本当に、猫崎さんのブンレッツ作戦のおかげ様で……」


 深々と頭を下げられてしまう。


「いやー、私はきっかけを出したに過ぎませんから。やはり、白部さんのお力と、ノーラちゃん自身の努力の賜物ですよ」


「ありがとうございます。今日は、鶏肉で何か作ってあげようね」


「ホントか!? やったー!!」


 バンザイノーラちゃんスタンプ状態。ほんとにチキン好きなんだね。聞くところによると、鶏肉は良質なタンパク質で、一流スポーツ選手も好んで食べるとか。


 あ、タンパク質といえば。


「ノーラちゃんって、納豆食べられる?」


「おー? たまに食べるよなー、ルリ姉」


「そうね。スポーツ始めたし、もっと出したほうがいいのかしら」


 さすがお医者様。私の言わんとすることが通じましたか。


「おねーちゃん、明日の朝は納豆ごはんにする?」


「あー、それもいいねー。じゃあ、明日は和食でお願い」


「らじゃー!」


 すっかり朝食担当が板についた我が娘。なんだか申し訳ない気持ちになるのは相変わらずだけど、本人は「楽しい」と言ってるので甘えていいのかな。


「ミケもアレよ。だし入り卵焼き作れるようになったわ!」


 ドヤ顔で胸をそらすミケちゃん。


「あら、すごいじゃない!」


「みんなも褒めてくれたのよ。美味しいって!」


「おおー、ミケすごい!」


 アメリに褒められ、鼻高々なミケちゃん。相変わらず、からの敬意がツボなようで。


「今度は、おにぎりかサンドイッチに挑戦するわ」


 一同、ぱちぱちと拍手。そういえば、料理の覚えがアメリより遅いことを気にかけてないな。こないだの一件で、優劣にこだわらなくなったのかな。


 実に幸せな空間だ。私のわがままとはいえ、うちを勉強会場にしていただいて、ほんと良かった。


「ノーラは料理覚えないの?」


 ミケちゃんが疑問を呈する。


「とりあえず、野菜切ったりして手伝ってるぞー。自分じゃまだ、料理らしい料理は作れないけど……」


 そういえば、うちに一日がけで来たとき、料理できないの気にしてたのが、包丁を使うきっかけだったっけ。


「猫崎さんのおかげですね。ありがとうございます」


「いえいえ。私なんて、大したことは教えてないですし。これも、白部さんのお力とノーラちゃんの努力の賜物ですよ」


 後頭部を撫でて照れる。


「あ!」


 白部さんが突然声を上げる。


「すっかりお料理の話に脱線してしまいましたけど、小二向け漢字のプリントいただけますか?」


「あ、はい。すみません。なんか、私が納豆の話をしたばかりに」


 プリンターから、漢字一覧が吐き出される。


「いえ、私こそ、ついつい。……ありがとうございます」


 白部さんにプリントを手渡す。


「脱線といえば、私もお仕事のこと、すこーんと頭から抜けてました。再開させていただきますね」


「お疲れ様です」


 こうして、それぞれの作業を再開。つい、寄り道しちゃうね。


 耳に聞く限り、アメリは、小数の足し算・引き算はほぼマスターしてる模様。すごいね、うちの子。そういえば、もうすぐT総かー。例の話特別カリキュラム、どうなるのかなー?


 今、白部さんをせっついても仕方ないよね。検査の日にお話をって、はっきり言われたし。


 とりあえず、別の話を訊こう。


「白部さん。アメリの小数が終わったら、次は何を勉強させるおつもりでしょう?」


「そうですね。小四漢字を教えようかなと」


「おおー。算数は、もうやらない?」


 アメリちゃんの、残念そうな声。


「これから算数では『文章題』っていうのやっていくから、漢字覚えたほうがいいかな」


「そうなんだー。頑張る!」


 気合を込めるアメリちゃん。クロ先生の二字熟語パズルが、一つ先のレベルに進むかな?


「むむ。アメリより早く覚えなくちゃね」


 対抗意識を燃やすミケちゃん。根っこの部分は、やっぱ変わらないか。でも、嫉妬心は見られないね。


「アタシも、エレメントレンジャーの本とか図鑑読めるように頑張るぜー!」


 ノーラちゃんも燃えている!


 クロちゃんは、さっきから黙々とお勉強してるね。もともと静かな子だもんねー。


 おっと。仕事に集中、集中!



 ◆ ◆ ◆



 夕刻。勉強会もお開きになり、三人を見送った後、アメリとクロちゃんを車に乗せて、一路宇多野家へ!


「ありがとうございました」


 クロちゃんが、ぺこりとお辞儀して、傘を開きながら降車する。


「忘れ物ない?」


「はい。では、失礼します」


 失礼しますとか、幼女の挨拶じゃないわね。ほんと、礼儀正しい子だこと。


「まりあさんにお菓子のお礼、後で伝えるね」


 門前で、もう一度私たちにお辞儀し、家へと入っていきました。


 では、わたしたちは「さわきスーパー」さんで、ごはんの材料の買い出しといきましょうか。進路変更もさせてもらわなきゃだしね。



 ◆ ◆ ◆



 晩ごはんを済ませ、仕事に取り掛かろうとすると、アメリちゃんが再び、妖怪・子泣きアメリに。


「えへへ~。続き~」


「ふふ、甘えんぼさん。おんぶしてあげよっか」


「おお~! してして!」


 愛娘を背負い、よっと! ……お? おおお?


「お、重……」


 ふらつきながらも、なんとか立ち上がる。


「おねーちゃん、だいじょーぶ? 降りよーか?」


「だ、だいじょぶ……せっかく背負えたんだし、頑張る」


 アメリちゃん、太ったようには見えないしなあ。単純に成長してるんだな。こういうことができるのも、あと少しか……。


 寂しくもあり、嬉しくもあり。


「背負って実感したけど、アメリもだいぶ成長したねえ」


「おお~。そうなんだ!」


「もうすぐ九歳だもんね」


 ゆらゆらしながら、対話。


「こういうことできるの、たぶん今のうちだから、甘えられるうちに甘えておいてね」


「わかった!」


 さらにしばし、ゆらゆら。


「おおう……お姉ちゃん、さすがに腰に限界が来そうです。ごめんね、降ろすよ」


「はーい。ありがとー」


 アメリをそっと降ろす。


 思えば、初めておんぶしたのが、風邪を引いたとき。あのときは、火事場の馬鹿力が出てたのかもしれないけど、こんなに重く感じなかったのになあ。子供の成長って、早いね。


「代わりに、ご本読んであげるね」


「うん! じゃあ、今日はこれにしてー」


 「くろねこクロのたび」最新巻を取り出す娘。もう、何度か読んでるよね。急かすわけじゃないけど、新作楽しみにしてます。


 ベッドで横になるアメリのそばに腰掛け、読み聞かせを始める。


 こうして、アメリにたくさん甘えてもらえて、大満足な私でした。

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