神奈さんとアメリちゃん

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第百七十二話 神奈、スキンシップする

公開日時: 2021年4月25日(日) 19:01
文字数:2,277

駅前の食事と栄養剤の購入から数日後、今日も今日とて下書きです。単行本表紙は裏表紙ともども着色が終わっており、あとはおまけを描いていけば単行本の作業は終了。


 栄養剤といえば、アンプル式のを買ったのだけど、すごい勢いでなくなっていくのね。でも、これで三週間ぐらい持つのだとか。


 しかし……なーんかこう、煮詰まってきたな。あ、行き詰まるのを煮詰まるっていうの誤用なんだっけ。まあいいや、細かいことは。


「アーメリ」


 くるりと椅子を回して、アメリのほうを向く。彼女はまたも、ブロックでよくわからないオブジェを作っているところだった。


「ん~? なーに?」


 手を止め、私と視線を合わせる。


「今、忙しい?」


「おねーちゃんが用あるならだいじょぶ~」


「じゃあ、おいで」


 ぽんぽんと膝を叩くと、ちょこんと腰掛けてきた。そんなアメリを、ぎゅっと抱きしめる。


 ああ、絶対マイナスイオン出てるよアメリ。落ち着くわー。


「ほっぺ、つんつんしていーい?」


「いいよー」


 つんつん。やーん、ぷにぷにしててやわらか~い。


「えへへ。アメリちゃんのほっぺ、柔らかいねえ」


 ああ、子供っていいな。柔らかくて、小さくて。


 ぷにぷに。ぷにぷに。ああ、仕事意識がどこかへ飛んでいってしまいそう……。いかん、いかん。


「ありがとうね、アメリ。お姉ちゃん、パワーもらいました!」


「おお~! よくわからないけど、良かった!」


 名残り惜しいけど彼女を膝から降ろし、PCと再び向き合うのでした。



 ◆ ◆ ◆



 そんなこんなで一日がつつがなく過ぎていく。お買い物はもう済ませちゃったし、アメリ成分も摂取したからかなり集中できましたよ!


 すると、スマホのアラームが鳴る。以前の失敗を踏まえて、ごはんの用意を始める五時に鳴るようにセットしたのです。


「よし、お米をお水に浸しましょう~」


 というわけで、キッチンで浸水用意完了!


「ねえ、アメリ」


 寝室に帰る途中、リビングで声をかける。


「なーに?」


「抱っこしていい?」


「おお? いいよー?」


 よっ! と、お姫様抱っこする。


「おお、重い~。やっぱりアメリ、成長してるねえ~」


 初めて松戸医院に連れて行ったときおんぶしたけれど、やはりあれからだいぶ重くなってる気がする。


 おんぶと抱っこでは労力が違うけれど、やはり子供の成長は早い。あれから四ヶ月だもんねえ、しみじみ。


「アメリ、私の首に腕回して。そのほうが楽だから」


「わかった!」


 首をホールドしてもらい、ゆらゆらと揺らす。重いけれど、それが嬉しい。アメリが元気にすくすく育っている証拠だ。


 そうやってしばらく過ごしていたが、さすがに腕が疲れたので下に降ろす。


「じゃあ、向こう寝室に戻ろうか」


「はーい」


 こうして、仕事とブロック遊びを再開するのでした。



 ◆ ◆ ◆



 今日の晩ごはんは、タラちり! 美味しくて 温まるねえ~。


「あ、アメリお弁当付いてるよ」


 唇のそばにお米が付いていたので、つまみ取ってぱくっ。


「おお~? お弁当?」


「口の周りに付いてるお米を、そう呼ぶんだよ」


 ふふと微笑む。


「ねえ、アメリ。あーんさせてあげていい?」


「おお? いいよー」


 タラをふーふーして、レンゲで彼女のお口に運ぶ。あーん、もぐもぐと食べるアメリ。


「美味しい!」


 キラキラ笑顔。良きかな良きかな


 なんだろうな、今日はアメリを構い倒したくて仕方がない。やっぱり、二ヶ月連続の繁忙期でストレス溜まってるのかしら?


 でも、アメリと戯れると本当に気持ちが軽くなる。それはもう、フワッフワなぐらい!


 アメリがいれば、本当にいくらでも仕事が頑張れる。


 楽しい食事も終わり、ごちそうさま。


 寝室に戻って、お仕事とお勉強を再開。アメリは、本日のブロック遊びを終わったようです。


 そして、七時半になったので、日課のストレッチ開始!


 ふう、お鍋ともどもかなり汗かいたなー。


「お風呂入りましょ」


「はーい」


 浴槽にお湯を張りながら、アメリの体をスポンジでごしごし。「おお~」と、気持ちよさそうな声を上げる。


 お湯が溜まってきたのでアメリを入れようとすると、「おねーちゃんの体、洗ってあげる!」と宣言。


「あら、洗ってくれるの? じゃあ、お願いしちゃおうかな」


 背中を向け、ボディソープの染みたスポンジを手渡す。


 ごしごし、ごしごし。あたた。


「アメリー、もうちょっと柔らかめでー」


 女の肌は敏感なのです。力を入れてこするのはNG。


「おお~……わかった」


 ごしごし、ごしごし。うん、いい感じ!


「いいよー。うん、ちょうどいい」


「えへへー。おねーちゃんの役に立っちゃった!」


 嬉しそうな声。


「前は自分でやるね」


 というわけで全身洗い終わり、湯船にざぶん。


 アメリが大きくなったら、こうやって二人で入るのも色んな意味で難しくなるんだろうな。そう考えると、ちょっと寂しい。



 ◆ ◆ ◆



 お風呂上がりに、またもお仕事再開。ところどころアメリとのスキンシップを挟んでいるおかげか、とくにつっかえずに描けている。やっぱり、息抜きって大事だな。


 しばらく打ち込んでいると、「ふわあ」とアメリの大あくびが聞こえてきた。時計を見ると、もうおねむの時間。


「ベッドに入りましょ?」


「うん……おお? おねーちゃんも、もう寝るの?」


 デスク以外の照明を落とし、一緒にベッドに入った私に、疑問を呈する彼女。普段なら、私は起きている時間だからだ。


「んー? アメリが寝付くまで、とんとんしてあげたいなって。ダメ?」


「いいよー。えへへ、嬉しいなあ」


 微笑む彼女。ああ、ほんとに天使。


 とんとんと優しく背中を叩いていると、間もなく彼女は眠りに落ちてしまった。


 おやすみ、可愛い可愛いマイエンジェル。この子を絶対に幸せにしてあげよう。そう改めて、心に誓うのでした。

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