駅前の食事と栄養剤の購入から数日後、今日も今日とて下書きです。単行本表紙は裏表紙ともども着色が終わっており、あとはおまけを描いていけば単行本の作業は終了。
栄養剤といえば、アンプル式のを買ったのだけど、すごい勢いでなくなっていくのね。でも、これで三週間ぐらい持つのだとか。
しかし……なーんかこう、煮詰まってきたな。あ、行き詰まるのを煮詰まるっていうの誤用なんだっけ。まあいいや、細かいことは。
「アーメリ」
くるりと椅子を回して、アメリのほうを向く。彼女はまたも、ブロックでよくわからないオブジェを作っているところだった。
「ん~? なーに?」
手を止め、私と視線を合わせる。
「今、忙しい?」
「おねーちゃんが用あるならだいじょぶ~」
「じゃあ、おいで」
ぽんぽんと膝を叩くと、ちょこんと腰掛けてきた。そんなアメリを、ぎゅっと抱きしめる。
ああ、絶対マイナスイオン出てるよアメリ。落ち着くわー。
「ほっぺ、つんつんしていーい?」
「いいよー」
つんつん。やーん、ぷにぷにしててやわらか~い。
「えへへ。アメリちゃんのほっぺ、柔らかいねえ」
ああ、子供っていいな。柔らかくて、小さくて。
ぷにぷに。ぷにぷに。ああ、仕事意識がどこかへ飛んでいってしまいそう……。いかん、いかん。
「ありがとうね、アメリ。お姉ちゃん、パワーもらいました!」
「おお~! よくわからないけど、良かった!」
名残り惜しいけど彼女を膝から降ろし、PCと再び向き合うのでした。
◆ ◆ ◆
そんなこんなで一日がつつがなく過ぎていく。お買い物はもう済ませちゃったし、アメリ成分も摂取したからかなり集中できましたよ!
すると、スマホのアラームが鳴る。以前の失敗を踏まえて、ごはんの用意を始める五時に鳴るようにセットしたのです。
「よし、お米をお水に浸しましょう~」
というわけで、キッチンで浸水用意完了!
「ねえ、アメリ」
寝室に帰る途中、リビングで声をかける。
「なーに?」
「抱っこしていい?」
「おお? いいよー?」
よっ! と、お姫様抱っこする。
「おお、重い~。やっぱりアメリ、成長してるねえ~」
初めて松戸医院に連れて行ったときおんぶしたけれど、やはりあれからだいぶ重くなってる気がする。
おんぶと抱っこでは労力が違うけれど、やはり子供の成長は早い。あれから四ヶ月だもんねえ、しみじみ。
「アメリ、私の首に腕回して。そのほうが楽だから」
「わかった!」
首をホールドしてもらい、ゆらゆらと揺らす。重いけれど、それが嬉しい。アメリが元気にすくすく育っている証拠だ。
そうやってしばらく過ごしていたが、さすがに腕が疲れたので下に降ろす。
「じゃあ、向こうに戻ろうか」
「はーい」
こうして、仕事とブロック遊びを再開するのでした。
◆ ◆ ◆
今日の晩ごはんは、タラちり! 美味しくて 温まるねえ~。
「あ、アメリお弁当付いてるよ」
唇のそばにお米が付いていたので、つまみ取ってぱくっ。
「おお~? お弁当?」
「口の周りに付いてるお米を、そう呼ぶんだよ」
ふふと微笑む。
「ねえ、アメリ。あーんさせてあげていい?」
「おお? いいよー」
タラをふーふーして、レンゲで彼女のお口に運ぶ。あーん、もぐもぐと食べるアメリ。
「美味しい!」
キラキラ笑顔。良き哉良き哉。
なんだろうな、今日はアメリを構い倒したくて仕方がない。やっぱり、二ヶ月連続の繁忙期でストレス溜まってるのかしら?
でも、アメリと戯れると本当に気持ちが軽くなる。それはもう、フワッフワなぐらい!
アメリがいれば、本当にいくらでも仕事が頑張れる。
楽しい食事も終わり、ごちそうさま。
寝室に戻って、お仕事とお勉強を再開。アメリは、本日のブロック遊びを終わったようです。
そして、七時半になったので、日課のストレッチ開始!
ふう、お鍋ともどもかなり汗かいたなー。
「お風呂入りましょ」
「はーい」
浴槽にお湯を張りながら、アメリの体をスポンジでごしごし。「おお~」と、気持ちよさそうな声を上げる。
お湯が溜まってきたのでアメリを入れようとすると、「おねーちゃんの体、洗ってあげる!」と宣言。
「あら、洗ってくれるの? じゃあ、お願いしちゃおうかな」
背中を向け、ボディソープの染みたスポンジを手渡す。
ごしごし、ごしごし。あたた。
「アメリー、もうちょっと柔らかめでー」
女の肌は敏感なのです。力を入れてこするのはNG。
「おお~……わかった」
ごしごし、ごしごし。うん、いい感じ!
「いいよー。うん、ちょうどいい」
「えへへー。おねーちゃんの役に立っちゃった!」
嬉しそうな声。
「前は自分でやるね」
というわけで全身洗い終わり、湯船にざぶん。
アメリが大きくなったら、こうやって二人で入るのも色んな意味で難しくなるんだろうな。そう考えると、ちょっと寂しい。
◆ ◆ ◆
お風呂上がりに、またもお仕事再開。ところどころアメリとのスキンシップを挟んでいるおかげか、とくにつっかえずに描けている。やっぱり、息抜きって大事だな。
しばらく打ち込んでいると、「ふわあ」とアメリの大あくびが聞こえてきた。時計を見ると、もうおねむの時間。
「ベッドに入りましょ?」
「うん……おお? おねーちゃんも、もう寝るの?」
デスク以外の照明を落とし、一緒にベッドに入った私に、疑問を呈する彼女。普段なら、私は起きている時間だからだ。
「んー? アメリが寝付くまで、とんとんしてあげたいなって。ダメ?」
「いいよー。えへへ、嬉しいなあ」
微笑む彼女。ああ、ほんとに天使。
とんとんと優しく背中を叩いていると、間もなく彼女は眠りに落ちてしまった。
おやすみ、可愛い可愛いマイエンジェル。この子を絶対に幸せにしてあげよう。そう改めて、心に誓うのでした。
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