神奈さんとアメリちゃん

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第二百七十話 ガーリック、みんなで食べれば怖くない

公開日時: 2021年6月24日(木) 21:01
文字数:2,060

「おねーちゃん、なんか機嫌いいね?」


 病院の待合でアメリに指摘され、はっとなる。今日は定期検査の日。八人で「T総」さんにやって来ています。今日のミケちゃんの付き添いは由香里さん。


「あ、いやごめん。そうよね。アメリこれから大変な検査受けるんだもんね」


 頬をぴしゃぴしゃ叩き、弛みを取る。「うにゅう?」と、その様子を不思議そうに見つめるお嬢様。


 いやね、もうアメリと距離取ろうとかややこしいこと考えなくていいかと思うと、嬉しくて嬉しくて。つい顔が……。


「神奈さーん、また緩んでますよー」


 由香里さんにそっと耳打ちされ、またもやはっとなる。どうも、私は極端から極端に行っていけないな。


 ちなみに状況は、まりあさんとクロちゃんが先に呼ばれていて、残り六人が順番待ち。


 ノーラちゃんのほうを見ると小刻みに震えていて、そわそわと落ち着きがない。それを白部さんが色々言い聞かせているところだけれども。やっぱり、アメリみたいに場数踏まなきゃ慣れないか。自分がノーラちゃんの立場だったらと考えると、落ち着きのなさもやむなしと思える。


 私たちも連れてきて付き添うのは大変だけど、実際に毎月何時間もいろんな検査をするこの子たちは本当に大変だ。自分が同じ状況になったら、音を上げるかもしれない。


 そう考えると、ノーラちゃんを含めてみんな強い子だなと思う。


「猫崎さん、採血室にお入りください」


「あ、ではお先に失礼します」


 残された四人に会釈し、アメリの手を引いて採血室に入る。


 初日、あれだけ怯えていたのが嘘のように落ち着いており、我が子の成長を噛みしめるのでした。



 ◆ ◆ ◆



「お疲れ様でしたー!」


 全員の検査が終わり、待合で再開。人が戻ってくるたびにこうして挨拶をする。


 この後は、子供たちの希望もありF駅前で食事とお買い物をしようというお話になっています。


 そんなわけで、一路F駅へ。まりあさんとクロちゃんは、由香里さんのバンに同乗なう。


 そして到着! やっぱり見慣れた風景は落ち着くなあ。


「今日はどこで食事する?」


「カタツムリがいい!」


 子供たちに問うと、アメリの元気な返事。ほかの子たちにも視線を向けると、みんなも異存なさそう。


 というわけで、おなじみのイタリアンファミレス「シャンデリア」さんへ。


 アメリの熱烈布教で皆でまずはエスカルゴ。ほかには、めいめいスパゲッティーを頼むことに。


「あら、これガーリック使ってますね」


 季節メニューのスパゲッティーを見ると、チーズをふんだんに使っていて美味しそうだけど、ガーリック使用とのことで肩を落とす。


「じゃあ、あえて頼んじゃいましょう」


 なんと、あの由香里さんが嬉々としてオーダー表に番号を書き込む。


 「じゃあ、わたしも」と、いかにもこういうのを頼まなそうな双璧のまりあさんまでオーダーを記入する。


「むむ。『ガーリック、みんなで食べれば怖くない』ですか」


 変な感心をしながら言うと、由香里さんとまりあさんが微笑み返す。それじゃあというんで、私と白部さんも同じのにしちゃいました。子供たちも、真似っこで同じのを頼み始める。謎の連鎖反応ね。


 そんなこんなで、食事も美味しく終了。息に気をつけないとなあ。でも、美味しかったー。エスカルゴたちも、仲良く私たちのお腹に収まり、アメリちゃん大満足。ほんと気に入ったのね。


 お腹もいっぱいになったところで、お店巡り。とりあえずほかならぬまりあさんとともに、「くろねこクロのたび」を買うべく「麗文堂本屋」さんへ。


 果たして児童書コーナーに、新刊が平積みされていました!


「どのぐらい売れてるんでしょうねえ?」


 心配そうにこぼす、作者ご本人。


「大丈夫ですよ。とりあえず、こうして三冊買いますし」


 笑顔で本を抱える私たち。それに応えて、「ありがとうございます」と微笑み返すまりあさん。


 第一目的をゲットした後は、児童書コーナーで本を物色。アメリからずいぶんいろんな知識本を所望されてしまったけど、愛しい我が子のためなら惜しみませんとも!


 クロちゃんは、児童書コーナーをスルーして「日本の名勝百景」なる写真集をおねだりした模様。相変わらず渋い……。ミケちゃんも、これまた児童書コーナーをスルー。アイドルグループ「NKM33」のセンター、「千多せんた」ちゃんの写真集を選んだみたいね。


 ノーラちゃんは、エレメントレンジャーの本を探したものの、悲しいかな、番組終了とともに書架から消えてしまった模様。泣きそうになるノーラちゃんを、必死になだめる白部さん。なんとかしてあげたいけれど、どうにもしてあげられないのがもどかしい。


 しばし二人で話し合った結果、新しい恐竜の本を買うことに落ち着いたようです。


 あとは、まりあさんが「亀池堂」さんに寄りたいものの、お待たせしても悪いのでとバスで帰られるとの旨をおっしゃられたけれど、そこは気の利く由香里さん。「わたしもみんなへのお土産買っていきますので」とお付き合い。そのようなわけで、私たちと白部さん組が一足先に帰途へ。


 途中でさらに進路をそれぞれ変え、私たちはせっかくなのでそのままいつものスーパーへ向かうのでした。

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