「みんなで、パン焼きませんか?」
きっかけは、春うららなある日の、由香里さんの提案でした。
ちょうど私も仕事が忙しくない時期で、ぜひぜひと快諾。
かくして、いつものメンバーで集まり、パン焼き大会と相成ったのです。
「というわけで、生地は発酵済みですから、あとはこねて形を作っていきましょう」
さすがクッキング女王。手際がいい。
「あの、食パン焼きたいのですけど、型ありますか?」
「はい。ありますよ」
「こういう集まりで、食パン焼くってのも珍しいっすね」
ははは。まあ、そうよね。
「うち、食パンの消費多いですから、実利を兼ねようと思いまして」
「なるほどっす」
さつきさんも、得心がいったご様子。
「アメリも食パン焼けばいい?」
「一斤あれば十分だと思うし、アメリは好きなの焼いていいよ。ねこさんパンとか、可愛いんじゃないかな?」
「おお!」
アメリちゃんも、「これ!」と決めたようです。
「チョコペンあるから、お顔描けるよ」
「おお~!」
さすが由香里さん、ソツがない。
「まりあさんのは……あんこですか?」
まりあさんが袋から取り出した缶詰を、尋ねる白部さん。たしかに、あんこだ。
「ええ。アンパンを作ろうかと思いまして。クロちゃんが好きなんです」
へー。
「パンじゃ、酒のアテにならんよなあ」
「お酒から、たまには離れてくださいよ」
ぼやく久美さんに、苦笑しながらツッコむ優輝さん。珍しい構図だ。
「友美も、ねこさんパン作るの?」
「うん!」
「じゃあ、お母さんも同じのにしよっと」
お隣りの近井さん親子も、アメリと同じものを作る模様。ともちゃん、ほんとアメリ好きよねえ。
「ルリ姉、アタシらは何にするー?」
「ノーラちゃん、チキン好きでしょう? 照り焼きマヨチキンパンとかどうかなって」
と、鶏肉を取り出す白部さん。
「おー!」
「というわけで、調理器具と調味料、お借りしてもよろしいでしょうか?」
「はい。お好きなように、お使い下さい」
由香里さん、笑顔で快諾。
優輝さんは、王道を行くロールパン。さつきさんと久美さんは、バインミー用のフランスパンを焼くことにした模様。
各自目標が決まったところで、調理開始!
といっても、私はこねて、型にはめるだけなのよねー。というわけで、アメリの監修。
「由香里おねーちゃん、チョコジャムある?」
「あるよー。中に入れるのかな?」
「うん!」
おお。やりますねえ、我が娘。
というわけで、チョコジャムを中に入れ、ねこさんを形作っていくアメリちゃん。
「おお、上手上手~」
「えへへ。でしょー」
得意げなのが可愛い。
そして、ケイティちゃんをチョコペンで描いていく。おお、そっちにいきましたか。
近井さん親子も、それを見て路線変更。
そして、だいたいみんな作り終わり、かくてるハウス名物・特大オーブンで焼成。
腰掛けておしゃべりしつつ、焼き上がった人から取り出していく。
う~ん。この、焼き立てパンの匂い、たまらないね!
冷めるのを待って、実食タイム! といっても、私の食パンはお持ち帰り用だけど。
「なんだかすみませんね。ごちそうになるだけの形で」
「いえいえ。ご遠慮なく」
白部さんからチキンパンをいただき、はむっ! あーん、ホカホカで美味しい~! お肉もジューシィ!
「美味しいです~!」
アメリと一緒に称賛。
「ありがとうございます」
微笑む白部さん。良き哉良き哉。
ノーラちゃんは、例によって「うめー」シャウト。
「わたしたちの、アンパンもどうぞ」
まりあさんからも、おすそわけ。
「ありがとうございます」
これまた美味!
「美味しいです!」
またもや、アメリと一緒になって称賛。「ありがとうございます」と微笑むまりあさんと、はにかむクロちゃん。
なんだか、ごちそうになってばかりで悪いなあ。今度、何かお返ししよ。
「おねーちゃん、アメリのもー」
おお、そうでしたそうでした。肝心の、愛娘の手作りパンをいただきましょー。
ぱくっ……甘ーい! 美味しい~!
「グーよグー! 最っ高!」
「おお! 良かった!」
そう言って、自身も自作のパンを美味しそうに食べ始める。
「バインミーは、お腹に入るっすかね?」
「あーすみません、さすがにお腹がきついですねえ」
「じゃあ、フランスパンだけでも、お土産にどうぞっす」
というわけで、フランスパンをいただいてしまいました。
こうなると、私の食パンを、我が家にそのまま持って帰るのも悪いので、切り分けて、全部皆さんにおすそ分けしました。予定は未定ってね! ちゃんと出来てると、いいんだけど。
優輝さん、由香里さん、近井さんからもパンをお土産にいただき、春のパンまつりはお開きとなりました。ちなみに由香里さんのは、ホイップクリームとブルーベリージャムのパン。
楽しかった~!
「また、みんなでやりましょう」と約束し合い、帰途につくのでした。
良き哉良き哉。
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