今日も、庭の隅のお花を手入れ。お花の天敵・アブラムシ対策に、このお庭にはてんとう虫を放っている。
おかげで、お花もすくすく元気! バラ、シャクヤク、カーネーションといった、色とりどりなお花がとてもきれい。
お水をあげ終え、一休み。背後を見ると、クロちゃんも松風くんの手入れの真っ最中。
「順調?」
近づき、声をかける。
「うん。どうかな?」
松風くんを見せてくる、我が子。
立派で、美しい枝振り。そして、無駄がない。
「いいね。とてもよく出来てると思う」
「ありがとう。今日の手入れはこんなものかな」
はにかむクロちゃん。
この子の控えめな笑顔は、本当に可愛い。
「お茶にしましょうか」
「うん。お茶が終わったら、将棋しないと」
そんなことを言いながら、屋内に戻るのでした。
◆ ◆ ◆
「おまちどう様」
「ありがとう、お姉ちゃん。今日は、栗羊羹だ」
栗羊羹は、クロちゃんの好物の一つ。これと、濃いお茶を一緒にいただくのが、この子は大好きで。
「「いただきます」」
二人で、和菓子切りをすっと入れ、それを刺して羊羹を口に運ぶ。
甘い。心に染み渡る、ぎゅっと詰まった甘さ。これに、濃いお茶がとても合う。
「美味しい……」
クロちゃんも、とても満足そう。
そんな彼女を見て、ふふと微笑む。
実家で保護した、野良猫だったこの子。見たまんまでクロと名付け、それはもう、とてもとても可愛がった。
小学校以来の動物飼育は大変だったけど、同時にすごくやりがいもあって。
そんなこの子が、虹の橋を渡ったときは、それはそれは悲しかった。初めて経験するペットロスは、とても辛いものだった。
でも、クロちゃんは、今の姿になって帰ってきた。そのときの喜びは、言葉でも絵でも、とても表現しきれない。
もちろん、猫耳人間であることを隠しながらの生活は大変だった。クロちゃんが発熱したとき、連れて行った松戸内科・小児科医院で、人間食が大丈夫なこととかを知り、ずいぶん助かったっけ。
昔のクロちゃんは、今じゃ考えられないぐらいの人見知りだった。戸成さんといったご近所さんにも、引っ込み思案で。猫だった頃から、こんな感じだったなあ。
そして、わたしとクロちゃんのやや閉じた世界に、神奈さんとアメリちゃんが現れる。
初めての、猫耳人間仲間。とても嬉しくて、心強かった。秘密を共有できる仲間ができるというのは、とても大事なことだと実感した。
それからは、わたしたちのご縁も、どんどん広がっていったね。
優輝さんたちのバーベキューパーティーに誘われてお酒で失敗したり、白部さんが実は、ちょっと変わった方だったり。近井さんとも仲良くなって。
クロちゃんも、お友達との交流を通じて、人見知りを少しずつ克服していった。
この子の将来の夢を決定づけたのが、フリマで出会った将棋セット。
あれから将棋に夢中になり、戸成さんとよく指すようになって。
そして、猫耳人間が周知されて……。今、この子は学校に通いながら、棋士を目指している。
「夢、掴めるといいね」
頭を撫でると、つやつやの髪が心地良い。
「うん、ボク頑張るからね」
凛々しく気合を入れるクロちゃん。
わたしも、「くろねこクロのたび」の執筆を頑張ろう。二人で、たくさんの人に、夢をプレゼントしようね。
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