神奈さんとアメリちゃん

退会したユーザー ?
退会したユーザー

おまけ編・その四 まりあさんとクロ

公開日時: 2022年4月29日(金) 21:01
文字数:1,308

 今日も、庭の隅のお花を手入れ。お花の天敵・アブラムシ対策に、このお庭にはてんとう虫を放っている。


 おかげで、お花もすくすく元気! バラ、シャクヤク、カーネーションといった、色とりどりなお花がとてもきれい。


 お水をあげ終え、一休み。背後を見ると、クロちゃんも松風盆栽くんの手入れの真っ最中。


「順調?」


 近づき、声をかける。


「うん。どうかな?」


 松風くんを見せてくる、我が子。


 立派で、美しい枝振り。そして、無駄がない。


「いいね。とてもよく出来てると思う」


「ありがとう。今日の手入れはこんなものかな」


 はにかむクロちゃん。


 この子の控えめな笑顔は、本当に可愛い。


「お茶にしましょうか」


「うん。お茶が終わったら、将棋しないと」


 そんなことを言いながら、屋内に戻るのでした。



 ◆ ◆ ◆



「おまちどう様」


「ありがとう、お姉ちゃん。今日は、栗羊羹だ」


 栗羊羹は、クロちゃんの好物の一つ。これと、濃いお茶を一緒にいただくのが、この子は大好きで。


「「いただきます」」


 二人で、和菓子切りをすっと入れ、それを刺して羊羹を口に運ぶ。


 甘い。心に染み渡る、ぎゅっと詰まった甘さ。これに、濃いお茶がとても合う。


「美味しい……」


 クロちゃんも、とても満足そう。


 そんな彼女を見て、ふふと微笑む。


 実家で保護した、野良猫だったこの子。見たまんまでクロと名付け、それはもう、とてもとても可愛がった。


 小学校以来の動物飼育は大変だったけど、同時にすごくやりがいもあって。


 そんなこの子が、虹の橋を渡ったときは、それはそれは悲しかった。初めて経験するペットロスは、とても辛いものだった。


 でも、クロちゃんは、今の姿になって帰ってきた。そのときの喜びは、言葉でも絵でも、とても表現しきれない。


 もちろん、猫耳人間であることを隠しながらの生活は大変だった。クロちゃんが発熱したとき、連れて行った松戸内科・小児科医院で、人間食が大丈夫なこととかを知り、ずいぶん助かったっけ。


 昔のクロちゃんは、今じゃ考えられないぐらいの人見知りだった。戸成となりさんといったご近所さんにも、引っ込み思案で。猫だった頃から、こんな感じだったなあ。


 そして、わたしとクロちゃんのやや閉じた世界に、神奈さんとアメリちゃんが現れる。


 初めての、猫耳人間仲間。とても嬉しくて、心強かった。秘密を共有できる仲間ができるというのは、とても大事なことだと実感した。


 それからは、わたしたちのご縁も、どんどん広がっていったね。


 優輝さんたちのバーベキューパーティーに誘われてお酒で失敗したり、白部さんが実は、ちょっと変わった方だったり。近井さんとも仲良くなって。


 クロちゃんも、お友達との交流を通じて、人見知りを少しずつ克服していった。


 この子の将来の夢を決定づけたのが、フリマで出会った将棋セット。


 あれから将棋に夢中になり、戸成さんとよく指すようになって。


 そして、猫耳人間が周知されて……。今、この子は学校に通いながら、棋士を目指している。


「夢、掴めるといいね」


 頭を撫でると、つやつやの髪が心地良い。


「うん、ボク頑張るからね」


 凛々しく気合を入れるクロちゃん。


 わたしも、「くろねこクロのたび」の執筆を頑張ろう。二人で、たくさんの人に、夢をプレゼントしようね。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート