さて、どう進めるか……。よし。
「シロちゃんが通りを歩いていると、路地から子供の悲鳴が聞こえるよ!」
「「助ける!」」
即答する、アメリちゃんとノーラちゃん。
「クロちゃんとミケも、それでいい?」
「状況がわからないから、せめて路地の様子を教えて」
「右に同じ」
クロちゃんとミケはやや冷静だね。
「じゃあね。こう、大きな曲がった剣を持った盗賊風の男が、シロちゃんよりさらに幼い少年に斬りかかろうとしているよ」
「「助ける!」」
満場一致。
「OK。じゃあ、ソードステッキの魔法剣で、華麗に男を一撃で倒しました! シロちゃん強いね! 少年は、『ありがとう、お姉ちゃん』とお礼を言うよ」
「どーいたしまして! えーと、この子のこと、訊くのでいい?」
アメリちゃんお提案に、三人が頷く。
「『ぼくはヒカル! 盗賊は、この宝石を狙ってたみたいなんだ』」
「それはどうしたの?」
尋ねるクロちゃん。いちいち同意を取るのもあれだし、進めちゃおう。
「『山の洞窟で拾ったんだ』。宝石は、得も言われぬ不思議な輝きを放ってるね」
「鑑定魔法とかないのかしら?」
発想がゲーム的だね、ミケ。でも、渡りに船だ。
「宝石には、邪悪な魔法を封じる力があるみたいだよ」
一同から、「おお~!」と声が上がる。感嘆しつつも、マシュマロ焼いてるノーラちゃんが、微笑ましいな。
「みんなも、せっかくだからマシュマロ食べてね。あたしも焼こうっと」
マシュマロを炙る一同。
「さて、ヒカルから宝石を預かり、悪の魔法使いの城にやってきました!」
スマホを見るとだいぶ時間が押してるので、一気に話を進める。
「おお? ヒカルくん置いてきちゃったの?」
「ほら、危ないじゃない」
ナイスフォロー、ミケ。
「で、魔法で作られた兵士たちをバッタバッタと倒していくと、宮殿の奥に、悪の魔法使いが!」
再び、一同「おお~!」とアメリちゃん化。
「『こしゃくな小娘め! 我が魔法をくらえ!』 電撃が放たれるけど、宝石の力で消滅したよ」
さらにまた、「おお~!」
「さあ、みんな! 邪悪な魔法使いを倒すチャンスだ!」
「アタシが決めていいか!?」
興奮して、産院を見回すノーラちゃん。一同、頷く。
「必殺! シャイニングブレード!!」
「『ぎゃーっ!』 魔法使いは、黒い霧となって消滅したよ! こうして、ネズミにされた人は元に戻り、川は水でうるおい、世界に平和が戻ってきました! シロちゃんはみんなの英雄だ!」
パチパチと拍手すると、四人も拍手する。
「ヒカルくんに、お礼言わないと!」
おお。出しといて、当のあたしが忘れてた。
「『おねえちゃん、ありがとう!』」
「ううん、お礼を言うのは私のほうだよ!」
「ねえねえ!」
ノリノリアメリちゃんの横から、ミケが呼びかける。
「将来、二人は結婚したっていうの、どうかしら!」
「おー! ハッピーエンドだな!」
「賛成!」
「ボクも」
いい感じにまとまったね。
「では、シロちゃんとヒカルくんは将来を誓い合い、大人になって結婚しました。その後、二人には娘が生まれ、その子にソードステッキは受け継がれたのです。めでたしめでたし」
一同から、拍手をもらう。スマホを見ると、八時ちょっと前。なんとか間に合ったな。
「今日は、おはなし会に付き合ってくれてありがとうね。あたしは後片付けしなきゃだから、クロちゃんは、由香里かさつきに送ってもらおう」
電話で相談すると、由香里が快諾してくれた。
「由香里が車出してくれるよ。テーブルとか、軽くどかさないとな」
互いに、「今日はお疲れ様でした!」と挨拶を交わし、アメリとノーラちゃんは自宅へ。ミケは、出てきた由香里と入れ替わりに、屋内へ。
車に乗って去っていくクロちゃんに、手を振って見送る。
今日は楽しかったな。またやりたいな。
うーんと伸びをしてから、片付けを始めるのでした。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!