神奈さんとアメリちゃん

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おまけ編・その十五 マシュマロと語り部 ―後編―

公開日時: 2022年6月1日(水) 21:01
文字数:1,532

 さて、どう進めるか……。よし。


「シロちゃんが通りを歩いていると、路地から子供の悲鳴が聞こえるよ!」


「「助ける!」」


 即答する、アメリちゃんとノーラちゃん。


「クロちゃんとミケも、それでいい?」


「状況がわからないから、せめて路地の様子を教えて」


「右に同じ」


 クロちゃんとミケはやや冷静だね。


「じゃあね。こう、大きな曲がった剣を持った盗賊風の男が、シロちゃんよりさらに幼い少年に斬りかかろうとしているよ」


「「助ける!」」


 満場一致。


「OK。じゃあ、ソードステッキの魔法剣で、華麗に男を一撃で倒しました! シロちゃん強いね! 少年は、『ありがとう、お姉ちゃん』とお礼を言うよ」


「どーいたしまして! えーと、この子のこと、訊くのでいい?」


 アメリちゃんお提案に、三人がうなずく。


「『ぼくはヒカル! 盗賊は、この宝石を狙ってたみたいなんだ』」


「それはどうしたの?」


 尋ねるクロちゃん。いちいち同意を取るのもあれだし、進めちゃおう。


「『山の洞窟で拾ったんだ』。宝石は、得も言われぬ不思議な輝きを放ってるね」


「鑑定魔法とかないのかしら?」


 発想がゲーム的だね、ミケ。でも、渡りに船だ。


「宝石には、邪悪な魔法を封じる力があるみたいだよ」


 一同から、「おお~!」と声が上がる。感嘆しつつも、マシュマロ焼いてるノーラちゃんが、微笑ましいな。


「みんなも、せっかくだからマシュマロ食べてね。あたしも焼こうっと」


 マシュマロを炙る一同。


「さて、ヒカルから宝石を預かり、悪の魔法使いの城にやってきました!」


 スマホを見るとだいぶ時間が押してるので、一気に話を進める。


「おお? ヒカルくん置いてきちゃったの?」


「ほら、危ないじゃない」


 ナイスフォロー、ミケ。


「で、魔法で作られた兵士たちをバッタバッタと倒していくと、宮殿の奥に、悪の魔法使いが!」


 再び、一同「おお~!」とアメリちゃん化。


「『こしゃくな小娘め! 我が魔法をくらえ!』 電撃が放たれるけど、宝石の力で消滅したよ」


 さらにまた、「おお~!」


「さあ、みんな! 邪悪な魔法使いを倒すチャンスだ!」


「アタシが決めていいか!?」


 興奮して、産院を見回すノーラちゃん。一同、うなずく。


「必殺! シャイニングブレード!!」


「『ぎゃーっ!』 魔法使いは、黒い霧となって消滅したよ! こうして、ネズミにされた人は元に戻り、川は水でうるおい、世界に平和が戻ってきました! シロちゃんはみんなの英雄だ!」


 パチパチと拍手すると、四人も拍手する。


「ヒカルくんに、お礼言わないと!」


 おお。出しといて、当のあたしが忘れてた。


「『おねえちゃん、ありがとう!』」


「ううん、お礼を言うのは私のほうだよ!」


「ねえねえ!」


 ノリノリアメリちゃんの横から、ミケが呼びかける。


「将来、二人は結婚したっていうの、どうかしら!」


「おー! ハッピーエンドだな!」


「賛成!」


「ボクも」


 いい感じにまとまったね。


「では、シロちゃんとヒカルくんは将来を誓い合い、大人になって結婚しました。その後、二人には娘が生まれ、その子にソードステッキは受け継がれたのです。めでたしめでたし」


 一同から、拍手をもらう。スマホを見ると、八時ちょっと前。なんとか間に合ったな。


「今日は、おはなし会に付き合ってくれてありがとうね。あたしは後片付けしなきゃだから、クロちゃんは、由香里かさつきに送ってもらおう」


 電話で相談すると、由香里が快諾してくれた。


「由香里が車出してくれるよ。テーブルとか、軽くどかさないとな」


 互いに、「今日はお疲れ様でした!」と挨拶を交わし、アメリとノーラちゃんは自宅へ。ミケは、出てきた由香里と入れ替わりに、屋内へ。


 車に乗って去っていくクロちゃんに、手を振って見送る。


 今日は楽しかったな。またやりたいな。


 うーんと伸びをしてから、片付けを始めるのでした。

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