神奈さんとアメリちゃん

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第百六十三話 いっぱいになるお腹と、子供たちのお財布

公開日時: 2021年4月25日(日) 14:31
文字数:2,048

「ピザ焼けましたー! 皆さん、こちらへどうぞ~!」


 優輝さんがダイニングからひょっこり顔を出し呼びかけてくるので、皆でぞろぞろとそちらへ移動する。しかし、オール帰省から帰った翌昼にはピザを作れる状態になってるんだから、行動力高いなあ。


 アツアツの湯気を立てているピザの具は、ベーコン、ポテト、オニオン、コーン。それに、何やら赤いソースがかかっている。


 はて、このソースは一体何でしょう? トマトソースなら、普通は生地のほうにかけるよね? まあ、食べてみればわかるでしょう。


 さすがにもう何度も会食してるので、優輝さんも全員の飲み物の好みを把握しており、それぞれの好物が配られる。


「あ、先にいただいてていいですよ」


 飲み物を配りながらそうおっしゃるので、皆で「いただきます」とお先にいただくことに。


 ぱくっ……あ、サルサソースだこれ! へー、サルサソースのピザとかちょっと面白い。


 優輝さんも自分の紅茶を注ぎ終わったので、エプロンを外して着席し、いただきますを言う。


「サルサソースのピザって、ちょっと面白いですね」


 素直な感想を述べる。


「でしょう? タコスに合うんだから、ピザにも合うよねって試してみました」


「はい、美味しいです」


 ノーラちゃんは、相変わらずの「うめー!」連呼。ほほえま。


 あ、ノーラちゃんといえば。


「白部さん、ご実家にノーラちゃん連れて帰られましたよね? ご家族、どんなご反応でした?」


 アメリと私の両親との出会いについては先ほどの雑談で話したし、まりあさんも優輝さんも娘が猫耳人間と暮らしているのは親御さんはきっとご存じ。そんなわけで、白部さんご一家の反応が気になった次第。


「うちの家族ですか? 仕事が仕事なので、特に驚かれなかったですね。ノーラちゃんが猫耳人間になったことと、連れ帰ることは事前に話しておきましたし」


 あらまあ。私だけがいたずらっ子ね、これじゃあ。ま、そんな子供っぽいムーブするの私だけよねー。まったく、このアラサー女ときたら……。


 自分にツッコミを入れつつ、ピザをはむはむ。あー、ほんのり辛くて美味しい。アメリも美味しそうに食んでいて、意外と辛いの平気みたいね。


 しかし、この辛さとマスペの甘さが実に合う。口が幸せ~。


 みんなピザを食べ終わり、ごちそうさま。続いて子供たちに、リビングでお年玉をあげる運びになりました。


「はい、ミケちゃん、クロちゃん、ノーラちゃん。お年玉~」


 三人娘に、ポチ袋を手渡す。キラキラ瞳を輝かせ、お礼を述べるミケちゃんとクロちゃん。良きかな良きかな


「おー? 何だこの紙ー?」


「それ、お札っていうお金ね。そのうち使い方教えてあげるから、大事に取っておきましょう。とても大切なものだから、猫崎さんにお礼きちんと言いましょうね」


「わかった! ありがとー、カン姉!」


「いえいえ、どういたしまして」


 ふふ、ほほえま! 早く、お金の使い方覚えられるといいね。


 一方アメリも大人組からお年玉をもらい、さらに増えた英世先生に「おおおおお……!」と震えながら、皆さんにお礼を述べる。


「いやー……。あげる側になると、ほんとお正月が大ピンチっすねー」


 とほほ気味なさつきさん。お財布が厳しいって、クリスマス前に言ってたものね。


「ちびっこの一大イベントに、ケチくさいこと言うんじゃないよ。ほら、思い出せよ。お年玉ではしゃいでた、あの日々をさ」


 久美さんが、さつきさんの背中をぽんぽんと叩き慰める。


「そっすね。これが大人になるってことなんすね……!」


 芝居がかった仕草で、ぐっと気合を入れるさつきさん。


「なんだか名残り惜しいですけど、そろそろお開きですね。久しぶりに皆さんにお会いできて、楽しかったです」


 情感を込めて、ややしんみりとこぼす。


「そうですね。まあ、今生の別れというわけでもないですし。また、何かしら集まりましょう!」


 ウィンクしつつサムズアップする優輝さん。


「はい。ところでミケちゃんたち。ちょーっとお願いがあるんだけど……」


「あーはいはい、ぎゅーっね。ミケは構わないわよ」


 相変わらず、ぶれない白部さん。クロちゃん以外の子供たちは、全員白部さんにハグされてしまいました。ノーラちゃんとか、自宅でハグされまくりなんだろうなー。


 こうして楽しい会合も終わり、お土産の山を持って自宅へ。その後、ほかのご近所さんにも皐月ヶ浦さつきがうら煎餅を配り歩く。


 そして、そのたびにアメリのお財布は膨れていき、感謝を述べつつも震えまくる彼女でありました。


「お、おお、おねーちゃんどうしよう! お金たくさん!」


「うんうん、大事に取っておこう。そういうのはね、いざっていうときに使うのよ」


「おお~……」


 寝室で小刻みに震える彼女に、お年玉の心得を教える。


「さて! もうすぐ四時だね。久々にいつものスーパー行こっか!」


「おお~!」


 気を取り直し、拳を突き上げるアメリ。アメリにも私のお古じゃなく、そろそろきちんとしたお財布買ってあげたほうがいいね。とりえず、持ち過ぎなお金はデスクの鍵付きの引き出しにしまってあげましょ。


 では、参りましょー! おなじみのあのスーパーへ!

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