五時を迎え、勉強会もお開き。
雨天につき、夏場なのにこの時刻でも薄暗い。
「それでは、お邪魔しました」
「みんな、またなー!」
「バイバイ! また、お勉強したり遊んだりしましょ!」
白部姉妹とミケちゃんを見送り、ふうと一息。我々のような気軽な仲でも、来客ってのは神経を使うもので。まあ、喜びのほうが大きいんだけどね。
「じゃ、送っていくね」
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げるクロちゃん。アメリと三人でガレージに向かいます。
では、宇多野家へ~!
◆ ◆ ◆
「本当に、ありがとうございました」
深々とお辞儀するまりあさん。
「いえいえ。これぐらいお安いご用です。むしろ、アメリも喜んでましたし、私自身も色々深い話ができて楽しかったです」
「そう仰っていただけて、ありがたいです。では、雨中お引き止めしても良くないので」
「はい。私たちは、せっかくだから『さわき』さん、でしたっけ? あちらのスーパーに寄っていこうと思います。では、また。失礼します」
双方再度お辞儀し、二人ともお別れ。
炊飯はすでに用意してあるし、今日は何作ろうかなっと。
◆ ◆ ◆
さーて、とうちゃーく!
このお店、雨だからか前みたいに、外にじゃがいもとか出してないな。とりあえず、中に入りましょ。
で、チラシチェーック!
ナスなど夏野菜。あとは旬の魚がお安い! 特にホッケは、食べ出があるおっきいやつだ!
うわあ、これは言葉通りサカナにして日本酒をキュッといきたくなってしまう。でも、お仕事あるのに飲んじゃダメよね。
普通に、ごはんのおかずにしましょう。
おナスも買いたいな。煮浸しもいいし、焼いてもいい。でも……。と、鮮魚コーナーを見ると、こりゃほんとに立派なホッケだ。これ一品でおかず足りちゃうな。
よし、ナスはお味噌汁の具に決定! 万能ねぎの調理済みパックと一緒に買っていこう。
今夜はこれで決まり!
お菓子は今日いっぱい食べたけど、明日以降、子供が遊びに来たときのために、予備に定番のクッキーでも買っとこう。……いや、たまにはチョコ菓子にしてみるか。チョコパイ買いましょっと。
飲み物は……ペットボトルのなら、すぐに飲まなきゃいけないこともないし、コーラとマスペを買っとこう。
さて。夕飯とお菓子関係はこれでいいとして……。
「アメリちゃん、明日作りたい朝食って決まってますか?」
「おおー、ミートソースにしようかな……」
ふふ。ともちゃんの大好物だね。アメリもハマったか。
「麺も缶もあるから、特に買わなきゃいけないものはないか……。あ、輪切りのおナス、炒めて入れると美味しいよ」
「ほんと!? じゃあ、使わせて!」
ほいほい。すると、おナスは明日の朝食にシフトだね。味噌汁の具は、薄揚げにでも変えましょうか。
それでは、お会計~!
◆ ◆ ◆
帰宅後、二人でホッケとお味噌汁を美味しく食べました。脂がのった大ホッケをシェアして、ふたりとも大満足。大根おろしあると良かったんだけどね。持て余しちゃうのよねえ。
片付けと歯磨き後、PCでLIZEをチェックすると、白部さんがさっそく、「子供が覚えやすい、興味を持ってもらえる勉強法」について、皆さんとご相談されてました。
「こんばんは」とご挨拶すると、みんなからご挨拶を返される。そうそう。このチャット、スマホ入手以来、ミケちゃんとクロちゃんも参加しています。
現在、当事者である子供二人、あとはチャット外だけど、ノーラちゃんの意見を白部さんの伝聞で汲みながら、勉強法を模索してるようで。
クロちゃんは、いかにも授業然とした方法でも苦にならないみたいだけど、ミケちゃんはどちらかというと、ノーラちゃん寄り。もっと楽しく、学びたいようだ。
私がアメリに使った、クレヨンやブロックを用いた方法は、小数の授業ではちょっと使えない。いや、使えないこともないけど、やはり直感的ではないというのが正確か。
「ミケちゃん。小数って、整数から位が下がっただけって言ったらピンとくる?」
「んー……?」
と、悩み猫スタンプ。ピンときませんか。
まあ、足し算・引き算やってるうちはまだいいけど、位が下がっただけと覚えさせると、きっと掛け算や割り算で混乱するよね。あまり、いい方法ではないか。
背もたれに体重をかけ、後頭部で指を組みつつ、天井を見つめ思案。うーん……。
「ミケちゃんは、いまどこらへんで躓いてる?」
考えても何も出てこなかったので、姿勢を正してインタビュー。
「足し算と引き算はなんとかなってる」
あ、なるほど。授業がわからないのではなく、機械的な学習法が単に面白くないってことか。これは勘違い。
「クロちゃんはどう?」
「ボクは今、五年の漢字のほうをやってるので……」
ふむ。
「アメリー。今日の勉強会で、わかりにくいなーとか、そういう部分あった?」
「おお? 特になかったよ。でも、ノーラが爆発しそうで心配だった!」
ふむ。アメリちゃんも、授業然としたのに苦手意識なくなったのか。偉いなあ。
でも、ノーラちゃんの苦手ぶりは今日見ての通りだな。解決は、ミケちゃん以上に急務だ。
「白部さん。ノーラちゃんの学力って今どのぐらいですか?」
「割り算で躓いてます。猫崎さんのクレヨン法で、概念はわかったみたいなんですけど、モチベーションの問題のほうが大きいみたいで。漢字は、エレメントレンジャーの本読めるよって言うと、興味持ってくれるんですけど」
ノーラちゃんも、メンタルのほうが問題か。
「うーん、すぐには新しい提案ができなそうです。私も仕事に戻らなければいけないので、このへんで一度お暇しますね」
お疲れ様でしたや、またねーなど、お別れの言葉を受けてフリアト起動。
ふう。我々大人にも、難しい宿題が出ちゃったなー。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!