真留さんが来た翌十時。松戸医院で抗体検査のための採血をしてきました。結果はマル。というわけで、来週BCGを接種することに。
アメリはきちんと注射を我慢してくれて、思いっきり抱きしめ、頭を撫でてあげました。良き哉良き哉。
「ウェイラン」で雑多な買い物を済ませ、帰る頃にはもうお昼どき。特にすぐ消費しなきゃいけない食材もないしと、せっかくだから通り道である国道交差点の角にあったイタリアン・レストランに入ってみることにしました。
お店の名前は「マンマ・トラットリア」で、チェーン店みたい。メニューを見ると少々価格はお高めで、ファミレスよりワンランク上っぽいね。内装もオシャレで、結構高級感が。
「アメリー。何にする?」
席に案内された後、メニューを手渡し一緒に眺める。
「ランチもあるんだ。でも、スパゲッティーとかにパンまで付けたらアメリには食べ過ぎになっちゃうねー」
とか言いながら、私はイカスミスパゲッティーのランチに決めてたり。
「んー……これ!」
アメリはちょうどいい感じにあった、「お子様プレート」を指差しチョイス。チキンライス、エビフライ、ハンバーグ、フライドチキン、ジュース、プリン……。一つ一つは少量だけど、なかなか豪勢。
「こういうの、ちゃんとあったんだ。ちょうどいいねー」
というわけで、オーダー。ランチには、パンのほかにドリンクも付いていてアルコールも頼めるけど、車だからNG。というわけで、カプチーノをホットでいただきましょう。
◆ ◆ ◆
おしゃべりに興じていると、やって来ましたお昼ごはん!
「おお~。いっぱいあるねー」
写真通りに種々多様な品々に瞳を輝かせるアメリ。
さっきのおしゃべりでもやや明るい感じだったし、少しずつ上り調子になってるみたいね。
「おねーちゃんの、何それ? 真っ黒だね……」
続いて、私のイカスミスパゲッティーを見て目をくりくりと見開き驚く。初見びっくりするよね、これ。
「イカって墨を吐くんだけどね。その墨を使ったソースのスパゲッティーなの。おいしいんだよー。後でひと口分けてあげるね」
「おお~。そめごろうすごいなー。そんなことができるんだ……」
なぜか、そめごろうに感心するアメリ。アメリの中では、そめごろうは大変だったりすごかったり忙しいね。ほほえま。
さてさて、早速いただきましょうか。私がいただきますと言うと、アメリも続く。
うん、イカスミってほんとコクがあるよねー。これ食べようって思いついた人、ほんと尊敬するわ。
前に某ファミレスで食べたイカスミスパゲッティーは実にぱっとしなかったけど、ここのはお高いだけあってきちんとしてる。
「アメリ、美味しい?」
「うん!」
アメリも元気にエビフライをはむはむ。アメリが元気だと、私まで元気が湧いてくるね!
「はい、あーん」
アメリが自分のぶんを食べ終わったので、最後にフォークに巻きつけたスパゲッティーを差し出す。
ちょっと、ちゅるっと音を出しちゃったけど、もぐもぐごっくん。「美味しい!」と瞳を輝かせる。
「うん、うん。美味しいでしょ」
和やかな雰囲気で食事終了。残ったカプチーノを飲み干し、ごちそうさまでした!
◆ ◆ ◆
家に帰った後は、LIZEの確認。あ、真留さんから修正後プロットOKのお返事が来てる。
では、ネームに取り掛かりますか。すいすいと筆を走らせていると、肩をちょんちょんと突かれた。
「どうしたの、アメリ?」
「えっとね。文字を覚えられたか知りたいの」
胸元で、「くろねこクロのたび」第一巻を抱えている。
ふむ。お仕事も大事だけど、前向きになってくれたアメリの心意気を汲まないとね!
「よーし。じゃあ、声に出して読んでみて」
一緒にベッドに腰掛ける。
「あるところに、クロというくろねこのおんなのこがいました」
出だしから読み上げていくアメリ。うん! すごい! ちゃんと読めてる!
「こうして、クロはたびにでることにしたのです」
「おっけーおっけー。一旦ストップね。あんまり一気に読むと疲れちゃうから。すごいよアメリ、全部ちゃんと読めてる!」
キリのいいところで休憩。
「ほんと!?」
お陽様のような笑顔。ああ、やっぱりアメリには笑顔がサイコーに似合うなあ!
「うん、うん。すごいよ、ほんとすごい!」
ぎゅーっと抱きしめて頭を撫で撫ですると、「うにゅう」という、おなじみの気の抜けた声を上げる。
ああ、可愛いな。愛しいな。嬉しいな。とろけちゃうな。ほんとに、私にとってアメリはすべてなんだ。
ずっと、こうしていたい。でも、それじゃお仕事にならないよね。真留さんや読者さんたちも、大切な存在だし。
むむむ……。断腸の思いで、アメリのホールドを解除!
「ごめんね、アメリ。もっと一緒にいたいけど、お仕事しなきゃ。でも、いつでも呼んでね」
ほっぺたにキスをして、仕事机に戻る。そういえば、猫時代はよくお口にちゅっちゅしてたけど、今のアメリにやるのは、ほっぺたでもちょっとこっ恥ずかしいな。やだ、今さら頬が熱くなってきちゃった。でも、アメリカなんかでは普通のスキンシップよね、うん!
……とか考えてないで! 集中、集中!
なんだかへんてこな気持ちになりながら、筆を走らせるのでした。
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