神奈さんとアメリちゃん

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第百七十八話 アメリの手料理

公開日時: 2021年4月25日(日) 22:01
文字数:2,607

優輝さんには連絡済み。今日はミケちゃんも一緒だし、気合い入れて作りましょうかねー。


「おねーちゃん!」


 冷蔵庫の中を眺めていると、不意にアメリが話しかけてきたのでそちらを見る。


「なーにー?」


「ごはん、アメリが作りたい!」


 あら。唐突だけど、結構な心構えね!


「うん。じゃあ今日の料理はアメリちゃんに作ってもらおうか。ただ、メニューと材料は私が決めるけどいいかな?」


 こないだ、やっと目玉焼きを覚えたばかりのアメリに全権を委ねるのは、さすがにできない。


「うん!」


 元気にうなずく彼女。隣のミケちゃんを見ると、期待に輝く目でアメリを見つめている。


 今日はちょっと凝ったものにしようと思ったけど、こうなるとシンプルな料理がいいね。


 よし、これにしよう。


「それじゃあ、今日はベーコンスクランブルエッグと、トマトときゅうりのサラダにしましょうか」


 冷蔵庫から材料を取り出し並べていくと、アメリがマイエプロンを締める。


「そうだなー……先にサラダから作っちゃおうか。アメリ、まずはきゅうりを洗って、薄く斜め切りにしよう」


「はーい!」


 言われた通りに切る彼女。さすがに包丁は結構扱い慣れてきたのか、割とスムーズに切れた。「上手上手!」と褒め称える。


「よし、先っちょは捨てちゃってね。次は、トマトをいつも私がやってるみたいに、六つに切ろう」


 これも、割とスムーズに……はいかず、ちょっと切断面が乱れてしまった。まあ、柔らかいからね。とはいえ、「その調子!」と褒めるのを忘れない。


「あとは、これをきれいにお皿に盛り付けよう」


 三人分の小鉢を用意すると、アメリシェフがせっせと並べていく。「いいよいいよー!」とまた褒める。


「さあ、ここからが難しいよ! まずはボウルに、卵を三つ割り入れよう」


 こんこん、かしゃと、卵を割り入れる彼女。やはり殻が少し入ってしまったので、菜箸で取るよう指示する。「そのうちもっと上手になるよ!」とフォロー。


「よし。じゃあこれを、菜箸でかき混ぜよう!」


 かしゃかしゃとかき混ぜていくアメリちゃん。「いいよー、その調子!」と褒めるのを忘れない。


「いいね! 次はフライパンに油を引いて、中火で加熱しよう」


 言われた通りに加熱。「その調子だよ!」とまた褒める。


「次に、ベーコン六枚を焼こう。火を通しすぎないようにね。」


 じゅうううと、べーコンをフライパンに並べていく。いやー、火を使わせるのは緊張するわー。ともかく、「いいよー!」と合いの手を入れる。


「胡椒を軽く振りましょう。……うん、そんな感じ。じゃあ、そろそろひっくり返そう」


 たどたどしいながらも、なんとかひっくり返していく彼女。良きかな良きかな。「お上手!」とこれまた褒め言葉。


「よし、そろそろいいかな。一旦火を止めて、ベーコンを二枚ずつお皿に空けよう」


 よいしょよいしょと移していくアメリ。「うんうん、上手い上手い!」と褒める。


「次は、もっかい中火にして、フライパンにさっきの卵を流し入れてかき混ぜよう! こっちも軽く胡椒を振ってね。あまり火を通しすぎるとボソボソした感じになるから注意ね」


 さーっと流し入れ、胡椒を振った後、うんしょうんしょとかき混ぜるアメリシェフ。「いいよー、上手いね!」と褒め褒めモード。


「よし、火を止めて! あとは三人分にベーコンのお皿に分けてね」


 フライパンを回しながら、少しずつ量を合わせていく。おお、最初からその発想ができるとは。……かんせーい!


「すごいよー、アメリちゃん! よくできました!」


 頭を撫でると、「うにゅう」という弛緩した気抜け声を上げる。すごく緊張しながら作ってたんだろうな。


「さあ、あとはベーコンスクランブルエッグにケチャップを、サラダにマヨネーズを掛けたら完成だね! これはみんな好みがあるだろうから、それぞれ好きなようにかけよう」


 パンのレンチンと配膳は私が務める。最後に紅茶をれ、着席。アメリもエプロンを外し、ミケちゃんお隣に着席した。


「それじゃあ、いただきます!」


 二人も、「いただきます!」と続く。


「美味しい!」


 キラキラ瞳を輝かせるミケちゃん。


「おお~、ありがとー!」


「これ、アメリの手料理なのよね。うふふ、アメリの手料理かー」


 ほんわかモードで上機嫌なミケちゃん。ぷんすかしながらうちに来たのが嘘のようね。


「あのね、おねーちゃんとミケに食べてもらいたいから、一所懸命作った!」


「そっかー。ありがとう、頑張ったねー」


 アメリに微笑むと、「うにゅう」と照れくさそうにうつむく。あら、ミケちゃんも恥ずかしそうにうつむいてもじもじしちゃって。ほほえま!


 お昼も美味しく食べ終わり、私は仕事、アメリたちは遊びに戻る。食洗機ってほんと便利ね!


 ミケちゃんの乱入という珍事はあったものの、仕事自体は至ってスムーズに進んでいる。このペースが維持できれば、単行本の全余白におまけを入れられそうだ。


「でね、お尻の怪獣がね……」


「おお~……」


 ミケちゃん、また変な映画の話してる……。もう、私もアメリも慣れたものだけど。


 こんな感じで時間は過ぎていき、ミケちゃんはとっくり陽が沈むまで遊んでいきました。


「それじゃあ、アメリ。ミケちゃんを送りましょ」


「はーい!」


「う~、もっとアメリと遊んでたいなあ……」


「流石にこれ以上はちょっとね。優輝さんたちも心配するし。お姉ちゃんなんだから、心配かけちゃダメよ」


「そ、そーよね! お姉ちゃんだものね! わかったわ!」


 というわけで、三人でお隣へ。


「はーい……あ、こんばんは! 今そちらに行きます!」


 インタホンを押すと優輝さんが応対に出て、ややするとロックを外した門までやって来た。


 「こんばんは」と、アメリと一緒に挨拶する。ミケちゃんは「ただいま」。


「アメリちゃんもこんばんは。そしてお帰り、ミケ。すみませんね、今日はミケがとんだご迷惑を。お昼までごちそうしていただいて……。この埋め合わせはいずれ」


「いえいえ、埋め合わせなんてそんな。かえって二人の仲が深まったようで、良かったです」


「そうですか? 恐縮です」


 背の高い優輝さんが、縮こまる。


「そうですねえ……。では、また楽しいパーティーやイベントにお誘いください。それが、とても楽しみですから」


「そういうことでしたら、お任せを!」


 ドンと、自分の胸板を叩く彼女。


「では、買い出しと仕事が残っているので失礼します」


「はい。今日は、本当にありがとうございました」


 互いに深く礼をし、別れを告げる。


 さて、着替えて買い出しに行きましょ~。

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