神奈さんとアメリちゃん

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第四百十七話 学ぶって、本来楽しいこと

公開日時: 2021年11月25日(木) 21:01
更新日時: 2021年12月22日(水) 18:30
文字数:2,811

 朝、アメリちゃん謹製のナスミートソース・スパゲッティーを、美味しくも極めてスローモーにいただき、やっと脳が覚醒して参りました。


 本当は、アツアツのうちにズバババっと食べ切ってあげたいけれど、どうにもこうにも朝の弱さだけは……。私は、これと一生付き合っていくんだろうなあ。


 覚醒後やることは、まずニュースとLIZEのチェック。ニュースのほうは、まあ、あまり楽しい出来事はない。芸能人の入籍がおめでたいぐらいか。肝心の人権法については……。これといってなし。


 一応、昨日までの中継を聴いていた限り、徐々にではあるけれど、前に進んでいるのは確か。白部さんの答弁で、反対派議員が軟化したのがやはり大きい。


 ただ、それとは別に慎重は要するようで、戸籍、年齢のみなし、学校での扱いなどなど、決めなければいけないことが多い。


 猫耳人間に共通して、「成長が早い」というのがあるようだけど、たとえば転生時に八歳とみなして、いきなり小学校に放り込んだら、相互に混乱を起こすだろう。


 今のアメリたちは、私やまりあさんたちが人間としての生き方や勉学を独自に教えてきたからこそ、現状こうあるわけで。ほかの猫耳人間のメンタリティや学力はわからないけれど、一律に扱うのも難しいはずだ。


 とりあえずこれに関しては、私の立場では、白部さんを通じて要望と所感を出すぐらいしかできない。やはり、遠隔地の保護者の方々と、詳しく話し合ってみたいという気持ちがある。私の知る四人以外の猫耳人間たちは、どんな感じなのだろう?


 まあ、これについては現状コミュニティの設立を進めるというぐらいしかないな。繁忙期を抜けたら手を付けたい。


 というわけで一度置いといて、「楽しいお勉強」についてだけど……。LIZEのチャットログを追うと、あれから皆さん色々話し合っていたようだけれど、やはりいい知恵は出なかったようで。


 考えてみれば、私たちがちょっと考えたぐらいで実現できれば、学習教材の会社の人とか苦労しないわよね。


 むう。


 実際振り返ってみれば、私の学んできた勉強も、学年が進むごとにむやみに堅苦しくなっていったよね。「動く点P」とか、古文とか、色々と厄介だったなあ。


 そう考えると、福井で体験したような科学館の職員さんたちは、あの手この手で難解な科学を楽しく魅せることに、どれだけ腐心しているかがわかる。


 む?


 ここに立ち返ってみるのはどうだろう。


 「小数や割り算を楽しく覚えさせる」のではなく、「そもそも学ぶって、こんなに面白いことなんだよ」って、ノーラちゃんやミケちゃんにまず味わってもらう。


 うん、いい着眼点なんじゃないかしら!


 よし、さっそく打診だ!


「おはようございます」


 熟考モードを解除し、ROM読み専から一転、まずはご挨拶。皆さんも、ご挨拶を返してくれます。ミケちゃんとクロちゃんも。


「皆さんの話し合いを追っていて、思ったことがあるんです。まず、『学ぶって楽しいことなんだ』っていうスタート地点に立ってもらうのはどうでしょう?」


「へ? だから、その話をしてたんでしょ?」


 ミケちゃんが、悩み猫スタンプとともに書き込む。


「ううん、もっと根本的な部分。福井で科学館やディノ・ミュージアム行ったでしょう? あれ、楽しかったよね?」


「ええ、すごく面白かったわ。けど、どう関係が?」


 ミケちゃん、応じつつもまだ腑に落ちない様子。


「つまりね、学ぶってほんとは楽しいことなのよ。それまでわからなかったことが、わかるようになる。それはとても楽しいことなはず。そこから再スタートしてもらいたいなって」


 ミケちゃん、ポンと手を打つ猫のスタンプを無言で貼る。意図が伝わったようだ。クロちゃんも、うなずき猫スタンプをぺたり。


「白部さん。今の話、ノーラちゃんにもしてみていただけますか?」


「はい!」


 方向性が固まりつつある。進むだけが勉強じゃない。一度、「知識が身につく楽しさ」という本質に帰ることも大事なんだ。


 白部さんを待つ間、残りのメンバーで、「じゃあ、どうしたら楽しいか?」という問題を議論する。


 ノーラちゃんは恐竜やかっこいい動物、エレメントレンジャーが好きだ。後はサッカーを筆頭にスポーツ。


 ミケちゃんは、アイドルグループ「NKM33」。特にそのセンター「千多せんたちゃん」に憧れていて、歌とダンスが好き。


 このへんを、上手く盛り込んでいきたい。お、一つひらめいたぞ。


「久美さん。ミケちゃんのために、勉強が楽しくなる歌って作れません?」


「ふえ? 相変わらず突飛なこと言うねえ、神奈サンも。でも、言わんとすることはわかるよ。可愛いミケ子のためだ。一肌脱ごうじゃないの。優輝たちも協力しろよ?」


「もちろんですとも! 愛しい我が娘のためですからね!」


 さつきさん、由香里さんもご同意。


「お待たせしました。楽しんで覚えること自体は、やぶさかではないみたいですよ」


 白部さん帰還! では、ノーラちゃん向けプランというと……。


「私、ああいう特撮って見たことないからわからないんですけど、エレメントレンジャーに分裂する怪獣とかいたりします?」


「あー、エレメントレンジャーに出てくるのは本来、怪獣というより怪人ですね。『バッドキング』は、たまたま手頃な怪獣のおもちゃを手に取っただけでして。あの頃は、私もそういうの疎かったですから」


 なるほど。


「では、怪人として、分裂したりするのいません?」


「……あー。一回、出てきたことありますね!」


「それ、使えないでしょうか」


「いけるかもしれません!」


 サムズアップ猫スタンプをいただく。


「分裂だと数が増えてしまいますけど、そのぶん、ちっちゃくなるとかなんとかで、どうでしょう」


「なるほどなるほど。でも、小さいフィギュアを今から何体も集めるのは大変ですねえ。食玩のおまけとかになりますから」


「画像をいただければ、コピーして切り抜きますよ」


 ポンと手打ち猫スタンプをいただく。


「その発想はありませんでした! それなら、私にもできそうです!」


 結局、ノーラちゃんのほうは、割り算をどうするかに回帰してしまったけど、これも、「そもそも、勉強自体を楽しんでもらうには?」という原点に、一度立ち返ったから出たアイデアだ。


「それでしたら、わたしがやりましょうか?」


 そこで名乗り出たのが、まりあさん。


「でも、ノーラちゃんのことですし……」


 白部さん、ちょっと困惑。


「わたし、勉強会に関してお世話になる一方で、何も助力できてませんから、力にならせてください」


 ううむ、そこを気に病んでしまうあたり、まりあさんだなあ。


 白部さんの応答が止まったので、どうしたものかと悩まれているのでしょう。


 「まりあさん、こういうのしっかりしたがるたちですから、望むままにさせてあげていただけませんか?」と、こっそり個別チャットで彼女に打診。


「わかりました。怪人の画像を、後で送らせていただきますね。ありがとうございます」


 よし、あとは久美さんの作曲・作詞待ちかー。とりあえず、一段落かな!

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