今日は、お昼下がりにかくてるハウスでのお茶会に招かれています。まりあさんとクロちゃんもお招きされており、優輝さんがバンで運んでくださったとのこと。
由香里さんは、現在何かお菓子を焼いているところ。ものは、「できてのお楽しみ」だそうで。
久美さんは自己ノルマを、あとちょっとだけやっつけたらリビングにいらっしゃるとのことで、自室で機材相手に格闘中。
「どうぞっす」
さつきさんが、紅茶とチョコレートを勧めてくれる。ダイエット中の身の上だけど、それは私の都合なわけで、ご厚意を無下にするのは良くない。というわけで、いただきましょ。
「いただきますね……あら、独特な風味がして美味しいですねえ」
まりあさんが先鞭をつける。うふふと微笑みながらご満悦のまりあさん。へえ、私も食べよっと。
もぐもぐ……あれ、これひょっとして……?
「あの、さつきさん。これお酒入ってません?」
どうみても、お酒の味がする。
「うん、これ入ってるくさい」
優輝さんも同意。
「え? あ! ほんとだ、入ってたっす! これはうっかりしてたっす! すんませんっす!」
空箱の成分表を確認して、謝罪するさつきさん。アメリ、クロちゃん、ミケちゃんにストップをかける。
って、お酒? お酒×まりあさん……これは……。
「うふ、うふふふふふ……」
うわー! 出てしまった、笑い上戸モード!
「あー、なんだかすごく楽しいです~。歌でも一曲歌いたい気分」
頭を抱える私と優輝さんとさつきさん。そこに、のんきに久美さんがイン。
「ちーっす。やっとひと仕事片付いたぜー……ってさつきお前、それウチが食べようって思って買ってきたやつじゃん! あーあー……」
なるほど。久美さんの私物、だからイコールお酒入りだったのね……。久美さんも、まりあさんの様子を見て事態を察したようで、頭を抱える。
「あた! すんませんっす! 無造作に置かれてたから、お出ししていいものかと……」
「お前ね、確認取れよ! あー、もう!」
おなじみのチョップを、肩口にもらうさつきさん。そして、くすくす笑い続けるまりあさん。カオス。
「そうだ! 今日ってばあの日じゃない! ちょっとお出かけしてきま~す。うふふふ」
するとまりあさんがおもむろに立ち上がり、バッグを持って玄関に向かう。
「あ! あたしが付き添いますんで」
優輝さんが、慌てて後を追いかける。何しに行く気だろう……。
◆ ◆ ◆
二十分ほど経ち、ご機嫌モードでコンビニの買い物袋を下げているまりあさんと、やたら疲弊している優輝さんが帰還。ここからコンビニまで片道徒歩五分のはずだけど、道中何があったのやら……。
「じゃーん! 今日はパッキーの日! みんなでパッキーゲームしーましょ!」
めっちゃいい笑顔で、チョコ菓子・パッキーを袋から取り出すまりあさん。パッキーは、持ち手の部分以外がチョココーティングされた、棒状のビスケット。
で、それを両端から食べていくというのがパッキーゲームなんだけど……。いい歳した大人がやるのは、いかがなものでしょ。私、高校時代に友だちと悪ふざけでやったのが最後ですよ?
「はーやーく! はーやーく!」
パッキーを手に、これまたむっちゃいい笑顔で催促してくるまりあさん。圧が強い。
「じゃあ、くじ作るっすね」
いそいそと、くじ引き用のくじを作り始めるさつきさん。圧に屈しましたか……。いや、どちらかというと彼女、「あちら側」の人だったっけ。これは喜んでやっている!
もはやこの「まりあ空間」に逆らえる者はおらず、皆で諦めてくじを引く。
「同じ色の人がペアっす~」
私は赤。
「赤の人ー」
「おお~!」
アメリが赤い先端のくじを持って挙手。あら、これはちょっとありがたいかも。
「えーと、私が片方くわえて食べ始めるから、アメリは反対側から食べていってね」
「おお~!」
ふたりでくわえて、こりこりと食べ始める。うわー、照れくさい。わ、ちょっとキスしちゃった。うにゅう~……。
「あうー、恥ずかし~!」
「おお~! パッキーゲーム面白い!」
瞳をキラキラ輝かせるアメリ。無邪気ねえ。当事者じゃなかったらほほえまで済むんだけど、お姉さん恥ずかしいです。
ほかのペアは、優輝さん×ミケちゃん、久美さん×さつきさん、まりあさん×クロちゃんという、天の差配を感じるコンビ。ていうか、さつきさんくじに細工してな~い? ……考えすぎか。
「優輝~、恥ずかしいんだけど」
「まーまー、たまにはこういうのもいいじゃない」
優輝ミケコンビは、むしろ優輝さんのほうがノリノリ。さすが、イベント大好きガール。
「いや~。姉さんとパッキーゲームとか、妹分冥利に尽きるっす~」
「わかったから、さっさとやろうぜ……」
久美さつきコンビは、さつきさんノリノリ。さすが、喜んでくじを作ってただけはある。やっぱり細工してたんじゃ……? 対する久美さんは、ものすごく照れくさそう。
「うふふふ。クロちゃん、ちゅっちゅしーましょ」
「恥ずかしいよ、お姉ちゃん……」
まりあクロコンビは、やはりというかまりあさんノリノリで、クロちゃんが顔から火を吹きそうになっている。
なんか、どのコンビも片方ノリノリ、片方照れ気味という構図ね。
「皆さん、何してるんですか……?」
そこに、タルトの載ったトレイを手にした由香里さんが、なんともいえない表情で登場。唯一、まりあ空間の被害を逃れたラッキーガール!
「ふふふ、由ー香里さーん。一緒にあーそびーましょー」
パッキー片手に、笑顔でずずいと迫るまりあさん。ああ、由香里さんもまりあ空間の餌食に……。
そんなこんなで、賑やかにティータイムは進んでいきました。
その夜、まりあさんから土下座猫スタンプとともに、全方位土下座のメッセージが送られてきたのはいうまでもありません。ちゃんちゃん。
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