神奈さんとアメリちゃん

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第三十話 酒だ! 宴だ! BBQだ!! ―後編―

公開日時: 2021年4月17日(土) 16:31
文字数:2,501

「皆さーん! お酒とお話もいいけれど、こっちも焼けてますからねー!」


 木下さんがトングでお肉や野菜をひっくり返しつつ、口元に手を添え皆にアピールする。


 おお、お肉がいい感じに焼けてるぅ~!


 鼻で息を大きく吸い込むと、肉の焼けるあの独特の香ばしさが鼻腔をくすぐる。


 早速割り箸で紙皿にお肉を取り、「いただきます」と咀嚼そしゃく。う~ん、柔らかくてジューシィ~! 角照さんたち、結構奮発していいお肉にしてくれたみたいね。


「アメリ、なにか食べたいのある? お肉とか、とうもろこしとか、玉ねぎとかあるよ」


 彼女の身長ではグリルから直接物を取るのは難しいので、代わりに注文を訊く。


「んーと……お肉!」


「りょーかーい。フォーク貸してね」


 アメリからフォークを借り、彼女の紙皿に「これは!」といういかにも美味しそうなやつを載せる。ちなみにほかの皆は割り箸だが、アメリはお箸の使い方をマスターしていないので角照さんがフォークを用意してくれた。


「はい、どーぞ」


「おお~! いただきます! ……美味しい!!」


 キラキラと目を輝かせ、お肉を食む彼女。良きかな良きかな


 そういえば、大人組私たちがおしゃべりしてるうちに、子供組が子供同士で集まってるな。どんなこと話してたんだろう?


「ねえ、アメリ。三人でどんな話してたの?」


「サメの話!」


 アッハイ。後でまた、間違った知識を訂正しておかないと。


「あとねあとね、クロとミケが仲良くなった!」


 へえ。奥手なクロちゃんが仲良くなるとは。アメリが間に入って色々頑張ったんだろうな。よしよしと頭を撫でると、「うにゅう」という気の抜けた声を上げる。


「話を聞いたら、ミケが一番お姉さんじゃない? だから、クロもしっかり面倒見るわ!」


 胸を反らし手を当て、えっへんといつもの様子を見せるミケちゃん。へー、彼女が最年長なんだ。


「あのね、あとおせんべいの話してた……。ボク、おせんべい好きだから……」


 お、おせんべい……つくづく味覚が渋いな、この幼女


「亀池堂さんのおせんべい、すごくおいしいから好き……」


 はにかむ彼女。誰が見ても可愛い。


「クロちゃーん。おせんべいもいいけど、今日はこっちお肉が主役だからねー。うふふふ」


 まりあさんが、彼女にお肉ととうもろこしが入った紙皿を渡す。なんだか頬がずいぶん紅いけど、大丈夫かしら?


 「ありがとう。いただきます」と言って、もそもそと食むクロちゃん。ほほえま。


 ミケちゃんもお肉を角照さんから受け取り、「いっただっきま~す!」と元気に食べ始める。ほんと、みんな可愛いわ~。


「そういえば、角照さんたちのサークルってどんな名前なんですか?」


 斎藤&松平コンビとばかり話していた気がするので、今度は角照&木下コンビに話を振る。


「『ちーむ・かくてる』っていいます。命名理由はすごく単純なんですけど」


 かくてる……角・照。あっ!


「なるほど。角照さんのお名前から採ったんですね。ただなんというか、角照さんの名前が目立ってしまって、斎藤さん的には問題なかったんでしょうか?」


 例によって、湧いてしまった疑問を口にする。彼女が上下関係にうるさいのは、先刻見た通りだ。


「いえ、むしろ久美さんが言い出したんですよ。『角照でカクテルとかオシャレじゃね?』っていう、鶴の一声で」


 へえ。お酒好きの斎藤さんらしい。でも、たしかゲーム作り始めたの高校生のときだって言ってたような。……深く追求しないでおこう。


「やっぱり、チームリーダーって斎藤さんなんですか?」


「んにゃ。ウチはそういうのめんどいんで、パスしてる。で、じゃあ優輝に任せようって思ったら、こいつ案外ズボラでさ」


 斎藤さんが話の輪に入ってきた。


「なんで、わたしが色々まとめていますね。なんだか回り回って、そういうことになってしまいました」


「いや、ホント。由香里がいなかったら、うちら作業グチャグチャになっちゃうところでした。頭が上がらないです」


 木下さんと調理を交代し、肩をすくめる角照さん。へえ~、影の実力者ってやつか。


「松平さんは、そういうのはやらないんですか?」


「あいつウチらの中でも、特にテキトーなキャラしてるからね。一番向いてないんじゃないかな」


「あっはっは。メンボクないっす~」


 まるで悪びれる様子もなく笑いながら、松平さんも話の輪の入ってきた。


 ああ、把握しました。たしかにこの性格は、色々お任せできない感じだ。初対面時の出来事を回想しながら、心の中でうんうんとうなずく。


「あ、そうだ。猫崎サン、ウチらとも連絡先交換しね? 優輝とはしたらしいじゃない。宇多野サンとも、後で交換しようって話になってて」


「ええ、構いませんよ。じゃあ、後でしましょう」


 こうして、楽しいバーベキューパーティーは進行していき、すっかり満腹。お酒をこんなに飲んだのも、久しぶりだなー。明日、影響出ないといいけど。



 ◆ ◆ ◆



「今日は本当に楽しかったです! ありがとうございました!」


 パーティーもお開きになり、角照さんたちに深々と頭を下げる。


「アメリも。ほら」


「ありがとーございました!」


 ぺこりと頭を下げる。


「あたしたちも、すごく楽しかったです。ご参加ありがとうございました。それにしても……宇多野さん大丈夫ですか?」


 何がツボに入ったのやら、くっくっくと笑いをこらえているまりあさん。ほんと大丈夫かな?


「わたしが送っていきます。優輝ちゃん、バン借りるね」


「そうしてもらえると助かる。宇多野さんも、ご参加ありがとうございました」


 さすがは木下さん。アシスト力が光る。


「猫崎さんへのみんなの連絡先は、あたしから送っときますね」


「はい。では、失礼します。まりあさんと皆さんの連絡先の交換も、あの様子だとちょっと無理そうなので、後で私から送っておきます」


 アメリと一緒に再度ぺこりと頭を下げ、見送りを受けながら自宅へ向かう。


 バーベキューの匂いが染み付いてるし、汗もだいぶかいたのでアメリと一緒にお風呂に入る。もっとも、結構呑んでしまったので軽めのお風呂。


 お風呂上がりに斎藤さんたちとLIZEの連絡先を交換したものの、まりあさんはダウンしてしまったのか既読すらつかないな。真留さんからネームOKのメールが届いたのを確認した後、今日は早めに入眠しました。

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