「皆さーん! お酒とお話もいいけれど、こっちも焼けてますからねー!」
木下さんがトングでお肉や野菜をひっくり返しつつ、口元に手を添え皆にアピールする。
おお、お肉がいい感じに焼けてるぅ~!
鼻で息を大きく吸い込むと、肉の焼けるあの独特の香ばしさが鼻腔をくすぐる。
早速割り箸で紙皿にお肉を取り、「いただきます」と咀嚼。う~ん、柔らかくてジューシィ~! 角照さんたち、結構奮発していいお肉にしてくれたみたいね。
「アメリ、なにか食べたいのある? お肉とか、とうもろこしとか、玉ねぎとかあるよ」
彼女の身長ではグリルから直接物を取るのは難しいので、代わりに注文を訊く。
「んーと……お肉!」
「りょーかーい。フォーク貸してね」
アメリからフォークを借り、彼女の紙皿に「これは!」といういかにも美味しそうなやつを載せる。ちなみにほかの皆は割り箸だが、アメリはお箸の使い方をマスターしていないので角照さんがフォークを用意してくれた。
「はい、どーぞ」
「おお~! いただきます! ……美味しい!!」
キラキラと目を輝かせ、お肉を食む彼女。良き哉良き哉。
そういえば、大人組がおしゃべりしてるうちに、子供組が子供同士で集まってるな。どんなこと話してたんだろう?
「ねえ、アメリ。三人でどんな話してたの?」
「サメの話!」
アッハイ。後でまた、間違った知識を訂正しておかないと。
「あとねあとね、クロとミケが仲良くなった!」
へえ。奥手なクロちゃんが仲良くなるとは。アメリが間に入って色々頑張ったんだろうな。よしよしと頭を撫でると、「うにゅう」という気の抜けた声を上げる。
「話を聞いたら、ミケが一番お姉さんじゃない? だから、クロもしっかり面倒見るわ!」
胸を反らし手を当て、えっへんといつもの様子を見せるミケちゃん。へー、彼女が最年長なんだ。
「あのね、あとおせんべいの話してた……。ボク、おせんべい好きだから……」
お、おせんべい……つくづく味覚が渋いな、この子。
「亀池堂さんのおせんべい、すごくおいしいから好き……」
はにかむ彼女。誰が見ても可愛い。
「クロちゃーん。おせんべいもいいけど、今日はこっちが主役だからねー。うふふふ」
まりあさんが、彼女にお肉ととうもろこしが入った紙皿を渡す。なんだか頬がずいぶん紅いけど、大丈夫かしら?
「ありがとう。いただきます」と言って、もそもそと食むクロちゃん。ほほえま。
ミケちゃんもお肉を角照さんから受け取り、「いっただっきま~す!」と元気に食べ始める。ほんと、みんな可愛いわ~。
「そういえば、角照さんたちのサークルってどんな名前なんですか?」
斎藤&松平コンビとばかり話していた気がするので、今度は角照&木下コンビに話を振る。
「『ちーむ・かくてる』っていいます。命名理由はすごく単純なんですけど」
かくてる……角・照。あっ!
「なるほど。角照さんのお名前から採ったんですね。ただなんというか、角照さんの名前が目立ってしまって、斎藤さん的には問題なかったんでしょうか?」
例によって、湧いてしまった疑問を口にする。彼女が上下関係にうるさいのは、先刻見た通りだ。
「いえ、むしろ久美さんが言い出したんですよ。『角照でカクテルとかオシャレじゃね?』っていう、鶴の一声で」
へえ。お酒好きの斎藤さんらしい。でも、たしかゲーム作り始めたの高校生のときだって言ってたような。……深く追求しないでおこう。
「やっぱり、チームリーダーって斎藤さんなんですか?」
「んにゃ。ウチはそういうのめんどいんで、パスしてる。で、じゃあ優輝に任せようって思ったら、こいつ案外ズボラでさ」
斎藤さんが話の輪に入ってきた。
「なんで、わたしが色々まとめていますね。なんだか回り回って、そういうことになってしまいました」
「いや、ホント。由香里がいなかったら、うちら作業グチャグチャになっちゃうところでした。頭が上がらないです」
木下さんと調理を交代し、肩をすくめる角照さん。へえ~、影の実力者ってやつか。
「松平さんは、そういうのはやらないんですか?」
「あいつウチらの中でも、特にテキトーなキャラしてるからね。一番向いてないんじゃないかな」
「あっはっは。メンボクないっす~」
まるで悪びれる様子もなく笑いながら、松平さんも話の輪の入ってきた。
ああ、把握しました。たしかにこの性格は、色々お任せできない感じだ。初対面時の出来事を回想しながら、心の中でうんうんと頷く。
「あ、そうだ。猫崎サン、ウチらとも連絡先交換しね? 優輝とはしたらしいじゃない。宇多野サンとも、後で交換しようって話になってて」
「ええ、構いませんよ。じゃあ、後でしましょう」
こうして、楽しいバーベキューパーティーは進行していき、すっかり満腹。お酒をこんなに飲んだのも、久しぶりだなー。明日、影響出ないといいけど。
◆ ◆ ◆
「今日は本当に楽しかったです! ありがとうございました!」
パーティーもお開きになり、角照さんたちに深々と頭を下げる。
「アメリも。ほら」
「ありがとーございました!」
ぺこりと頭を下げる。
「あたしたちも、すごく楽しかったです。ご参加ありがとうございました。それにしても……宇多野さん大丈夫ですか?」
何がツボに入ったのやら、くっくっくと笑いを堪えているまりあさん。ほんと大丈夫かな?
「わたしが送っていきます。優輝ちゃん、バン借りるね」
「そうしてもらえると助かる。宇多野さんも、ご参加ありがとうございました」
さすがは木下さん。アシスト力が光る。
「猫崎さんへのみんなの連絡先は、あたしから送っときますね」
「はい。では、失礼します。まりあさんと皆さんの連絡先の交換も、あの様子だとちょっと無理そうなので、後で私から送っておきます」
アメリと一緒に再度ぺこりと頭を下げ、見送りを受けながら自宅へ向かう。
バーベキューの匂いが染み付いてるし、汗もだいぶかいたのでアメリと一緒にお風呂に入る。もっとも、結構呑んでしまったので軽めのお風呂。
お風呂上がりに斎藤さんたちとLIZEの連絡先を交換したものの、まりあさんはダウンしてしまったのか既読すらつかないな。真留さんからネームOKのメールが届いたのを確認した後、今日は早めに入眠しました。
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