帰宅後、「あめりにっき」第二巻ぶんにルビを付けながら過ごし、夕飯はお菓子会でお土産にいただいたドーナツとブラウニーをいただくことに。う~ん、これまた美味しい! 皆さん、ほんと料理お上手よね。
とはいえ、お菓子二つだけではさすがに夕食として足りないので、ツナサンドをささっと作り、半分こしてアメリと食べました。和風ハンバーグは明日のお昼ごはんにでもしましょう。
そんなこんなで食後にルビ振りを再開していると、LIZEに着信音が。優輝さんだ。
「お約束していたゲームのβ版ができたので、お届けに上がってもいいですか?」ですって。もちろんOK。
すると、ほどなくしてインタホンの呼び鈴が鳴りました。
「こんばんはー」
ほかの人ではないだろうということで、そのまま門へ向かうと果たして優輝さんが門前に立っていました。
「こんばんは。いやー、今しがたやっとチェックが終わったので、焼いてきました」
透明なケースに入ったディスクを掲げる彼女。ディスクには、「ひなまつり β 1.1.5」とサインペンらしきもので書かれている。
「普通のアプリみたいに、インストールしてください。あとわからないことがあれば、通話でもメッセージでもお答えしますんで。あ、でも九時以降はまずメッセージでください。ミケを起こすといけないので」
「わかりました。なにぶんコンピューターゲームなんて初めてやるものですから、色々ご面倒かけてしまうかもしれませんが」
「いえいえ。お願いしたのはこちらですから、ご迷惑だなんて。それでは失礼します」
一礼して帰ろうとする彼女に、慌てて思い出し、「ドーナツとブラウニー、とっても美味しかったです!」と伝えると、「ありがとうございます」と笑顔を返される。そして彼女は再度一礼し、帰宅した。
さて、ではさっそく試してみましょうか。ゲームといえばトランプとかぐらいしか知らない私だけど、できるかしら?
あ、そうだ。さっそく質問したいことができた。電話をかける。
「はいはい。どうされました? インストールの不具合とかですか?」
「あ、いえ。その、アメリにも見せて大丈夫なものかなあと思いまして」
せっかくなので、一緒に楽しめるものなら楽しみたい。
「大丈夫ですよー。せいぜい例のキスシーンが出るぐらいですから」
「ありがとうございます。じゃあ、一緒に楽しめそうですね」
「うーん、漢字にルビついてないので、アメリちゃんには難しいかもですよ?」
ぬーん、そういえばそうか。
「じゃあ、魅力的な絵とか出てきたら見せてみます」
「はい。そうしていただけると、さつきと由香里も喜ぶと思います」
そんなこんなで通話終了。では、インストールしてみましょうか。
えーと? ふむふむ。ほんとに普通のアプリを入れるのと変わらないのね。で、このアイコンをダブルクリックで起動かな? おお、「ちーむ・かくてる!」なんて、あのときの声優さんたちが合唱してる。おもしろーい。
ええと……なんか項目が色々あるな? この「すたーと!」ってのを選べばいいのかしらね? お、始まった!
ふむ、なんか下にメッセージが出てきて、読み上げてるな。で、上の女の子が主人公かな? 上北沢ひなちゃんっていうのか。高校生なんだね。
あれ、次に進まないな? クリックすればいいのかな? お、進んだ進んだ!
出だしを要約するとこんな感じ。
東京・F市に高校進学を機に一家で越してきたひなちゃんが、お隣さんの「北野光莉」ちゃんと出会い、漫画家を目指していることを知る。で、反対側のお隣さんである「柴崎」家の女子大生、「晴美」さんとも知り合う。
で、高校では隣同士の席になった「国領冬美」ちゃんとも知り合う……。
ふむふむ。ひなちゃん以外の、この三人が物語に絡んでくるのかな?
そんなわけで進めていくと……あれ? なんかクリックで進まなくなった! 上のほうに、変な文字が出てるし! 電話~。
「ああ、それ選択肢です。ビビッと来たほうを、クリックしてみてください」
りょうかーい、下のほうを選んでみよ。
◆ ◆ ◆
そんなこんなで遊んでいると、ストレッチと入浴のお時間がやって来ました。これ、中断したい場合どうしたらいいんだろ?
またもや電話を掛ける私に、快くご回答くださる優輝さん。うう、手がかかってスミマセン……。
◆ ◆ ◆
というわけで、お風呂上がりに再開~。アメリちゃんは、ブロック遊びなう。なかなかこう、人が立ってるだけの絵が多くて……。
って、ああ! あのときのキスシーンだー! ふわあ~、色がつくとこんな感じになるんだ~……。さつきさん、塗り上手いな~。
「アメリー、さつきさんってこういう絵描くんだよー」
すると「おお?」と、とてとて寄ってきて、画面を覗き込む。
「おお~! さつきおねーちゃん、絵、上手だね!」
「だよねー」
さつきさんがメインキャラを描いてる関係で目立ちがちだけど、由香里さんの背景もとても上手い。F市でおなじみのスポットをちょっといじった建物とか公園が出てきて、とても興味深いなあ。
「おねーちゃん、おやすみー」
アメリがブロックを片付け、ベッドに潜り込む。あや、もうそんな時間か。
「おやすみー」
デスク以外の照明を落とす。ふう、つい夢中になっちゃうな。優輝さんのシナリオがいいんだろうなあ。
こうして就寝前近くまで遊んでいると、エンディング。なんか……暗いお話だったな? 優輝さんってこういう作風なのかなあ?
ダイニングに移動し、スマホでメッセージを送る。
「遊び終わりました。今、お話いいですか?」
「ありがとうございます! 下に移動しますのでお待ちください~」
ややあって、「下に来ました。いかがでしたか?」と返事が来たので、「お電話でも大丈夫ですか?」と送ると、「では、ダイニングに移動しますね」とさらにお返事。
そして、通話が来ました。
「いかがでした?」
「そうですね……私、ほんとにコンピューターゲームなんて初めてでしたけど、興味深く遊ばせていただきました。ただ……」
「はい」
「随分と後味の悪いお話だったなあと。申し訳ないのですけど」
すると、すかさず「あー」と、合点がいったような彼女の声が返ってきた。
「それ、誰かのバッドエンドですね。誰と、どんな感じになりましたか?」
光莉ちゃんが筆を折ってしまい、ひなちゃんと言葉も交わさなくなってしまう終わりだったと告げる。
「なるほどなるほど。じゃあ、光莉のバッドエンドですね、それ。選んだ選択肢で、物語が分岐するんですよ」
へー!
「なるほど、そのための選択肢なんですね!」
「ですです。ほかには、不具合の類は出ませんでしたか?」
「そうですねー。とりあえずバッドエンドですか? そこまで行った範囲では、エラーとかはなかったです」
「ありがとうございます。うーん……もしかすると、選択肢ひねりすぎたかなあ……?」
後半、自問自答するようにぶつぶつ言う彼女。
「あ、いえ。私がこういうの初めてなだけで、物語としては素晴らしいと思いました! 時間を忘れるぐらい、夢中になってしまいましたし」
「そうですか? そう仰っていただけて安心です。引き続き、折を見てご感想をお聞かせ願えるとありがたいです」
「はい。こういうのもとても面白いとわかりましたので、引き続き遊ばせていただきますね」
そんなわけで通話終了。ふう、今日は色々遊び倒しちゃったな。とりあえず、寝ーましょっと!
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