神奈さんとアメリちゃん

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第三百三十話 最後に、親子水入らずで

公開日時: 2021年8月24日(火) 21:01
更新日時: 2021年9月27日(月) 20:18
文字数:2,405

「たっだいまー!」


「ただいまー!」


 連休最後の、実家での「ただいま」だ。二人で元気にシャウト!


「おかえりー。二人とも、楽しかったかい?」


 お父さんがリビングから出て、気さくに話しかけてくる。


「楽しかったよー。一時はどうなることかと思ったけど、皆さんの優しさに救われました。それにしても、機嫌いいね?」


「机があらかた完成してね。あとは細かい仕上げだけだから、普通の休日だけでできそうだよ。梅雨入り前には完成させたいところだけど」


「へー、すごいね。お母さんは?」


「リビングで編み物してるよ」


 二人とも、趣味を満喫できているようで何より。


 すると、アメリにいきなり裾を掴まれました!


「どうしたの?」


「眠い……」


 ありゃ。まあ、今日もたくさん遊んだからねー。かくいう私も、少し疲れが溜まってて眠い。


「アメリと一緒に、客間で仮眠してきていい?」


「いいよ。二人とも、疲れたろう。一時間ぐらい経ったら、お母さんに起こしてもらえばいいかな?」


「うん、そうしてもらえると助かる。それじゃ、おやすみなさーい」


 二人で自室に向かい着替え、客間ですやぁ・・・。しばし眠りの世界へ~。



 ◆ ◆ ◆



 お母さんに起こされ、二人でリビングへ。


「じゃ、ごはん作るから」


「ねーお母さん。最後ぐらい、私たちに作らせてよ」


 台所に向かうお母さんを、制止する。


「でも、疲れてるでしょう?」


「そこはほら、甘えてばっかりじゃなくて、親孝行したいじゃない。あれからかなり上達したアメリの腕も見せたいし」


 お母さん、「うーん」と考えた後、「じゃあ、任せちゃおうかな」とOKしてくれました!


 ただ、私はお母さんのを借りればいいけど、アメリ用のエプロンを持ってきてないので、汁や油が飛びそうなものは調理させられないね。


「使っていいもの教えてー」


「冷蔵庫と、乾物の戸棚に入ってるものなら、何でもいいわよ」


 そりゃ、ありがたい。さっそく物色しましょー。


 いろいろ入ってるな。三人暮らししてた頃から使ってる冷蔵庫だから、二人暮らしには少し大きい。でも、冷蔵庫は大は小を兼ねるよね。


 さて、厚揚げ。これは福井っ子としては食べたいね。おネギと大根もある。これもいこう。


 あとは……。


「お父さん、お母さん。今日は呑もうよ」


 台所から顔を出し、呼びかける。


「そうだね。呑もうか、お母さん」


「そうね。もうお盆まで神奈と呑む機会ないものね」


 というわけで、全体の方向としては、おつまみを作る方向になりました。ただ、アメリのおかずにもなるものにしないとね。


 冷蔵庫に、日本酒の瓶が横たわってるな。日本酒に合うものでいきますか。


 お、サヨリがある。サヨリったら、やっぱ塩焼きよね。四月末にも食べたけど、旬の福井のサヨリは激旨なので、ぜひ食べ納めといきたい。


 あとは……。シンプルに卵焼きもいいね。よし、三品もあったら十分でしょ。そいじゃ、作りますかー。


 ただ、F市の我が家と違ってまな板二号がないのよね。アメリちゃんには焼き厚揚げでも作ってもらいましょうか。


「アメリちゃん。この焼き網の上で、厚揚げ四つを焼いてもらえますか。中火やや弱めね」


「おおー! 任せて!」


 私は、サヨリさんからいきますかー。エラと内臓、黒い腹膜を取り、魚焼きグリルで弱火で丸焼きに。


 続いて、大根おろし。これは厚揚げと卵焼きの薬味。……完成!


「アメリー。ひっくり返してー」


「はーい」


 続いて、卵六つを割ってお砂糖を小さじ二杯プラス、料理酒小さじ一杯。それにお塩少々加えて撹拌~。


「おねーちゃん、できたかな?」


「ひっくり返してみて。……うん、できてる。お皿に置いといて」


 私も、サヨリをひっくり返す。続いて、卵焼き……というか厚焼きだけど、それを作る。


 卵焼き器で焼きながら形整えるだけだからね。そんな難しい物でもない。


 よっし、あとは厚揚げと卵焼きを食べやすい大きさに切って、両方に大根おろしを。厚揚げにはさらに生姜チューブ。


 サヨリも焼き上がったのでお皿に盛り、完成~!


「お父さん、お母さん~。できたよ~!」


「おー、早いねー」


「心強いアシスタントがいますからね。さ、食べましょ」


 配膳を済ませ、全員で着席したら、いただきますの合唱! お父さんたちと私のお猪口に、お酒を手酌する。アメリはもちろん、白いご飯。


「厚揚げと卵焼きには、お醤油適当にかけてね」


「こりゃ美味しそうだ。アメリは何を作ったのかな?」


「厚揚げー!」


 元気に答えるアメリちゃん。


「へー。じゃあ、まずそれから……。うん、美味しいねえ! ゆで卵から随分頑張ったもんだ」


「それがねー。もう揚げ物もできるのよ、この子」


「何だって、それは本当かい!?」


 お父さんとお母さんびっくり。ほんの五ヶ月前、私からゆで卵作りを習っていたのだ。


「すごいよねえ。我が娘ながら、学習速度にびっくりですよ」


 お酒をつ、と飲みながら言う。ああ、美味しいお酒だ。


「危ないことないんだろうね?」


「そこはちゃんと、私が常に責任持って見てますから」


 はー……と、感心のため息を吐く二人。


「すごいのねえ、アメリちゃん」


 お母さんに頭を撫でられ、「うにゅう」と気抜け声を上げる。


「私の作った、サヨリの塩焼きと卵焼きも食べてよ」


「おお、そうだね。……うん、美味しい! ほんとに、神奈も料理上手になったよねえ」


「伊達に、自炊生活を八年もしてないからね」


 ふふんと、鼻高々。


 ささやかな酒宴は和やかに進み、互いの生活について、様々な情報交換がなされました。


 特に、アメリが自転車を補助輪なしで乗れるようになったことにもびっくりしたようで。


「はー……。ほんとに器用な子だねえ」


 と、目を丸くするお父さん。


 食後はお母さんが後片付けをしてくれるとのことなので、代わりにお風呂の用意をして歯を磨く。


 二階で、明日に備えて荷造りを大体整えた後、今日の汗と汚れを流してさっぱり!


 あとは九時になったらアメリを寝かせ、十一時に今度は私が寝るだけだ。


 親子二代、水入らずで談笑しながら、眠りのときを待つのでした。

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