今日は、おなじみミケちゃん&クロちゃんとの勉強会。
ミケちゃんに勉強を教えてる最中、アメリをちらりと見る。
うん、前日だというのに、すごく落ち着いているね。ミケちゃんのおかげだなあ。
思えば、アメリはプレッシャーに弱い子だった。お風呂に始まり、お注射、お年玉などなど、なんらかのプレッシャーを受けるとマナーモードに……。
「……ねーさん、おねーさん」
「はい、何でしょう!?」
ミケちゃんに二の腕をぷにぷにと突かれ、我に返る。
「ミケの番でしょ。ちゃんと見てよね」
「ごめん。そんな、ぼーっとしてた?」
こくこくと頷く彼女。参ったな。
「まー、可愛い妹にイシキがいっちゃうのは、わかるけどね」
「わかりますか、ミケちゃん」
「わかるわよ。年下は、みんな可愛い妹・弟だもの。アメリのみならず、クロも、ともも、まだ会ったことない英一・美子も、みーんなミケの可愛い弟妹よ!」
ほへー。本当に、お姉ちゃんしてますねえ。
「ボクも、ミケとよく遊んでるけど、面倒見いいよね」
へー。ほんとに、一段とお姉ちゃんしてますねえ。
「まーね」と、ドヤ顔で胸を反らす彼女。可愛い。
「ミケちゃんは、なんでそんなお姉ちゃんであることに、プライドを持つようになったの?」
素朴な疑問をぶつけてみる。
「ええ……? そういえば、なんでだろ? なんか、年下を見ると可愛くて仕方ないのよね。昔、そういう場面があった気がするのよ」
あれかしら。保護猫になる前の、仔猫の頃の記憶かしらね?
「……おねーちゃんとミケのお勉強に、アメリ邪魔?」
「ああ、そんなことないから安心して!」
ミケちゃんと一緒に、手をわたわた振る。
ふう。今日は、私が三面指導頑張らないとね! やるぞー!
◆ ◆ ◆
「はい、クロちゃん正解! お疲れ様でした。じゃー、少し休憩にしましょー」
子どもたちと一緒に、うーんと背を伸ばす。
休暇とはいえ、今月はお盆進行。連休前に、真留さんのGOサインもらわないとなあ。まあ、今日は猫耳幼女たちとのふれあいを、楽しみましょ。
「おやつ、カップケーキ作ろうか」
「アメリも一緒に作る!」
「お、そうする? みんなは?」
二人を見ると、同意の模様。では、カルガモ状態で台所にGO!
何ぶんお手軽なおやつなので、あっという間にできました。紅茶を淹れ、配膳。
「いただきます!」
私の音頭取りで、ほかほかカップケーキを堪能。美味しい~。
「神奈お姉さんって、器用ですよね」
「そう?」
唐突なクロちゃんの賞賛に、思わず尋ね返す。
「はい。うちのお姉ちゃんも器用ですけど、ほんと魔法の手だなって」
「魔法の手か~。ふふ、ありがと」
微笑みで返すと、クロちゃん、照れて俯いてしまいました。可愛い。
一人暮らしをして、早八年。実家にいた頃と違い、大概のことは一人でできる力がついた気がするな。私、実家にいると甘えちゃうから。
寂しさを覚えることもあったけど、私にはアメリがいてくれた。寂しくなった日には、よくアメリを膝に乗せて撫でながら、実家に長電話してたっけ。
今の暮らしを始めて、こんな私でも、ちょっとは前進できたと思う。
そんな私が、今では一児の親。世の中、何があるかわからない。
一人暮らしで身につけた様々なことが、アメリに受け継がれている。料理、家事、その他諸々。
本当に、世の中、何があるかわからないものだ。
「おねーちゃん、ケーキ冷めちゃうよ?」
愛娘の声に、はっとなる。ついまた、夢想の世界に行ってしまっていたらしい。
見れば、三人ともとっくに食べ終わり、私が食べ終わるのを待っている状態だ。
「あー、ごめんね。続きは、向こうで食べるね」
三人のカップを洗い、ケーキと紅茶を手に寝室へ戻る。三人のぶんの新しい紅茶は、アメリが淹れてくれました。ありがとう。
◆ ◆ ◆
ケーキを食みつつ、三面指導再開。
しかし、こりゃほんと大変だ。四面指導までしていた白部さんは、本当にすごいなと、改めて実感する。
かつて、まりあさんが風邪に倒れたとき、三人に掛け算を教えたことがあるけど、今ほど三人の学力はバラバラではなかった。
ここが大変なのだ。とにかく、相手が変わるたびに頭を切り替えるのが大変。
一人の教諭が、三十人とかの面倒を一度に見る学校教育が、画一的になってしまうのも、むべなるかなという感じ。私みたいな、凡庸な生徒にとっては別に困る話でもなかったけど、先生になってみると大変さがよくわかる。
高いお金払って家庭教師つけて、マンツーマンで勉強教えてもらうなんて気持ちも、今なら理解できる。学力に合った指導をみっちり受けられるものね。
それを、これからこの子は経験するのか。学費はT総が持ってくれるらしいけど、それはデータと引き換え。私たちと研究機関は、このある種Win-Winな関係の上に成り立っている。
そんな中で、仕事抜きでも……というか、仕事をダシに、個人的なおつきあいをしてくださっているのが、白部さん。ありがたいことです。
「お姉さん?」
くりくりした瞳で見つめ、呼びかけてくるクロちゃん。はっ! いかんいかん。また、考え事をしていた。
「ごめん。ええと、五分の二から五分の一を引くとね……」
ため息をつくミケちゃん。ほんと、ごめんなさいってば。
すっかり冷めてしまったケーキと紅茶をいただきながら、指導を進めていく。
今日は、どうも身が入らないなあ。基本のんきな私でも、明日のことが気にかかるのだろうか……って、また考え事する~。集中しましょ。
こうして、ところどころぼーっとしつつも、勉強会をなんとか進めていったのでした。
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