神奈さんとアメリちゃん

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第九十六話 アメリ、アメリを見る

公開日時: 2021年4月21日(水) 20:01
文字数:2,084

夜七時、昨日撮影したアメリの画像をPCに保存していると、ふと懐かしいフォルダが目についた。


 かつて「アメリ」と名付けていた、今は「猫アメリ」とリネームしているフォルダ。今は、新しい「アメリ」フォルダ下のサブフォルダとなっている場所。


「アメリー。猫だった頃の、自分の写真って見てみたくない?」


 背後でぬいぐるみ遊びしていたアメリに問いかけると、「おお? どゆこと?」と問い返してくる。


「猫だった頃のアメリの写真が見たくなってね。良かったら一緒に見ようってお話」


 すると、「おお~! 見る見る!」と勢いよく立ち上がる。


「おいで」


 椅子を九十度ひねって横向きにし、ぽんぽんと膝を叩くと、アメリが膝にちょこんと腰掛ける。


「じゃあ、新しいのから見ていこうか」


 猫用ベッドですやすや眠るアメリ。日付は今年の九月二日。アメリはこの翌日に、虹の橋を渡りかけて帰ってきた。


 私のベッドで仰向けにぐでーんと寝てるアメリ、ごはんタイム、「にゃんでしょー光線ペンライト」ではしゃぐアメリ、ちゅ~ゆをぺろぺろしてるアメリ……。画像もあれば動画もあり、どれもこれも今や懐かしい。


「おお~! 可愛い!」


 自画自賛する彼女。傍から聞いたらただのナルシスト発言ね、と内心思いつつも微笑む。だって、本当に可愛いんだもの。あ、そうだ!


 LIZEを立ち上げ、グループチャットに「猫時代のアメリ、見てみたくありません?」と皆さんに問いかける。すると、まりあさんやかくてるの皆さんから「見たいです!」「はい!」などの返事が来る。


 それに応え、特に可愛いと思うものをピックアップしてアップすると、皆さん「可愛い」と大絶賛。まりあさんや優輝さんも猫時代のクロちゃん、ミケちゃんの画像をアップし始め、猫画像の閲覧会と化しました。


「おお~! これが昔のクロとミケなんだー」


 と、アメリも食い入るように見る。


 互いに、互いの子を「可愛いですね~」と褒め合っていると、白部さんがログイン。時刻は八時を回っていた。いつも遅くまで、お疲れ様です。


 「アメリちゃんたちの昔の画像ですか? 可愛いですね」と、白部さん。続いて「せっかくなので」と発言した後、ノーラちゃんの画像がアップされる。かなり警戒心が薄れているようで、白部さんと打ち解けつつあるみたい。


 これまた、皆で「可愛い」の大合唱。可愛いは女子共通語です。まあ、みんな本当に可愛いんだけど。


 すると、白部さんが新たな画像をアップする。白部さんと思しき女性がちゃぶ台の前に座っていて、その足にノーラちゃんが首をすりつけている写真だ。


 「今ノーラちゃんが、首をすりすりしてくれてます!」と、バンザイ猫スタンプとともに喜びの言葉が。私もほんとに、このスタンプ買おうかなあ。一人だけ持ってないのも寂しいし。ちゃぶ台の上に食べかけのコンビニ弁当らしきものがあるから、お食事中だったのね。


 足に首をこすりつけるのは、親愛のサイン。元猫飼いである私たちは彼女の喜びようが目に浮かび、「おめでとうございます!」「やりましたね!」と、メッセージを送る。それに「ありがとうございます!」と応える白部さん。


「ねーねー! ノーラちゃんに会いに行っていい?」


 アメリが尋ねてくるので代筆すると、「うーん、もう少し人馴れしてからでいいですか?」と、白部さんからのお返事。


「もう少し待ってね、だって。だからもうちょっと待とうね」


 アメリの頭を撫でると、「うにゅう~」と、不満半分、気抜け半分ぐらいの声を上げる。


 「ところで昨日、アメリの冬服を買って撮影したんですけど、見ます?」と送信すると、「見たいです!」と皆さん賛成。


 では、アップしていきましょ~!



 ◆ ◆ ◆



 あれ? 皆さんの反応が薄いな……。最初のほうは可愛い、可愛いと好評だったのに……。撮影をしくじったのかしら?


 「あの、神奈さん。言いにくいんですけど、まだ続きます……?」と、汗拭き猫スタンプとともにメッセージを送ってくる優輝さん。え?


 時刻を見れば、もう九時半! アメリは膝の上で船を漕いでるし! 膝の上で約二時間半、道理で足がしびれるなと……。さらに、スクロールしてみれば冬服アメリ画像がものすごい数! ああああ! やってしまったァァァッ!!


 「すみません!! すみません!!」と打ち込む。慌ててアメリをベッドに運び、照明を落として仕事机だけの明かりにする。LIZEもPCのほうは落とし、無音にしたスマホに切り替え!


 「いやー。神奈サン、相変わらずだねー」と、久美さんも汗拭き猫スタンプとともに送信。


 「恐縮です……」と、送り返す。ああ、どうして私はこうアメリのことになると、見境がなくなってしまうのか……。


 その後は雑談を交えつつ、漫画執筆。今月号の原稿も、もうすぐフィニッシュだ。席を立ち安らかな寝息を立てるアメリを見て微笑み、新たなコーヒー牛乳を作りに行く。


 そうそう、以前、コーヒー牛乳を飲みながら仕事していることをまりあさんに話したら、「夜、眠れなくなりません?」と心配されたことがあるけれど、このコーヒーはいわゆるデカフェなのです。だから、常に安眠可能!


 というわけで、今日も十一時までお仕事頑張ったら寝ましょうっと。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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