車をブロロンと走らせ、やって来ましたいつものスーパー!
今日も例の店内BGMがお出迎え! どうしてこの曲って聴き飽きないのかしらね。今度、久美さんにそういう秘訣があるのか訊いてみようかな。
さあ、おなじみチラシチェーック!
今日はサバやキャベツなどがお安いです、と。ふむふむ。
よし。今日は、サバの竜田揚げwithキャベツの千切りとシャレ込みましょう!
まずは、マサバの半身とキャベツひと玉をかごにイン!
あとは、片栗粉と……おなじみ食パンと牛乳。卵も買っておいたほうがいいかな。
「アメリー。たまにはシリアルとかで食べる? 朝ごはん」
「おお? 何でもいいよー」
相変わらず力強いお言葉。私が朝強かったらなあ。手の込んだ朝ごはん食べさせてあげたい……。でも、二十八年間も克服できてない弱点なのよね。とほほ。
とりあえず、久々にシリアルもいいよね。
あとは、デカフェコーヒー。印税入ったらコーヒーミルとか買っちゃう? やりすぎか。
よし、こんなもんかな。
「あ、そうだ。今月のお小遣い。アメリは何か買う?」
三百円を渡しながら問う。
「んー……今日は取っておく!」
殊勝な心がけです、アメリちゃん。では、お会計~。
◆ ◆ ◆
ただいまー! 今日はお米向きのおかずなので、お米を水に浸してっと。
それじゃしばらく、お仕事してましょー。
アメリは後ろでぬいぐるみ遊び。名なしのコンペイトウにも、「はこぺん」というよくわからない名前がついた模様。何がどうしてそんな名前に……。
「はこぺんさん! わたし、あなたのことをあいしてしまったの!」
「ほえほえさん!」
性別は男の子みたいね。ほえほえさんの逆ハー要員が、また増えてしまった……。
アメリちゃんの愛の劇場を聞きながら、筆をすいすい。うーん、はかどる!
すると、スマホのアラームが鳴ったので、炊飯スイッチをぽちっとな。
再度執筆。いやはや、アメリがそばにいるだけで、どうしてこんなにはかどるのかしらね? 思えば十四年以上続いた習慣だからかなー? でも、それだけじゃない気もするな。アメリは私にとっての勝利の女神なんだと思う。
おっと、スマホがまた鳴りましたよ。
「それじゃあ、ごはん作りにいこっか、アメリ」
「おお~!」
というわけでキッチンへやって来ました。ごはんは炊きあがりの少し前。今回、ちょっと仕込みが必要だからね。
さあ、三分でクッキングする例の脳内BGMを流して、レッツ・クッキーング!
「じゃあ、アメリちゃんにちょっと頑張ってもらおうかな。お魚をね、ひと口の大きさに切ってほしいのです」
「わかった!」
ヒレと骨取りをした半身を渡し、よいしょ、よいしょと包丁で切り取っていく彼女。一切れできるたびに、「上手上手!」と拍手する。
「これでいい?」
「お見事! じゃあ、この中に入れてね」
ジッパー付きのビニール袋に、サバの切り身を入れてもらう。
「よし、次は味付けだよ~。お醤油とみりんと料理酒を、大さじ一杯ずつこの中に入れてみよう」
慎重に入れていくアメリ。
「いいね! そしたら、このチューブ入り生姜を、少しだけ入れよう」
にゅっと投入。
「うん、いいよいいよー。じゃあ、このつまみを引いて閉じて、よーく揉んで」
もみもみするアメリちゃん。もみもみならお手の物だね! って、私が朝受けてるもみもみアタックとは違うか。
「あとは冷蔵庫に入れて十分冷やしまーす。今のうちに、キャベツの千切りとざく切りも作っちゃおう」
タイマーをセット。キャベツの芯をくり抜き、必要な枚数を剥がす。残りは濡らしたキッチンペーパーを芯のあった部分に詰めて保存。
「じゃあ、ざく切りから行こうか。前、焼きそばでやったときみたいに切ってみて」
「はーい」と言いながら、手際よく切っていく。すごいなあ。あのときは、あんなにたどたどしかったのに。
「お上手! じゃあ、次は千切りね。ゆっくりでいいから、こんな感じに切っていって」
お手本として、少し見本を切る。
「わかった!」
初めての作業だし細かいので、慎重に切っていく。おお、初めてにしては上手だ!
「すごいすごい! 上手! さっすがアメリちゃん!」
パチパチと拍手すると、「えへへ」と後頭部を撫でて照れる彼女。ほほえま!
「次は、お鍋にお湯を沸かそう。これは強火でいいよ」
鍋にポットのお湯を張り手渡すと、コンロで加熱するアメリ。
「うん、ボコボコいってきたね。じゃあ、ざく切りのほうのキャベツを入れよう。お湯がはねないようにゆっくりね」
アメリちゃん、キャベツを無事投入! あとは柔らかくなるのを待つだけー。
「お上手です、先生! それじゃ、少し休憩しよー」
千切りに結構時間がかかったので、サバの仕込みのできあがりまであまり時間がないけど、ボウルに片栗粉を入れておき、動画視聴。すると、タイマーのアラームが鳴る。せわしないね。お米も十分蒸れたので切って、と。
「これからサバを揚げるけど、これはさすがに危ないから私がやるからね。アメリは、これの汁気を切って、片栗粉をまぶしてくれる?」
「わかった!」と言い汁を捨てて、うんしょうんしょと粉をまぶしていく彼女。私はその間に、フライパンの油を熱する。
「じゃあ、危ないから離れててね」
サバを油に入れると、揚げ物独特の小気味よい音を立てて気泡が上がる。タイマーを四分にセット。タイマーが鳴ったので、油切りのトレイに載せていく。
キャベツも柔らかくなったので、火を止める。
「さて、アメリちゃん。最後のひと仕事です。このキャベツのお鍋に、これでお味噌を入れましょう」
冷蔵庫からお味噌を取り出し、おたまとともに手渡す。「はーい」と、おたまですくう彼女。
「もうちょっと多く。そうそう、そのぐらいね。で、お玉は左手に持ち替えて、この菜箸でかき混ぜてお湯の中で溶かして。そうそう、その調子!」
パチパチと拍手。というわけで、お味噌汁も完成!
「じゃあ、盛り付けは……アメリちゃんにはサバと千切りキャベツをお皿に並べてもらおうかな。私はお味噌汁とお茶を用意するね」
役割分担をし、盛り付け完了! あとは配膳!
「はーい、でっきあがり~! すごいよ、アメリちゃん! これほとんど、アメリが作ったのよ!」
頭を撫でると、「おお~!」と瞳をキラキラ輝かせる。この体験は、きっと彼女の強い自信となることでしょう。
「それじゃあ、いただきますしよう。いただきます!」
「いただきます!」
おお、キャベツと一緒に食べる竜田揚げの美味しいこと! アメリちゃんの愛と努力を感じるわ!
「美味しい!」
キラキラ瞳を向けてくる。
「美味しいねー。アメリがすごーく頑張ったからだよー」
笑顔を向けると、「うにゅう」と気抜け声を上げて、照れくさそうに身をよじる。ふふ、ほほえま!
キャベツのお味噌汁も美味しい。良き哉良き哉。
こうして、アメリシェフ力作の美味しい晩ごはんも食べ終わり、本日はお仕事と遊びにそれぞれ集中するのでした。
アメリの愛情手料理で英気も養ったことだし、スパートかけるぞー!
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