今日は期限ギリギリなので、国民健康保険税を収めに市役所に来ています。
役所は駅の結構南にあり、この後色々買い物もしようと、市役所の駐車場ではなくフォレスト北の市営駐車場に車を停めたのですが、これが仇になるとは、このときは想像していなかったのです……。
納税を終え、今日はアメリご執心のエスカルゴではなく、ちょっと変わったお店に入ろうという提案をし、市役所から駅に向かう途中にある、役所すぐそばの「F-TERRACE」というレストラン……というより、ダイナーに入ってみることにしました。
お昼どきを外れているせいか、ほかにお客さんはいないね。
メニューを眺めていると、ローストビーフサンドセットが!
「アメリー、ローストビーフあるよ~」
「おおー!」
ローストビーフ。前に作った時、アメリ食べ足りなそうだったもんね。
二人で同じローストビーフサンドプレートを注文し、さらに私はこれにアイスコーヒーを一緒にいただき、おしゃべりしながら料理を待つことに。
ややすると、一枚のプレートにローストビーフサンド、サラダ、フライドポテトが載ったもの+スープが出されました。おおう、予想よりボリューミー!
「アメリ、食べ切れそう?」
「頑張る……!」
「無理しなくていいからね」と言い、二人で「いただきます」。
まずは、コーヒーを一口。……ん! 美味しい! や、これは文字通り一味違うわ。すごいな。これはいいものだ。
続いてサラダ。これも、ドレッシングが美味しい。黄色いけど、何を使ってるんだろう?
そして、ローストビーフサンド。これも実に美味しい。ちょっとお高いお店だけど、どれもそれに見合う味だわ。市役所には何度も立ち寄ったことがあるけど、これは穴場だったなー。
アメリの様子を見ると、美味しそうに食んでいる。特に、念願のローストビーフが嬉しいみたいね。
そして、完食。ふう、お腹いっぱい。アメリもなんとか食べきり、お会計。美味しかったー。
退店後は、「麗文堂」に向かうべく、けやき通りを歩いて行く。あ、フォレスト前でバンドやってる。ここではよく、こうやってフォルクローレ(ペルー音楽)のバンドがパフォーマンスをしています。こないだは猿回しやってたっけな。
私たち以外にも、色んな人が足を止めて眺めている。しかし、今日は風が強い。春一番かあ。
うお、すっごい強い風! 白いキャスケットが目の前を横切っていきました。
……ん? 白いキャスケット?
アメリを見ると、猫耳がご開帳!!
ど、どどどどどどうしよう!? どうしたらいいの!?
帽子! とりあえず帽子!! 慌ててあとを追いかけ、ダッシュで回収!
ひいぃ!? アメリ、めっちゃスマホで撮られてるゥ!!
「すみません! 行こう!」
キョトンとするアメリに帽子をかぶせ、急いで手を引き駐車場に向かう。もはや麗文堂どころではない。
文字通り、逃げ帰る私たちでした……。
◆ ◆ ◆
帰宅後、恐る恐るツイスターを確認してみる。
うひゃあああああ! めっちゃ拡散されてるゥゥゥゥッ!!
良心的 (?)な人は顔にボカシ入れてくれているけど、そのまんまの写真も多数。
どうしよう、まずいよこれ……。
突然スマホが鳴り、ビクッとなる。送信者は白部さんだ。
「こんにちは。ツイスター、見ました。大変なことになってしまいましたね」
彼女の声も、ずいぶん緊張している。
「はい。どうしたらいいのか……」
「上では、蜂の巣を突いたような大騒ぎになっているようです」
「すみません……。強風で帽子が飛んでしまって……」
恐縮し、肩を落とす。
「いえ、不可抗力だったのでしょう? 仕方がないです。次善策を考えましょう」
LIZEでも、優輝さんやまりあさんが反応し始める。いずれも、心配するメッセージだ。
「皆さんがLIZEで反応されています。とりあえず、LIZEで話しませんか?」
「そうですね。そうしましょう」
白部さんもご同意され、作戦会議に。
「えらいことになってますね。バズっちゃってますよ」
ツイスターを見ると、優輝さんの仰る通り、さらにものすごい勢いで拡散されている。
これはもう、歯止めが効かない。
ネットの怖いところだ。
まさか、アメリがこんな形で有名人になってしまうなんて……。
「上の、さらにその上の決定が出たようです。猫耳人間の公表に踏み切るようにしたとのことです」
「スミマセン……」
「いえ、いつかは発表しなければいけないことでしたから。それが少し早まっただけですので、お気になさらないでください」
フォローの言葉をいただくけど、やはり責任は感じてしまうもので。
「やはり、公表の際はアメリや私が壇上に立つ必要があるんでしょうか……?」
「いえ、それは必要ないはずです。とりあえず、落ち着きましょう」
落ち着けと仰られても、心臓バクバクですよ。
「おねーちゃん、アメリ何か悪いことした……?」
心配そうに、私の顔を覗き込むアメリ。
「ううん。アメリは何も悪いことしてないよ。大丈夫」
そうだ。私もアメリも、何も悪いことなんてしていない。私がパニクったら、この子に心配をかけるだけだ。
「おいで」
椅子を九十度ひねり膝を叩くと、お姫様がちょこんと腰掛ける。
一度深呼吸し、皆さんとチャットしながら、アメリの髪を撫で続けるのでした。
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