ノーラちゃんの様子を見てからしばらく経ち、白部さんから戻ってきましたと連絡が入りました。あと、「お昼まだだったので、サンドイッチありがたくいただきます!」と土下座猫スタンプとともに感謝のメッセージも。良き哉良き哉。
まりあさんも帰るそうで、そのまま由香里さんがクロちゃんと一緒に送っていくとのこと。
色々ゴタついたけど、まーこれでひと安心かな?
さて、背後で海産物ファミリーと戯れているアメリだけれど、仕事もキリのいいところまで進めたし、なんだか私が海産物たちの代わりにアメリと戯れたい気分。ノーラちゃんの件では、肩透かしさせちゃったしね。
「アーメリ! あーそびーましょ!」
彼女の前に正座して、ニコニコ笑顔で話しかける。
「おお~? 何して遊ぶー?」
「アメリの好きなこと、なんでもいーよ」
すると、視線をキョロキョロさせて、思考を巡らせる。
「んー……なにか新しいお勉強したい!」
おお、なんと知的好奇心の強い子でしょう! 知的飲料であるマスペを愛する私としては、応援せざるを得ない!
とはいえ、ひらがな、カタカナ、足し算、引き算はマスターしちゃったし……。なにがいいだろう?
掛け算はまだちょっと早いかなあ?
などとぐるぐる悩んでいると、ポンとひらめきました!
「よし、アルファベットとローマ字についてお勉強しよう!」
「おお~? なにそれ?」
「えっとねー……こういう文字見たことない?」
適当なコピー用紙を取り出して、ABCと書く。
「おお~! 見たことある!」
「こういうのをアルファベットっていうんだけど、それの一部を使ったローマ字っていう文字の書き方があるんだ」
「おお~!」と再度感心するアメリ。
「てなわけで、アルファベットとローマ字を教えちゃうよ! 今、一覧表を作るから待っててねー」
さっきまで使っていた漫画執筆用ソフトで新規画面を作成し、A~Zの大文字を二十六文字と、そのよみがなをカタカナで書いてプリントする。
「ほい、できたよー。じゃあ、左から右へ。そして右端に行ったらその次の段を読んでいこう」
「おー! えー、びー、しー、でぃー……」
順に読み上げていくアメリ。
「ぜっと!」
「はい、よくできました!」
ぱちぱちと拍手する。
「じゃあ、見ながらでいいから私が言うのを、こっちの紙に一覧表を読んだときみたいな感じで、横方向に書いてみてね」
もう一枚の白紙と鉛筆、消しゴム。そして、下敷き代わりのスケブを手渡す。
「行くよ~。最初はエー!」
一覧表を見ながら、うんしょうんしょと書く彼女。
「正解です! じゃあねー……次はエム!」
またまた正解! これを繰り返していくと、白紙に「AMELIE」という文字が完成していた。
「よくできました! これはね、フランス語で『アメリ』って読むんだよ」
「おお~! ……フランスってなーに?」
むう、そこを知らなかったか。
「えーっと、遠くの国かな。世界中には色々な国と言葉があってね。このアルファベットは、色んな国で使われてる文字なんだよ」
アメリが、「おお~!」と瞳を輝かせる。知的好奇心が満たされている証拠だね! 良き哉良き哉。
「今はまだその機会はないだろうけど、もしアメリがアルファベットで自分の名前を書く場合はこう書くんだよ」
「うん!」
「あ、でもね。これはあくまでもフランス語とかで名前を書く場合なんだ。これから教えるローマ字だと、こう書くんだよ」
AMELIEの下に「AMERI」と書く。
「おお~? 後ろのほうがぜんぜん違う!」
「まあ、今はその『ぜんぜん違う』ってのだけ覚えておいてくれればいいよ。じゃあ、ちょっと自分でアルファベットと読みがなをセットで色々書いてみよう」
しばらくアメリの自習に任せ、お仕事を再開する。やはりアメリと交流すると、こう、リフレッシュできるね!
仕事に集中することしばし。コーヒー牛乳片手に頑張っていると、「おねーちゃん、見て見てー!」と耳元で声をかけられる。振り返ると、アメリがにこにこと笑顔で立っていた。
「おお、どったの?」
「いっぱい書いた!」
じゃーん! と言う感じで紙を見せてくる。そこには、文字がぎっしり!
「おお~! 頑張ったねー。よし、次は一覧表を見ないでエヌ、イー、ケー、オー、ゼット、エー、ケー、アイって書いてみてくれるかな?」
新たな紙を差し出すと、机の上でよいしょよいしょと書いていく。
「合ってる?」
「おお~! 正解です! やっぱりアメリは物覚えがいいね! すごい! これね、『ねこざき』って読むんだよ。これで、アメリは自分の名前をアルファベットでも書けるようになりました!」
ぱちぱちと拍手すると、「えへへ。褒められちゃった」と嬉しそうに頭を掻く。なんか、私もアメリもさっきから「おお~」って言ってばっかりね。
「よーし、じゃあ次の段階に進んでみよう」
再び新規画面を作り、a~zの小文字を二十六文字と、そのよみがなをカタカナで書いてプリントアウトする。
「おお~? 今度のはなーに?」
「さっき覚えたのは大文字っていうんだけど、こっちは小文字っていうの。日本語でいうと、ひらがなとカタカナの違いみたいなもんかな。今度はこれをちょっと書き取りしてみよう」
もう一枚白紙を手渡すと、やる気満々にスケブを下敷きに書き取りを始める。
ほんとにアメリはすごいなあ。子供の成長は早いというけれど、アメリと暮らしていると本当にそれを実感する。
本当にスポンジのように知識を吸収していくので、教えがいがあるというか、教えているほうも楽しくなってくる。
さて、可愛くて賢いアメリちゃんが自習している間、私もお仕事頑張りましょう!
読み終わったら、ポイントを付けましょう!