後部座席にアメリを挟んでミケちゃんとクロちゃん、助手席にまりあさんを乗せ、シートベルト確認後しゅっぱーつ!
優輝さんから、すでに先行しているというメッセージがLIZEに届いたと、まりあさんが教えてくれる。
「でね、一生脱げなくなったスーツを着せられ、激マズ栄養ドリンクしか飲めなくなったヒーローがね……」
後部座席では、約束通り「映画の作り話」という前提を説明した上で、ミケちゃんが二人に何やらよくわからないヒーローもの? 作品の話をしている。二人は「おお~……大変だなー」とか「その人可哀想……」とか、反応を返す。
車を使えばサンチョはごく近い距離で、おなじみの大きな国道沿いにある店舗。東F駅とF駅の、ちょうど中間あたりに存在する。
近くに寄ると、店前の柱に寄りかかってスマホをいじり暇をつぶしていた優輝さんを目撃。向こうからは気づかないだろうけど、頭をちょこんと下げ、そのまま駐車場に向かう。
四階の駐車場に車を停めると、「今、お店の前で見かけました。すぐ向かいます」とLIZEでメッセージを送り、エレベーターで一階へ向かう。
さっきの場所でエレベーター口のあたりを見ていた優輝さんと再会し、皆で店内へ!
このサンチョ・パンサ、圧縮陳列という独特の設置をされた商品棚が特徴で、通路が大変狭い。なので、久美さんたちがお留守番なのはこれも理由というわけ。この店内に九人とか邪魔ってレベルじゃないからねー。まあ、子供が半分とはいえ、六人もたいがい多いけど。
そんなわけで、店内のどこに何があるのかがちょいと分かりづらい。なので店員さんを探し、「ハロウィン用の子供向け衣装ありませんか?」と尋ねて、売り場へ案内してもらう。
おお。ありました、ありました。オーソドックスな魔女のとんがり帽子とマントのほか、狼男の付け耳としっぽなんかも。
「我々の場合、これ一択ですよねー」と、魔女セットを手に取る優輝さん。そうよねえ。耳を隠さなきゃだから、この帽子になるよね。
「クロちゃん、好きな色選んで」
とまりあさんが促すと、クロちゃんは黒と赤のツートンカラーのものを選択。ついでにおもちゃの杖も売っていたので、それもかごに入れる。アメリは黒と青、ミケちゃんは黒と黄のツートンを選ぶ。なんだか信号機みたい、などと内心思い、昨日の信号授業が脳裏に蘇りほっこりしてしまう。
用事はこれで終わったといえば終わったけど、サンチョは自他ともに認める「安さの王道」。せっかくだから、ほかにも色々買っていきましょうという話になり、三手に分かれて各々お買い物を継続することに。
私たちが次に向かったのはペット用品売り場。お目当ての品はちゅ~ゆ。アメリは未だに、なんだかんだでこれが好きなのです。
続いて、おなじみコーラとマスペを買った後、缶詰や缶入りクッキーに飴、さらにはもののついでとLED蛍光灯やLED電球なんかもかごに入れていく。いやー、ほんとにどれも安い。惜しむらくは、野菜以外の生鮮食品を売ってない点だね。
お会計も終わり、「こちらはお買い物終わりました。先に車の中で待ってます」とメッセージを送ると、まりあさんから「こちらも今、袋詰めをしています。すぐに向かいますね」とメッセージ。
優輝さんからは、「こちらはみんなへのお土産がちょっとかさばるので、もう少しかかりそうです。先に行っててもらっても構いませんが、ミケがアメリちゃんたちと一緒に帰りたがっていて……」と、困り顔猫スタンプ。
「まりあさんは、常温で平気なものだけですか?」と問うと、「はい」と返ってきたので、「じゃあ、一緒にミケちゃんを待ちましょうか」と二人に返信する。
まりあさんも同意したので、先に駐車場へと帰還。トランクに荷物を置いた後、車内でアメリとおしゃべりしていると、まもなくまりあさんがマイバッグとビニール袋をそれぞれ片手に下げてクロちゃんとともに戻ってきたので、トランクを開ける。
「おかえりなさーい。ずいぶん買われたみたいですね?」
座席に座ったまりあさんに何気ない感想を述べる。
「そうですね。私みたいな徒歩勢だと、なかなか来る機会がないですから……。せっかくの機会なので、色々買い込んじゃいました」
「なるほど。じゃあ、こちらに来たい時は気軽に声をかけてくださいよ。またサンチョでお買い物しましょう」
と、にこやかに返す。すると、LIZEの着信音が。
「すみません。神奈さんたちどこですか? それらしい車が見当たらなくて……」
優輝さんからのメッセージ。
「もしかして三階にいます? 私たちは四階のほうの駐車場ですよ~」
と返信。サンチョは三階にも駐車場があったりする。すると、ショック猫スタンプとともに、「今行きます!」とメッセージが返ってくる。
ややあって、エレベーターから優輝さんとミケちゃんが姿を見せたので、車外に出て手を振ると、こちらへ小走りでやって来た。
「すみませーん! こっちの可能性が、頭から抜けてました!」
恐縮する優輝さん。
「いえいえ、お気になさらず」
「それじゃあ、ミケのことお願いします。いい子にしてるんだよ」
ぺこりと頭を下げた後、ミケちゃんの頭をキャスケット越しに撫で、三階へと向かう彼女。その背中に向かって手を振る。
「では、行きましょうか」
車内に戻って着席し、シートベルト確認後に車を出すのでした。
◆ ◆ ◆
「それじゃあ、まりあさん。アメリたちを連れて、お先にお隣さんへ向かってて下さい」
ガレージに車を停めた後、まりあさんにアメリたちを託す。
「あ、荷物はどうしましょうか?」
「そうですねえ……この気温ですし、生物もないので傷まないとは思うのですけど……念のために一緒に向こうに持っていきますね」
というわけで、二手に分かれて自宅に戻り荷物をしまう。その後は、さっそくかくてるハウスへ再度お邪魔~。
◆ ◆ ◆
「お邪魔しま~す……あら、可愛い!」
リビングへ行くと、クロちゃんとミケちゃん、二人の可愛い魔女っ子とご対面!
その二人を色んな角度から眺める優輝さんとまりあさん。それとアメリ。
「おかえりなさい。今、不具合がないかまりあさんとチェックしてるところです。不良品だったら交換してもらうう必要があるので」
「あ、その発想はありませんでした! すぐに戻ってきます!」
急いで自宅に戻り、魔女セットを持って三度かくてるハウスのリビングへ!
「よーし、アメリもこれさっそく着てみよう!」
「おお~!」
じゃん! 新たな魔女っ子が現れました!
「か、可愛い……!」
鏡を見ずとも自覚が持てるほど、恍惚とした表情で愛しのアメリを見つめる。こんな可愛い魔女だったら、山ほどお菓子あげたくなっちゃうわ!
「写真! ねえ三人とも、写真撮っていい!?」
「え? ええ、構わないけど。その代わり、可愛く撮ってよね!」
「ボクも……ちょっと恥ずかしいけど、記念になるなら……」
二人に続き、アメリも「おお~!」と拳を突き上げノリノリで了承してくれたので、スマホを手にパシャパシャと撮影しまくる。
「いいよいいよ~! 今度はこう、両手で招き猫やってみようか! いいねいいね~! じゃあ次はこう、杖を構えて……」
あらゆる角度とポーズで撮るさなか、唖然とした表情のまりあさんとかくてるの皆さんがフレームに映るけど、このラブリーな瞬間を捉えずして何の猫崎神奈でありましょうか!
後で自らの行いを顧みて、すこぶる赤面する羽目になるとは考えず、大暴走する私でした……。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!