日は進み、カレンダーの日付も十月三十一日。そう、待ちに待ったハロウィンです!
時刻はお昼過ぎ。まりあさんがクロちゃんと一緒に、お菓子をあげたりいただいたりしながら私たちのところへ向かっているとのことで、彼女たちを待ちつつ私たちも支度中。今年のハロウィンは土曜なので、この時間からでもご近所さんの大人が結構おうちにいるのがありがたいね。
もらったお菓子を詰める用の袋と、出会った子供にこちらのお菓子を渡す用の袋を準備。あげる用には、こないだサンチョで買った飴を二袋詰め込む。このぐらいあれば足りるかな? 足りなかったらコンビニあたりで調達しましょ。
「着替え終わった!」
とてとてとキッチンへやって来た我が家の魔女っ子。ああ……可愛い! なんて可愛いの!
思わず、スマホでパシャリ! はぅあ~……とろけるぅ……。
今日は、こんな可愛い魔女っ子アメリをご近所の皆様に見てもらうチャンス! なんて素晴らしいイベントなのでしょう!
お。スマホからLIZEのメッセージ着信音が。まりあさんだ!
「今、着きました。角照さんたちのおうちの前にいます」
りょーかーい!
「アメリー! お隣さんに行くよー」
「おお~!」
二人で拳を突き上げ、いざ出陣!
我ながらテンション高いな~。
◆ ◆ ◆
「こんにちは~!」
まりあさんとかくてるの皆さんが、かくてるハウス前で談笑していたのでご挨拶。クロちゃんとミケちゃんも子供同士で何かおしゃべりしてるね。
皆さんも私たちに気付き、挨拶を返してくる。
「神奈お姉さん、アメリ。見て、こんなにいっぱいお菓子もらった……!」
クロちゃんが袋を開けると……飴やクッキー、チョコなんかに混じって、おせんべい、酢昆布、ようかんなどが……。
「チョコとかも嬉しいけど、和菓子もっと嬉しい……。おせんべいもいいけど、酢昆布も美味しいよね……」
はにかむクロちゃん。可愛い。可愛いけど、やっぱり趣味がめちゃくちゃ渋い!
「わたしの家のご近所の皆さん、クロちゃんの好みを把握してる方が多くて。ありがたいです」
口に手を当て、うふふと嬉しそうなまりあさん。そっかー。クロちゃん、向こうのご近所さんでちょっとした有名人なのね。盆栽育ててることなんかも、きっと知れ渡ってるんだろうなあ。
「そういえば、クロちゃん人見知りは大丈夫だったの?」
素朴な疑問を尋ねてみる。
「うん。ちょっと怖かったけど、ボクも頑張ってるんだ……。ミケもアメリも頑張り屋さんだから」
おお、なんと立派な心がけ。目立たないだけで、クロちゃんも努力家なんだなあ。きっとアメリやミケちゃんとの出会いで、人見知りの克服を志すようになったんだろうな。三人が相互に影響しあって、向上心を高めあっている。良き哉良き哉。
そんなクロちゃんの頭を撫でてあげたいところだけど、とんがり帽子越しじゃ無理ね。往来で脱がせるわけにもいかないし。
「よし! それじゃあ、ぼちぼち行くとしましょうか!」
優輝さんが音頭を取ると、一同から「おー!」とか「はーい!」とか声が上がる。
まず向かったのは、白部さんのお部屋。今日はお休み……というか、アメリたちの仮装が楽しみで何が何でも休みにしてもらったそうで。相変わらず、猫耳人間愛がすごい。
チャイムを鳴らすと、ややあって白部さんが顔を出す。
「こんにちは~。あら、可愛い魔女さんたち!」
アメリたちを見るや、とろけそうな表情になる白部さん。
私たちも、口々に「こんにちは」と挨拶を返す。
「トリック・オア・トリート! お菓子をくれないといたずらしちゃうぞ!」
ミケちゃんとクロちゃんがおなじみのセリフを言うと、アメリが「おお?」と面食らう。
「アメリも真似して言ってね」
「わかった! トリック・オア・トリート! お菓子をくれないといたずらしちゃうぞ!」
「はいはーい。ちょっと待っててねー」
冷蔵庫から袋入り飴を取り出す白部さん。
「チョコとどっち用意しようか迷ったんですけど、うちノーラちゃんがいますからね。というわけで、飴をどうぞ。魔女さん」
個別包装されたキャンディを一人一人に手渡す彼女。初めてハロウィンでお菓子を受け取ったアメリは「おお~!」と大興奮。
「おねーちゃん! 飴もらっちゃった!」
嬉しそうに見せてくる。
「うんうん。良かったねえ。さ、みんなお礼言おうね」
子どもたちが、「ありがとうございました!」とぺこりとお辞儀。私たち大人組も、お辞儀してお礼を述べる。
「ノーラちゃん、あれからどうですか?」
「はい。徐々にですけど、慣れてきてくれたみたいです。こないだですね! にゃーんって鳴いてくれたんですよ!」
嬉しそうに語る白部さん。にゃーんというおなじみの鳴き声は、実は人間に対してのみ出す親愛の言葉。つまり、白部さんはノーラちゃんの信頼を得つつあるということ。彼女は職業柄、人間以外に猫についても研究してるわけで、その意味を知っている。なので、この喜びようというわけだね。
「おめでとうございます。努力が実りましたね! 仲が深まりつつあるようで良かったです。では、長居しても悪いので、お隣に行かせていただきますね。失礼します」
「ありがとうございます。あ、でもその前に!」
「はい、何でしょう?」
お隣に移動しようとしたところ、呼び止められる。
「アメリちゃんたちの写真、いいですか?」
スマホを構える白部さん。ああ、すごく親近感を感じるリアクション。
というわけで、数枚記念撮影。さすがに私みたいに暴走しないなと、内心苦笑。
こうして、改めて別れを告げ、お隣さんへ。続く!
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